その96.いつも通りで良い時と、いつも通りでダメな時。まぁ、なんでもいいけど……
無言で街中を歩く僕等二人。
傍から見れば、
彼氏彼女の関係に見えるかな……等という甘酸っぱいことを考えることは無い。
何故ならば、
「きゃ、きゃぁ〜」
という棒読みと同時に縁が僕にもたれ掛かる……と思いきや。
横からのいきなりのクロスチョップ。
勢いに乗せた、良い感じのクロスが僕の側頭部にクリーンヒット。
「へヴぁ!?」
間抜けな声と共に僕が道端に吹っ飛んだ。
「……ああ! ご、ごめん!!」
そう、先程からコレの繰り返しなのである。
ボロ雑巾のように倒れている僕に慌てて近づくと、
立ち上がるのを助けてくれるのか、腕を取ってくれた。
かと思うと、そのまま腕挫十字固。
解り易く説明すると、倒れている僕の首に両足をまさかりのように刈り取ると同時に体を後ろに倒したのだ。
腕は曲がる筈の無い方向に体重を乗せられて曲がるわけだ。
下手したら普通に腕折れます。
スカートでそんなことをしたもんだから、
横を見たら良い物が見れたかもしれないわけなのだが、ミシミシと音を立てる腕に対してそんなことを考える余裕はぶっちゃけ無い。
先程、倒れている自分をボロ雑巾と比喩した僕に、正に追い討ちとなった腕挫十字固。
泣きそうでは無く、死にそうです。
「ああ! またやってしまった!」
と、腕挫十字固を決めながら縁は呑気な声を上げる。
「とりあえず!! 速く退いてェェ!!」
ミシミシいってる! 腕がミシミシ言ってますよ!!。
…………とまぁ、
他にも、様々な女の子らしさとは掛け離れたプロレス技をかけてきやがる。
周りから見れば、彼氏彼女、というよりかはドタバタ漫才をしているようにしか見えない。
その度に僕は泣きたい思い、基死ぬ思いをしており、最早心も体もボロボロですよ!
というか、わざとだろ! さっきから!
ボロ雑巾の更に下のボロい布切れへと変貌した僕は……まぁ、つまり、
雑巾にもならない程ボロボロの薄汚い布だと思ってくれれば良い。
そんな状態の僕に、困った顔で縁は手を差し伸べてくれた。
取り合えず警戒しつつも、その手を借りて立ち上がることにした。
……手が小さい。
馬鹿みたいな力のクセに、そこは女の子か。
珍しく、済まなそうに隣をトボトボといった具合に歩いている縁。
そんな縁を見ていると、僕の脳裏に志保ちゃんの言葉が浮かんだ。
『縁を楽しませてあげて欲しい』
そう言ったあの子の意図は取れない。
だけど可愛い子の頼みじゃ、仕方無いよね。
横目で縁を見る。
暗い顔で歩く縁に、いつもの元気は無い。
ま、今の感じじゃ……楽しそうには見えない、わな。
志保ちゃんは、多分女の子らしくしろって言うよりかは、意地張らずに、ってことじゃないの?
君、毎度毎度、馬鹿みたいに意地張ること良くあるし。
「あのさ」
僕の声に縁は顔を上げた。
「君は、前のゲームで勝ったんだ」
縁は複雑そうに軽く頷いて見せる。
「君が望むなら、今日一日は君に対しての暴言はやめておくよ」
僕はぶっきらぼうにそう言ってみせる。
「だから、いつもどおりしてなよ……」
というか、そうして下さい。
いつも以上に飛んでくる暴力に、僕の身体は滅亡寸前ですよ!
少し考える素振りを見せた後に、縁はしっかりと頷いてくれた。
「うん、解った」
そういって、縁は笑って見せる。
……その笑顔は、私服と、風で揺れるストレートの髪に良く合っている。
うん、まぁ、別に見惚れたとかそんなんじゃ無いから。うん……。
「ま、まぁそれはいいとして! 結局、その行きたい所ってどこ?」
「え? あ、ああ、ソレね」
縁は僕の言葉に答えながら、携帯を取り出すと、一瞬だけ開いて直ぐに閉じた。
多分、時間を確認したのだろう。
適当な推測と共に、縁に視線を送る。
「……やっばい」
何故か、そう零すと表情が青くなっていく。
「なに? どったの?」
適当に聞いてみる。
時間を見て、顔が青くなる……まさか、行きたい所には時間が在って、しかし、その時間が過ぎている、とか?
「今日行く所なんだけど、時間があって……その時間までに入んないと入れないんだ」
うわぉ!ドンピシャリかい!!
ま〜そりゃそうか、約束の集合時間から20分も遅れてりゃねぇ。
「で? 間に合わないわけ?」
僕としては、知らない所なのだからどうでも良い訳だが。
「……飛ばせばギリギリ」
そう言った縁の目に何故か赤い炎が宿っていた。
「飛ばすって、僕も?」
なんだか嫌な予感しかしないんですが。
僕の不安な声等、最早聞こえていないらしく、何かをブツブツと言っている。
「時間は残り5分……本来、ここからなら約15、6分で行ける距離……上等じゃない! これは時間との戦い!!」
……はい、僕の言葉通りに、いつも通りの縁さんです。
しおらしかった縁は何処へやら。
というか、15、6分の距離を飛ばして5分で着くもんなのだろうか。
走りで。
いや、彼女に常識は通じない。
大きな溜息を付こうとした瞬間、僕の手を握ると猛ダッシュを決め込んだ。
冷たい風が頬に当たり過ぎて寒い。
溜息も付かせてくれないのか。
あ、今、車抜いた。
道路でブォンブォン言ってる結構速い車を。
……君速過ぎでしょ。
なんでスカートでこんな速く走れるんですか。
速過ぎて僕の体は浮いてます。横に、
グワングワン揺れる体に、気絶寸前。
相変わらず、常識離れした彼女に、最早驚くことにも疲れたわ……。
僕と君が繋がっているのは。
君の小さな手が僕の手を思いっきり握っている手、だけ。
無邪気に走る、まるで子供だな……。
はい、更新遅れて申し訳ないです。
ノロウィルスの野郎にやられました。
上も下もボロボロです、身体的にも精神的にも。
だけど、小説は更新するよ!!頑張って!
大体的に編集しました!、ごめんなさい!
頭フラフラの状態で書いたせいか、文章の酷い部分が……(言い訳)