その91.私とへーじが出会った話2
「アッハッハ! OKOK! だったらこの子は私が飼うよ!」
私の言葉に、え?と、小さな声を零した。
以外だった?
「君が……? 飼う?」
「そ! 私の家で責任持って飼わせてもらうよん?」
親は何も言わないだろう。
そういう親だ。
妹の志保も動物を飼いたい、と時々零していた。
目をパチパチとして、解り易い程に驚いている。
「何で?」
「アッハッハ! 何でかな?」
ま、気に入ったしね。
「ホラホラ! これで助かるんだから撫でれるよん?」
「別に……いいよ」
おやん? 今度は何で?
へーじ君はそれだけ言って、立ち上がる。
立ち上がっても私と身長が大差無い。
「君は、変わってるね……」
そこで、ゾッとするような視線を私に向けた。
「!」
流石の私も表情から笑みが消えた。
黒い。 何処までも暗くなるほどの目。
その眼には光は映らない。
「あ、アハハ? こ、怖いな?」
慌てて、適当な笑みを取りつくろうも、声が上連ってしまった。
だが、その眼は直ぐに消えた。
真黒な暗い瞳は、めんどくさそうに、最初の疑った表情に
「動物ってさ、そんな簡単に飼えるもんじゃないよ?」
??、何だろ? 心配してくれてんのかな?
「僕さ、昔犬飼ってたから、解んないことあったら聞いて?」
何処と無い優しさは、私に向けてでは無く、犬に向けている感じがした。
「アッハハ! 心配なんだ? この子が」
そう言った後、へーじ君の視線は子犬に移った。
「べ、別に?」
とか言いながらも、子犬に向ける視線は、心配、と語っている気がする。
プププ! 本当に面白いな! 犬が好きなのかにゃ〜?
「見知らぬ君に言ってもアレだけどさ」
そう言うと視線を子犬に向けたまま、小さな声でボソボソと言葉を続ける。
「人間は理不尽だね……飼うだけ飼って、飽きたら捨てる」
そう呟く言葉はまるで人ごとでは無い、と言った具合だ。
あ、人じゃ無いや、犬ごと?言わないか。
「何か理由があったんじゃない?」
なんと無しにそう返す。
「この犬以上の理由なんて……無いと僕は思いたいよ」
……アッハ、やっぱ君良いね、すっごく良い。
優しいから、偽善からの来る言葉じゃなくて、心からの言葉。
そう、思えた。
短い時間だったけど、へーじ君は犬好きだってこと、解ったよ。
視線は再び私に、今度の視線に疑いの目線は無かった。
「この犬は喋れないから代わりに言ってあげるよ」
代わりに?
どういうことだろ?
『ありがとう』
そう言った後、へーじ君は何事も無かったように立ち上がると、去って行った。
私は、というと去っていく背中を唯、眺めていた。
アッハハ……その、お礼。 その子の言葉って言うよりかは、へーじ君の言葉に聞こえるなぁ?
なんに対してのお礼かは、解らない方が良いかな?
皮肉めいた言葉を吐くけど、その言葉とは裏腹に、純粋な感情に興味を持てた。
結局、その後子犬は私の家で飼っている。
その後、子犬は悪いことも無くスクスクと育ってくれて、我が家で可愛がっている。
家の子犬を見る度にへーじが頭に浮かんだ。
あの出来事から、何となく気になって、へーじの事を一度調べたことがあった。
……私は、へーじの過去を知って多少は驚いた。
だけどへーじはへーじ。
子犬の段ボールの前にしゃがみ込んでいたへーじが私の中のへーじ。
無意識に私は歩いていたらしく、目の前に一般的な2階建ての家が見えた。
私の家だ。
私に気づいたのか、ワン!ワン!と、大きな鳴く声が聞こえる。
あの時に比べて大きくなったうちの犬だ。
私は家の玄関に手を掛ける。
……今日の事は忘れよう。
明日はまたへーじをからかおう
明日はどんな顔をしてくれるかな?
私は含み笑いと共に家に入った。
親戚の家に行ってて更新遅れた_l ̄l○