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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第1章 人間の街へ
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第1話 精霊に育てられた少女


「おはよう!!」


 わたしは、周囲を飛び交う精霊さんたちに朝の挨拶をしながら、おかあさんが待つ食堂を目指す。

でも、この家広過ぎ! 八歳のわたしの足では寝室から食堂まで十五分以上掛かっちゃう。

 風の精霊さんにお願いして運んで欲しいけど、おかあさんが体が鈍るから駄目だって言うの。


 この家は元々魔導王国っていう昔あった国の王宮なんだって。

森に埋もれた遺跡だったものを、わたしを育てる場所として整備してくれたらしい。

この建物が一番保存状態が良かったんだって。


 やっと食堂に着いた。


「おかあさん、おはようございます!!」


 元気な挨拶は基本です。

わたしは、挨拶をしながら食堂の扉を開いた。




「ええ、おはようございます。今日もちゃんと挨拶できましたね。えらいわ。」


と返したくれたのは、光のおかあさん。

エーオースという名前で光の大精霊をやっているんだって。



「はい、おはよう。今日も元気がよくて大変結構。」


と言ったのは、大地のおかあさん。

ノーミードという名前で、大地の大精霊なんだって。



「おはよう、ターニャ。まあまあ、今日も可愛いわ。ほらこっちへいらっしゃい。」


とわたしを手招きしたのは、水のおかあさん。

ウンディーネという名前の水の大精霊で、おかあさんの中で一番わたしを可愛がってくれる。

他のおかあさんからは、甘やかしすぎたらダメと言われているらしい。



ターニャというのはわたしの愛称で、おかあさんたちが付けてくれた本当の名前はティターニアです。



 今日はいないけど、わたしにはあと三人のおかあさんがいる。

 生後まもなく瘴気の森の入り口に捨てられてたわたしを拾ってくれたのは、光のおかあさん。

でも、光のおかあさんは凄く忙しくて、とても一人ではわたしを育てられなかった。

そこで、他のおかあさんに子育ての手助けを呼び掛けたそうだ。

それ以来、六人のおかあさんが、わたしの育ての親になってくれた。



 おかあさんは、みんな忙しいのに、こうして必ず何人かは交代でわたしの傍にいてくれるんだ。

朝ごはんだって食べるのはわたしだけ、おかあさんたちは空気の中にあるマナってのを食べているからご飯は食べないんだって。

 でも、わたし一人で朝ごはんを食べるのは寂しいだろうっていって、おかあさんたちは一緒にいてくれるの。



 おかあさんたちは、世界のバランスを保つ仕事をしているんだって、わたしにはよく分からない。

でも、世界で一番バランスが崩れている場所がこの周りで、瘴気の森って言うんだって。

 この辺りは、魔導王国っていう国だったけど、穢れたマナの制御に失敗して滅びちゃったらしい。

その時迷惑にも、瘴気を辺りにばら撒いたみたい。瘴気と言うのは穢れたマナのことなんだって。

 それで、おかあさんたちは、ここ二千年瘴気の森の浄化をしている。

 おかげで、わたしが捨てられていることにおかあさんが気付いてくれたんだ。



 ここは、瘴気の森のど真ん中、一番瘴気が濃い場所から浄化を始めたから、ここが最初に清浄になったんだって。

 おかあさんたちは、この大地を無茶苦茶にした魔導王国のことが大嫌いで、その遺物も嫌なんだけど、わたしを育てるために魔導王国の遺物の一部を使えるようにしてくれたの。

 今いる王宮のほかにも、私に役立ちそうなものを使えるようにしてくれたらしい。

今は、王宮から出たことないから何があるか分からないんだけど。



     **********



 今、私の目の前には、光のおかあさんがいつも通りの笑顔で座っている。

 さっきまで、叡智の精霊さんに勉強を教わっていたんだけど、突然光のおかあさんがやってきて勉強は終わりになった。

 いつもは、こんな事無いのにどうしたんだろう?



「私の可愛いターニャ、お勉強の邪魔してごめんなさいね。」


「いいえ、おかあさんが忙しい合間を縫って会いに来てくれて、とても嬉しいです。

今日は何かありましたか?」


「あのね、ターニャも八歳になったでしょう。

あなたも一度外の世界を見てきた方がよいかと思ってね。

人間の学校で八歳から入学できる学校があるの。

急で気の毒だけど、明日ここを出て人間の街へ向かってもらおうかと思って。」


「おかあさんはわたしにここを出て行けと言うんですか?」


また捨てられちゃうのかと思ったら、わたしは泣きそうになった。


「誤解しないでターニャ、あなたを追い出す訳ではないわ。

よく聞いて、あなたには人間として生きる権利があるの。

だから、人間の世界を見てきて欲しいの。

やっぱり、精霊と一緒に暮らすほうが良いと思ったら帰ってきていいわ。

でも、人間の中で生きたいと思うならばそれも止めないわ。

どちらかを選ぶためには、あなたは両方の世界を知らないといけないの。

精霊の世界と人間の世界の両方を知った上で、どちらかを選ぶのはあなたの自由よ。」



「私に、外へ出て勉強してきなさいということですか?」



「そうよ、それでね、あなたの容姿は人間の世界では虐めの対象になりやすいの。

あなたの白銀の髪、薄い碧眼、白い肌は、人間の言う魔力に馴染まないの。

人間が魔力と言っているのは、体内に取り込んだ穢れたマナのことなのよ。

あなたの体は、穢れたマナを受け付けないから、人間の言う魔力が使えないの。

だから、人間の中ではあなたは蔑まれる存在になってしまう。

それに、穢れたマナの中ではあなたは体調を崩しやすいのよ。

本当は、あなたを人間の世界に送るのはとても心配なの。

だから、あなたの側に世話役として、精霊を何人か配置するわ。」



「わかりました。おかあさんの言うとおり、見聞を深めるため人間の街に行って来ます。」



ということで、急遽わたしは旅に出ることとなりました。

明日って、急すぎるでしょう。 

読んでくださって有り難うございます。

1時間前の19時にプロローグを投稿してあります。

もしお気づきでない方は、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。

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