リアル【春の詩企画】
『3月弥生のこの良き日 』
『三年間通った 学舎を旅立ちます』
先輩の声が流れる
式典の体育館
在校生の席で耳を済ませ
目を凝らしている
声が心に響き
姿が脳裏に焼き付く
先輩 大好きな 先輩
もう声も姿も
今日で見納め
聞きおさめ
リアルでは最後
『ありがとうございました』
声が……
式の終わりを告げている
校歌を歌う
ピアノに合わせて
歌をうたう
先輩の後ろ姿
それを見ながら
ぐっと堪えて
歌った……
誰もいない
その日の放課後
三年生の教室に
カラリと開いて
入ってみた
先輩のクラス
窓際の前から
五番目が
先輩の机
大好きな先輩
もう会えない
窓際にもたれて
話して笑ってた
机に 頬杖ついて
授業中 窓から外を
眺めていた
グランドに
面してるから
その姿を
毎日
目にしてた
鍵を外し
窓を開ける
夕の風が走る
カーテンが揺れる
先輩が見た風景
空を見上げる
同じ校舎からなのに
違う色に 見える空
先輩 先輩
大好きな先輩
もう 来ない
カタンと
椅子を引き
座る その席に
先輩の席
黒板を見る
頬杖をついて
グランドも
同じ世界を
見てみた
先輩が見た
世界を
見てみた
もう 何処にも いない
机の上に 頬をよせる
気のせいか
ほのかに
温もりを感じた
先輩の机
好きだと言ったら
何か変わった……
気持ちを伝えたら
何か起きた……
でもしなかった
出来なかった
ダメだったら
ただ姿を見るのも
いやがられるかも
しれないと……
だから怖くて
貝の様に
口を閉ざして
甘い実が中にある
殻持つ胡桃の様に
固く気持ちを
閉じ込めた
先輩 先輩
大好きな 先輩
もう 出逢えない
もう リアルでは
声も姿も
見ることも
聞くことも
無くなった
ポケットから
携帯を取り出す
フォトを表示
今日 皆にまぎれて
最初で 最後の
二人で並んだ1枚
それを目の前に
立て掛ける
先輩 先輩
卒業おめでとうございます
そして……
本作は「春の詩企画」参加作品です。
企画の概要については下記URLをご覧ください。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/1423845/blogkey/2230859/(志茂塚ゆり活動報告)
あのお二人とは別世界ですー。




