その90.私とへーじが出会った話 結構ベタな出会い方なんだけどね〜?
私とへーじが出会った日。
それは高校1年生の始業式の日。
温かい春の日の放課後。
始業式の帰り道。
私は大きなデパートに買い物に出かけていた。
買い物を終わらせて、外に出た時にへーじと出会った。
薄汚い段ボールの前にしゃがみ込んでいた。
最初は子供と思った。
だが、
自分と同じ真新しい学生服に同い年の同じ学校と推理。
後ろに近づいた私には気づかず、何やらブツクサと呟いていた。
独り言を呟いている様に見えるこの子が面白くて、何となく近づいた。
気づいていないので、独り言を聞こうと思う。
「君さ……今、どういう気持ち?」
……?、誰かに話しかけれているらしい。
ちょっと背伸びをする。
上から話しかけている先を見てみる。
薄汚い段ボールに入っていたのは。
小さな子犬だった。
薄汚れた小さな子犬は必死に尻尾を振って、この男の子に愛想を振りまいている。
と、いうか、この少年は子犬に話掛けていたらしい……っぶっふぅ!?
こ、堪えろ! 私! 気付かれたら、この面白いものを見れなくなる!!
高校1年生とはいえ、その身長で子犬に話掛けているのを見れば、誰でも頬が緩むと思う。
必死でこの少年の直ぐ上で私は笑いを堪えていた。
子犬に! どういう気持ち? て! 答えるわけ無いのに! 受ける! これは受ける!!
そんな必死な私等知らず、少年は再び子犬に話しかける。
「…………捨て犬、ね、哀れだな」
哀れ? 捨て犬に向けて嘆きの言葉を吐いたのだろうか?
見た目に比べて、えらく大人びたことを言う。
等と思っていると、私の考えは甘かったらしい。
「フハハハハ! 哀れだな! 犬よ! 」
!?、突然の男の子の高笑いに私は焦った。な、嘆いてたんじゃないの!?
男の子の言葉を理解してるとは思えない犬は、段ボールの壁に手を掛け必死に背伸びをしている。
舐めたいらしい。そんな子犬の姿はどうにも愛らしい。
「ッハッハッハッハ! そんなに助けを頼んでも僕は知らないね!」
いや、嬉しそうに尻尾振ってるから、助けを頼んでるって感じじゃないと思うけど。
暫く男の子は高らかに笑って見せると、突然ピタッと止った。
そして、小さな声で再び犬に話しかける。
「捨てられて……君はどんな気持ちなんだ?」
――声色が変わった気がした。
「御主人は帰ってこない、これからどうする、捨て犬の生存率はあまりにも低い」
悲しそう、というよりは、あまりにも冷静な声で少年は続ける。
「雨に打たれて、保健所に捕まって、餌が無くて、危害を加えられて、今の君にはこの世界はあまりにも厳しい、な」
ボソボソと言いながら、右手を子犬に伸ばす。
だが、その手は子犬に届く前に慌てて引っ込めた。
「撫でないの?」
私はつい、声をかけていた。
子犬に話しかけるこの少年に興味を持った。
ビクッ! という具合に少年は動きを見せると慌てて振り返った。
「………………何」
たっぷり間を使って、男の子は私を胡散臭そうに睨んだ。
その童顔な顔に覚えがあった。
確か同じクラスになった男の子だ。
男の子にしては身長が低いな? というのと、その男の子と対極のような目立った大男が一緒にいたから新しい学校でも直ぐに覚えがあった。
というか、デカイ男が目だってて、嫌でも目に付いた。
名前は……何だっけ? あ、でもクラスの自己紹介で自分を、へーじと呼んで欲しい。
と、言っていたっけ。
「だから、撫でないの?」
私は繰り返し続けた。
まだ私を胡散臭そうに見ている、口が開いた。
「君が撫でれば?」
むむ、顔に似合わず結構クールでドライって感じ?
私は負けじと言い張る。
「その子は撫でて欲しそうにしてるけど?」
その子、と言ったのは勿論子犬のことだ。
ブンブンと尻尾を振っている姿と、顔を必死でへーじ君に近づけようとしている姿は可愛い。
子犬をチラ見した後、再び私の方を見る。
「撫でたら、この犬は助かるのか?」
え?
私の顔はきっと不思議そうな顔をしていたのだろう。
へーじ君はため息と共に、付け足す。
「この犬を撫でるだけなら幾らでも出来る……でも結局は助けられないんだ、察してよ」
私は自分で言うのもアレだけど別に馬鹿の方では無い。
だけど、それでも、まるまる五秒程は使って考えてしまった。
そこで理解した。
へーじ君は、かわいそう、かわいそうと言ってこの子を愛でても、この子を助けることは出来ない、飼うことが出来ないのかな?
それが解ってるから、あえて突き放す。
私の考えがそこに到達した時、私の中で再び爆発した。
今度は我慢出来ない!
「ッブ! アッハッハッハッハッハッハッハ!」
人の目等気にせず、私はその場で吹き出し、爆笑していた。
面白い! へーじ君! 面白いよ! きみ!
私が目の前で大爆笑しているのに驚いているのか、ポカンッという具合に私を見ていた。
――面白い。
助けられない、解ってるのに、君は何でここで子犬を見てたの?
何で、触ろうとしたの?
無意識に触ろうとして、そう思ったんだ? だから慌てて手を引っ込めたんだ?
面白い! 面白いよ!
私はこの時には既に縁ちゃんを知っていた。
妹の志保と縁ちゃんは同じ中学だったから。
縁ちゃんとは違う考え方。
あの子だったら、慌てて家に持ち帰るだろう
だけど、違う。
へーじは、縁ちゃんみたいに見て直ぐに突っ走るわけじゃなくて、
考えて、
自分が離れた後のこの子犬の気持ちを。
第一に考えたんだ。
また、面白い物を見つけた。
大掃除中にお金を拾った時の話。
私「お金落ちてたー!」
兄「見せろ!」
姉「その金○○のじゃないやろー!」
母「大掃除終わったらそれで食べに行こうか」
こ、こいつら……!
必死でお金を守っていると、父が帰って来て言った。
父「ああ、それ俺のだ」
ちょ!私が拾ったのに、なに!?
何とかお金は死守しましたが、お金で家族がワラワラと寄ってきたのは、焦りました。