第9話 王都へ着いた
野盗の掘っ立て小屋から出てきたアロガンツ家のガキとお供の女性二人は、荷車に積み重ねられた野盗を見て目を丸くしていた。
「皆さんがこの野盗を捕縛したんですか?他に護衛の方がいらっしゃるのでしょうか?
成人してらっしゃる方は、女性四名しかいないように見受けられるのですが?」
お供の女性の問いかけに、ソールさんが代表して応える。
「いえ、私達は、この六名で旅を続けてきました。
わたしたち四名が、お嬢様たちの護衛兼お世話係です。
それに、この野盗はお嬢様が、実践勉強のためお一人で捕縛された者です。
この程度の野盗では、私達が手を出す必要性も感じませんね。」
ねえ、ソールさん、何でそこで私が捕縛したという必要あるの?
別に誰が捕縛したなんて殊更に教える必要ないよね。
「まあ、そうなのですか。まだ幼いのに、お強いのですね。」
お供の女性は、そう言いながら若干引き気味だった。
「おい、私は、この魔導車に乗りたいぞ。私に席を譲れ。」
何かうるさいガキがいるな。本当にここに放置して行こうかしら。
「お断り申します。
先ほど、ご自分の馬車に乗るのであれば、王都まで送ると約束したはずです。
そのような事を言うのであれば、ここに置いて行きます。」
ソールさん、ナイスな返答だよ。そんなガキと一緒の車なんて御免だよ。
「何で私に逆らうのだ、私はアロガンツ家の……」
お供の女性が、ガキが何か言い終わる前に、その口を塞いだ。
「申し訳ございません。うちの若様は少々頭が足りていませんので、こちらで言って聞かせます。」
お供の女性のガキに対する評価が酷いな。
「良いですか若様、もう少し物事をよく観察する習慣を身に付けましょう。
よく見てください、こちらの一行は、あのお嬢様のために魔導車を二台もつけているんですよ。
うちには魔導車は一台しかないのです。
わが国で魔導車を二台以上所有しているのは王族だけですよ。
ということは、こちらの方々は、王族と同等の地位に居られる可能性があるのです。」
「だが、あの女は『色なし』だぞ、『色なし』の王族など聞いたことがない。」
「だから若様は、お父上から浅慮だとたしなめられるのですよ。
それは、この大陸の常識です。
こちらの一行の衣服を見てください。お一人を除いて皆さん、この国の服装とは少し違う服装をしているではありませんか。隣の大陸から来たのかもしれませんよ。
特に、あのお嬢様の衣装は、この国の王族よりも良い絹地で作られています。
最悪の場合、若様はここで無礼打ちにあっても、文句言えませんよ。
その、誰彼構わず偉ぶる態度は、そのうち火傷しますよ。」
聞こえてますよ。わたしは、王族じゃないし、無礼打ちなんかしないよ。
あ、でもそういう風に躾けるのはのは、大事だよね。
そんな風にいつでも横柄な態度をとっていたら、本当の王族にもそう接しそうだよ。
あのガキは、顔を青くして、渋々自分の馬車に乗り込んだ。
やっと出発できるよ。
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魔導車の中で、わたしはソールさんに聞いた。
「ソールさん、何であのガキに『浄化の光』をかけたとき、あんなに力をセーブしたの?」
「いや、あれ以上強くかけると、色素が『色なし』レベルまで薄くなって、性格まで変わってしまうので色々拙いかと思って自重したんです。」
ソールさんによると、体の中の瘴気を浄化すればするほど体の色素が薄くなるそうだ。
それだけではなく、魔獣が攻撃的なのは体内に蓄積された瘴気が原因であり、それと同じ理由で体内の瘴気が濃いほうが攻撃的な性格になるらしい。
あそこで、思い切り浄化してしまうとあのガキがひどく温厚な性格になってしまい、周囲が困惑するだろうって。その方が、周りの人にためになりそうだと考えているのはわたしだけだろうか?
ちなみに魔獣くらいの濃度で、瘴気に汚染されていなければ、浄化しても消滅することないんだって。
あ、でも、一度人間の中の瘴気を浄化しちゃうと、浄化された人が蓄積できる穢れたマナの量が減っちゃうんだって、だからあのガキは今まで通りには魔法は使えないかもって。
「ターニャちゃんは凄いね、お貴族様に対してあんな風に話せて。
私は、お貴族様は危ないから逆らちゃダメって言われてきたから、怖くて話すこと出来ないよ。」
と、ミーナちゃんが言っている。いや、わたしは、世間知らずなだけだから。
でも、わたしは相手が誰であろうと、悪意には悪意で、善意には善意で返すよ。
意味なく横柄な態度とられて、諾々と従うほど人間ができていないから。
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ミーナちゃんとお喋りしているうちに、王都に到着した。
シュケーさんが、門の衛兵さんのところへ行って、野盗を捕まえた旨と野盗に捕らわれていた貴族の子息を保護した旨を伝えると直ちに詰め所に通された。
二十人以上の野盗を無造作に積み上げた荷車を見た衛兵さんは、苦笑いを浮かべていた。
衛兵さんが総出で、野盗を荷車から降ろしていた。全部で二十三人いたらしい。
野盗を一人捕縛すると金貨一枚を褒賞金として貰えるらしい。金貨二十三枚の儲けだね。
他に凶悪犯には別途懸賞金がかかっていることもあるそうだが、今回はいなかった。
ま、フェイさんが『時化てる』と言っていたので、小物ばかりだったんだろう。
アロガンツ家の一行は、衛兵が事情を聞くということなので、ここでお別れだ。
馬車の車両を魔導車に連結して、魔導車の速度で引っ張ったので大分揺れたらしい。
三人とも青い顔をしていた。
お供の女性がお礼がしたいので連絡先を教えて欲しいと言ったが、これ以上関わりたくないので丁重にお断りして別れた。
精霊の森を旅立って十日目の夕刻、わたし達は王都ヴィーナヴァルトの門をくぐった。
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