その89.私の大好きな光と闇、そして私はその間。どちらにも転ばない紛い物
暗がりの道をダッシュで走る。
街灯がポツポツと光り出すあたりから、既に夜は目の前のようだ。
私は走る。
逃げるように、
嫌、実際私は逃げている。
縁ちゃんは嫌いじゃない。
寧ろあの子は大好きだ。記者として
常に一直線のあの子を見ていて飽きない。
だが、その真っ直ぐ過ぎるのが、偶に私は苦しい。
私は決して良い人間じゃない。
だから彼女が時々眩しい。
一直線過ぎて眩しい。
だけどその眩しさが好き。
蛾が火に飛び込むのと一緒。
私もその光を求めて火に飛び込むの。
きっと、へーじも私と同じ部類。
性格も、何もかもへーじとは違うけど……
へーじもそう、暗がりにいようとする反面、縁ちゃんのような光に惹きつけられる。
私と一緒ならば、へーじは縁ちゃんを通して変われる。
きっと、
でも、縁ちゃんの火は、あの夜を堺に弱った気がする。
だけど、再び火は強く強く燃え出した。
それはきっとへーじのおかげ。
へーじが縁ちゃんを、縁ちゃんがへーじを変えようとしてる。
嬉しかった。
大好きな光がもっともっと輝いて。
私と同類である、へーじの闇が薄れていった。
なんて素晴らしいの?
私が見たいものが一遍に二つも見れるなんて!
……なのに、何故。
私を共演者にしようとするの?
私は傍観者でいいの。
見ているだけでいいの。
私なんかに光を与えようとしないで? 縁ちゃん。
縁ちゃんは、私がなんで嘘を付くかなんて考えて無い。
私が辛そうに嘘を付いたと思ったから。
そう見えたから縁ちゃんは、嘘だと言ったんだ。
どこまでも優しい子。
でも、いいの。
アナタは蛾のこと何て考えないでいい。
ゴゥゴゥと音を立てる炎でいて。
それだけで、私は助けられる。
へーじも、きっとそう。
私は傍観者、見てきた物を文字へ変えるの。それが私の勤め。
物語の主人公達は、私なんかを気にしちゃダメ。
私に。
素敵な物語を、見せて。
…………そう思っていたのに。
私はなんで、悲しんでいる?
目の前で輝く縁ちゃんを前にして、蛾は飛びこまなかった。
いつものように笑って誤魔化せば良かったのに、出来なかった
怖かった。 何が?
私は面白ければいいのに、
何が怖かった?
縁ちゃんが?
へーじが?
わからない……。
走りながら、私の頭の中にグルグルと考えが回る。
いらないことばかりが頭を過る。
無意識に走るスピードが落ちていく。
考えごとが増す度に、スピードが落ちる。
そして、等々、私の足は止まった。
既に周りは真っ暗。
明かりは私の上にある街灯のみ。
ゼッゼッ、と息を切らすと、白い息が空中を舞う。
ポケットの中を弄ると、生徒手帳を取り出した。
この生徒手帳には様々な情報を書き足すようにしている。
生徒手帳を開くと、へーじの写真が目の前に存在した。
つまらなそうに、授業を聞いているへーじの写真。
なんとなく撮った写真がとても良く撮れて、気に入っている一枚だ。
気に入っているから挟んでいるだけ。
そりゃ時々は見てる。
だって、良い写真でしょ?
斜めからのブレが無く、この写真を見るだけでへーじの気持が解るような気がする程だ。
頭の中で言葉が過る。
じゃぁ、他の人の写真でも、こんなに大事に持ち歩く?
それが気に入ればきっとどんな写真でも持ち歩く。
だけど、これはへーじじゃないと撮れない気がする。
何で?
募金の時に志保が私に言った。
へーじが好きなの? と言う、言葉が頭に浮かぶ。
そんなことは無い!
筈なのに、いつものように冗談のように笑う筈だったのに。
真面目に受けとめてしまった。
さっきの廊下の時も。
あんな口約束を私はなんで真に受けた?
なんで、縁ちゃんの言葉が私との口約束と被っただけで、こんなにショックを受けているの!?
解らない……解らない……
人のことはこんなにも解るのに、自分のことが解らない。
好きなんかじゃ無い、きっと。
私は、私は。
1年生の春。
へーじは覚えているかな?
私と初めて出会った時のことを。
私は……覚えている。
駄目だ……シリアスから抜け出したい……
馬鹿みたいなこと書きたい……