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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第3章 夏休み、帝国への旅
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第46話 辺境を行く

 今日から旅の仲間にハンナちゃんが加わる。

 昨日の夕食後に全員を紹介し、ヴィクトーリアさんとハイジさんが帝国の皇后様と第一皇女様だと知ったハンナちゃんは緊張のあまり硬直してしまった。

 ヴィクトーリアさんが、畏まらなくても良いと優しく話しかけたので、ハンナちゃんの緊張は少しだけ緩んだようだった。



 さあ、出発だ。これから先は町はなく辺境の村が続く。

わたし達はノイエシュタットに到着するまで魔導車の中に泊まることとなる。


「すごい!速いの!

村を出たときに乗った馬車は、凄くゆっくりだったの。

それに、ゴツゴツ揺れてお尻が痛くなったの。

このソファーは全然お尻が痛くならないの。」


 ハンナちゃんは荷馬車に乗って村から出てきたそうだ。


「本当にそうよね。まさか、辺境まで来るのに三日で着てしまうなんて信じられないわ。」


 ハンナちゃんに相槌を打つようにヴィクトーリアさんが呟いた。



「ターニャちゃん、帰りはまっすぐ帰るのですか?」


 ミーナちゃんが帰路の予定を尋ねてきた。

そういえば、説明していなかったね。


「帰り道も畑を作りながら帰るよ。

本当は、一週間以上帝都に滞在する予定だったから、時間はだいぶ余っているし。」


 そう、わたし達は帰路も食糧の配給をするつもりで、オストエンデで干し肉と堅焼パンを買い求めたが食料が不足しているようで何処へ行ってもまとまった量を売ってもらえなかったんだ。

 だから、食糧の配給はなし、その代わり食べ物が足りない村には畑を作っていくことにする。

 幸い、種と苗はまだ十分に残ってるしね。



 来るときは急いでいたので、畑を二面作ってとりあえず今年の冬越しが出来るだけの作付けを行ったが、今回は少し増やして食料に余裕を持たせるようにしたいと思う。

 食べ物がぎりぎりしかないと不安だろうからね。



 街道沿いの村々を回って荒地を開墾し、ジャガイモ、アマイモ、ソバ、大豆を植えていく。

もちろん、作物の成長促進も施した。

 帰路に立ち寄った村には、畑に加え畑一枚分ほどのハリエンジュの林を作らせて貰った。

どうして必要なのかをうるさいくらいに説明して、切り倒さないように言い聞かせた。



「お姉ちゃん、すごい!もう芽が出てどんどん大きくなってくよ。

これが魔法なの?ハンナも出来るようになる?」


「ハンナちゃんが精霊さんとうんと仲良くなって、いっぱい練習したらきっと出来るようになるよ。」


「ほんとう?」


「うん、本当だよ。」


「じゃあ、ハンナがんばる! 小人さん、仲良くしてね!」


 それから、ハンナちゃんは毎日欠かさずマナを放出する練習をするようになった。

 瘴気の森に近づく頃には、水を出したり、そよ風を吹かせたりするほか、植物の種を発芽させることが出来るようになっていた。


「ターニャちゃん、この子うちの愚弟より優秀なんですけど?

どういう指導をしたらこんなに速く魔法を覚えるんですか?」


 ハイジさんが驚きで目を丸くしている。

 どういう指導って言ったって、おチビちゃん達と仲良くしなさいって教えただけだけどね。


 幼いゆえの柔軟さなのか、相性が良いのかはわからないが、ハンナちゃんは寄ってきたおチビちゃん達とすぐに仲良くなった。

 マナの放出のコツを覚えるとあっという間に簡単な術を使えるようになっていた。



 来るときに立ち寄った村に作った畑は、順調に作物が成長しており、もう少しで収穫できそうだ。

 今回は作物を変えて作付面積を増やすので、とりあえずこの冬から来春にかけては飢餓に苦しむことはないだろう。


 ああ、でも村の人たち、わたし達に跪いて祈りを捧げるのはやめて欲しい、わたしは神様じゃないよ。

それと、聖女というのもやめて、創世教の人に睨まれるから。



     ************



 瘴気の森までもう少しという場所にある村を通りかかると、なにやらただ事でない様子だった。


「その食料をもっていかれたらこの村の者はみんな飢えてしまいます。

どうか見逃してください。この村には、教団に寄進する余裕はないのです。」


「何を言うのだ、国教たる『黒の使途』が貴様らに功徳を積む機会を与えてやっているのだぞ。

快く寄進をするのは当たり前のことであろう。

こうして我われ『黒の使途』の教導団がわざわざ辺境の地まで、有り難い教えを布教に来たのだ。

まさか、何も差し出さないなんて無作法はせんだろうな。」


 なんか、ゴロツキが村人にたかりに来ているようだ。

 こんな貧しい村にたかりに来るなんて、本当に非常識だよね。

まあ、ゴロツキに常識を求めるのも変な話か。


「何かお困りですか。見たところゴロツキに絡まれているようですが。」


 わたしを見た村人が懇願の声を上げた。


「ああ、聖女様。

 いきなり『黒の使徒』を名乗るゴロツキがやって参りまして、聖女様からお恵みいただいた食料を持ち去ろうとしているのです。

 どうぞ、今一度、この村にお力添えをいただけないでしょうか。」


 この村の人は、帝国の国教たる『黒の使途』の宣教師を破落戸と言うのか。

『黒の使途』って人気ないね、何処に信者がいるんだろう?



「村の方はこう言っていますので、大人しく立ち去ってくれませんか?

わたしは、飢えに苦しむ村人に食料を支援したのであって、あなた方みたいなゴロツキに与える食べ物は持ち合わせていないのですが?」



「ふざけるな!

さっきから聞いていれば、帝国皇帝がお認めになった国教である『黒の使途』の教導団の団長である私をゴロツキ呼ばわりとは子供といえども許さんぞ。」



 さて、どう許さないというのだろうか?

読んでいただき有り難うございます。

ブクマしてくださった方、有り難うございました。

凄く嬉しいです。

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