第16話 ホームルーム
入学式が終わるとクラスごとにまとまって教室へ移動だ。
各クラスの担任の先生が先導してくれるらしい、わたし達の担任の先生は若い男の先生だ。
線が細く気弱そうな感じに見えるけど、優しそうな先生だ。
先生の後に、二列に並んで歩く、入学式の席順のままだから、わたしとミーナちゃんが先頭だ。
クラスは、五クラスあり、生徒の数は各クラス二十名ずつだそうだ。
私とミーナちゃんを先頭に縦に十人ずつ並んで、その後を保護者がぞろぞろ付いてくる。
初等部の教室棟は、講堂の隣にあるが敷地がゆったりとってあるので、わたし達子供の足では結構時間のかかる距離だった。
しかも、教室は正面入り口を入って一階の一番奥だって、まだ歩かせるのか。
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教室に着くと各自出席番号が書かれた席に座るように言われた。
わたしとミーナちゃんは、今回も真ん中二列の一番前の席だった。
全員が着席すると担任の先生が教壇に立ち話し始めた。
「みなさん、入学おめでとう。私が、このクラスの担任になったウートマン・クライネヘルツです。
何かわからないことや困ったことがあれば何でも私に聞いてくださいね。
最初にみなさんに言っておくことがあります。
入学式で国王陛下が述べられたお言葉に関してですが、私たちの国では人を、髪の色、瞳の色、肌の色で差別してはいけないと決まっています。
しかし、嘆かわしいことに、西の帝国から黒い髪、黒い瞳、褐色の肌の人を尊び、反対に銀の髪、碧い瞳、白い肌の人を蔑む考えが入ってきて、わが国でもその考えが正しいことだと思う人が増えてきています。
国王陛下は、そのような風潮を大変お嘆きです。
私たちの国の礎を築いた初代国王様が、白銀の髪、薄い碧眼、透き通るような白い肌の持ち主であったと伝えられています。
最近の風潮は王祖様、ひいては私たちの国の王家を侮辱することなのです。
みなさんが、髪や瞳や肌の色で人を差別するような偏狭な大人にならないように、きちんと指導していきますのでよろしくお願いします。」
ウートマン先生、良いことを言うね。やっぱりいい先生だ。
その後、ウートマン先生から、色々細かい説明があった。
私たちのクラスは、特別クラスという名前でどう特別なんだろうと思っていたら、飛び級が前提で四年間で中等部まで卒業するカリキュラムを組んでいるんだって教えてもらった。
実は、初等部で教える勉強って対して難しいものではないんだって。
じゃあ、何で四年もかけるかというと魔法の実技の習得が難しくて基礎的なことが完全に出来るようになるのに四年くらいかかるからだって説明された。
このクラスの子は、みんな入学試験で三つ以上の課題をクリアした子で、基礎は大体出来ている。なので、他のクラスの子と同じ事をすると時間の無駄なので、魔法実技以外の時間を増やして学習の進行を早めるんだって。
この説明の中で、何であんな簡単な問題で不合格者が出るのかという疑問が解決した。
思ったとおり、あの簡単な筆記試験ではほとんど差がつかないそうだ。
実質的に合否を決めているのは魔法実技で、あの課題を一つもクリアできないと、入学後に実技実習が達成できない可能性が高いので、不合格になるらしい。
やはり、八歳児では、あの課題をクリアできない子は結構いるようだ。
ただ、筆記試験で落ちる子が全くいないのかというと、毎年数名はいると先生は言っていた。
自己紹介はなく、ウートマン先生が出席番号とファーストネームを読み上げ、呼ばれたら立ち上がって「よろしくお願いします。」といって軽く礼をするだけだった。
先生いわく、自己紹介させると親の爵位や地位をあからさまにひけらかす子がいるのでやらないことにしているんだって。
同様に、ファミリーネームを呼ぶとそこから親の身分がばれるので、校内ではファーストネームだけで呼ぶそうだ。建て前上、学校内では生徒は平等となっているらしい。
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今日は、ウートマン先生による学園の説明だけで終わりらしい。
ミーナちゃんと帰ろうと思ったら、隣の席の子が声をかけてきた。
「ティターニアさん、私はクラーラと申します。よろしく願いします。
今までお見かけしたとこございませんが、どちらからいらしたんですか?」
お、八歳児とは思えない丁寧な挨拶をしてきた、わたしはそんな話し方出来ないよ。
「初めまして、クラーラちゃん。わたしのことはターニャって呼んでね。よろしくね。
わたしは、この国に来たの初めてなんだ。クラーラちゃんは王都の人なの?」
「まあ、海外からの留学生の方でしたか。どうりで王都では見かけなかった筈ですわ。
はい、私は生まれてから今まで王都で育ちました。新入生で王都にお住まいの方は大体存じ上げてます。」
へー、凄いや。百人中何人が王都の人か判らないけど、結構な数だよね。よく覚えられるな。
「クラーラちゃんって、いっぱい知り合いがいるんだね。
それに、みんなの名前と顔を覚えているなんて頭が良いんだ。」
「私の家は商人ですので、良い人脈を作るように、人の名前と顔を覚えるようにと、ずっと躾けられているだけですわ。
幸いなことに王家の御用商人になっている関係で貴族のお茶会などにも顔を出す機会があるんです。」
「じゃあさ、今固まっている人たちが何のグループかわかる?」
わたしは、クラスの中で既にグループを作っている二組について聞いてみた。
「右奥の女性の方々がアデル侯爵家のエルフリーデ様のグループ、左手前の男性の方々がフライスィヒ伯爵家のリーンハルト様のグループですね。
お二方とも、我われ平民にも気さくに接してくださる良い方です。
このクラスには、平民を見下す横柄な貴族はいないみたいでほっとしています。」
「このクラスに、わたし達三人以外に平民っているのかな?
あ、ごめんなさい。私の横にいるのは、ミーナちゃん。わたしの友達で、今一緒の部屋なの。
ミーナちゃん、ごめんね、紹介が遅れて。」
「クラーラさん、初めまして。ミーナです、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、ミーナちゃんを無視して話し始めてしまってごめんなさいね。
ターニャちゃんが平民というのは信じられないけど、ひとまず置いとくとして。
平民の子は、後二人かな。両方とも大商人の娘ですね。」
クラーラちゃんの話を聞くと、やはり貴族の中には出自を鼻にかける嫌な奴も多いみたいだけど、幸いこのクラスにいる貴族はリーダーが温厚で平民にも気さくな人なので、その取り巻きも良い人が多いみたい。
それと、学費が高いので平民の生徒は少ないそうだ。ただ、大店と呼ばれるような商家の子息は貴族との顔を繋ぐためこの学園に入学することが多いそうだ。
クラーラちゃんも、このクラスに入れたので学費が三年分節約できてラッキーと言っていた。
そう、このクラスは授業についていければ卒業時には中等部の卒業証書がもらえるけど、授業料は四年分で良いらしい。わたし達もラッキーだったね。
わたしとミーナちゃんは、クラーラちゃんとお喋りをしながら保護者控え室にウンディーネかあさんを迎えに行った。
クラーラちゃんはウンディーネかあさんを見て目を丸くし、正面玄関でソールさんが運転する魔導車を見て絶句していた。
「ターニャちゃんのどこが平民なんですか。」
というクラーラちゃんの呟きが聞こえてきたけど、スルーしておこう。
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