その93.可愛い声は聞いてるだけで優しい気持ちになれますよね、癒しってステキ!
『あの……へーじさんですか?』
そのか細い控えめな声に聞き覚えがあった。
可愛らしい高い声に、多少の焦りを覚えたが、直ぐに冷静を保つ。
「……志保ちゃん?」
僕の答えに、あちらから多少の驚いた声が聞こえた。
『あ、あの? 解りましたか?』
まぁ、番号も教えた記憶は無いのだが、こんな可愛い子から電話が来るのなら嬉しい限りですな、ッハッハッハ!
「まぁね、というかなんで僕の番号知ってるの?」
予想は出来るけどさ。
『それは……』
『アッハッハッハ! へーじ焦ってる? 焦ってる? アッハッハ!」
しどろもどろした声の後ろから、聞き覚えのある高笑いが聞こえた。
お前か、お前かァァ! 予想はしてたけどな! でもなんで電話番号しってんの!? ちょっと凄いな。
というか、この高笑いを聞いてるようでは、あの一瞬見せた泣き顔は気のせいだったか?
『す、すいません! 勝手に電話してしまいまして……」
ウハハ! 君だったら大歓迎さ! 言わないけど。
「別に、で、なんのよう」
いつまでもこの愛くるしい声を聞いていたいのだが、変な言葉を吐いて、それをミホに聞かれてまたネタにされちゃかなわん。
シャレにならん。
この電話も盗聴してそうな気がする。
考え過ぎかもしれないが、性悪女ならやりかねない。
マジで。
『そ、そうでした!』
慌てた声も可愛いね君。
僕がそんな邪な考えをしてるとは知らず、志保ちゃんは進める。
『態々(わざわざ)電話をしたのは、学校では言えないので……お姉ちゃんから教えてもらいました』
まさか、告白!?
なわけ無いか……
『お姉ちゃんから聞きました、今度、縁とデートするって』
「ッブ!!」
『!?』
突然の発言に吹いてしまった!
志保ちゃんまでそんな勘違いを……。
さっきまでの、告白じゃね? みたいなこと考えてた自分をぶん殴りたい。
ちょっと浮かれてた自分を蹴飛ばしたい。
「ゴメン、ゴメン、続けて」
取り合えず先を促す。
誤解は明日解こう。
長くなりそうだ。
ワンテンポ開けてから志保ちゃんは続けた。
『縁に……彼氏がいたのって、知ってます?』
ん? 何で今それを?
「まぁ、知ってるけど」
そこで、また志保ちゃんは間を空けた。
その間に何か意味があるのか、解らない。
だけど、それでも、この子が何かを伝えたいということは解った。
そして、ゆっくりと話始めた。
『……縁は、彼氏さんと別れたことを、今も気にしてます』
「へぇ? そんなタイプには見えないけど?」
あんな天心万蘭な子が、そんなことを気にするとは思えない。
『アハハ……縁は、あんなんですけど、本当はとっても女の子らしいんですよ?』
乾いた笑みと共に、そんな言葉を零す。
可愛らしい女の子ねぇ……。
『女の子っていうか、子供なんです』
?、声のトーンが落ちたような気がした。
悪口とかじゃなくて、純粋な一言。
『縁は、なにも色恋沙汰なんて解ってないクセに、そういうのに憧れを持ってるんです』
一つ間を置いて、
フフ、と小さく笑い声を零していた。
その小さな笑いにどんな思いを込めているかは解らないけどさ。
『馬鹿みたいですよね?』
「ああ、唯の馬鹿だね」
そこは賛成だね、彼女は唯の馬鹿だ。
『……だから、日曜日お願いしますね』
「……はい?」
意味解らなすぎるんですが……。