その92.姉貴は人類最強 言いすぎでは無いです。 そして褒めてもいないです。
あの後、僕等は帰ることにした。
帰り道、縁は悪い事をした、といった具合に表情を曇らせていた。
お互い無言で喋る事は無かった。
そのまま、縁とは別れた。
家に帰った後、いつもどおりご飯を食べて、風呂に入り、後は寝るだけ。
寝るだけなのだが……
居間に敷いた布団の上で、僕は胡坐で座ったまま考え込んでいた。
ミホの、あの一瞬の表情が頭にチラついて、眠れない。
いつも笑っているミホが、泣きそうな顔をするなんて、正直焦った。
何で、あの子はあんな顔したのかな。
僕には解らないよ。
解らないなら聞くしかない。
誰に? 本人に聞くのは流石に気が引ける。
ならば、誰が居る。
近場に相談できる人間……
……。
不服だが、姉貴しかいない。
未だ、病院から退院出来て無いらしい姉貴は何度も病院を抜け出しているとかいないとか。
その度に悪化して連れ戻されているらしい。
姉貴は仕事馬鹿と言っていい部類です。うん。
携帯を開くと、手早く姉貴にメールを送る。
深夜では無いが、寝る時間には変わりない。
起きていないなら仕方がないけど。
文は、こうだ。
11:20
Re;
[今日、僕の知り合いの女の子が泣いてたよ
泣くような子じゃないのに。 そんな子が泣く時ってどんな時?]
自分でもイマイチな文法だとは思うが、プライバシー的な問題を入れても、こんな文章になるのは仕方がない。
2分ほどでメールは返ってきた。
11:22
Re;Re;
[へーじは、どう思う]
……? なんだ? どういうことだ?
何で聞いたのに、また聞き返されてるんだ?
言葉の意味が理解出来なかった僕は、直ぐにメールを返した。
11:23
Re;Re;Re;
[は?]
これだけ。
まぁ、姉弟の関係なのだから、これだけで僕が、
意味が解らない、と言いたいのを解ってくれたと思う。
今度はメールが返ってくるのが遅かった。
11:27
Re;Re;Re;Re
[自分の思うことが答えです あなたが考えている通りに考えなさい 行動するのはあなたです]
……余計解らん。
姉は保護者という立場を自負しているらしく、姉というより、母親の概念の方が近いのかと思う時がある。
だが、たまに姉の言うことは解らない。
と、いうか、これは取り合えず、『自分で考えろ!!』ということだろうか……。
なんと理不尽な。
いや、まぁ質問に答えてくれただけで良しか。
……答えてくれたのか?
まぁいいや。
それから、僕がメールを返そうとした時、
その行動は出来なかった。
それは、ブルブルと突然携帯が震えだしたからだ。
メールが来たからでは無い。
誰かから……電話?
携帯の画面にうつる番号に見覚えは無い。
恐る恐る電話に出る。
「もしもし」