その85.鈍感すぎて困る!ハッキリ言うのは恥かしい、こんな状況見られたら……
拳を震わせる縁は、怒りとも困惑とも解らない表情へ。
何で落ち込んでんのか解ってないくせに。
嫌われてるって解っても、怒りでは無く悲しみが生まれる君は。
それでも、自分を嫌う奴等に対し、君は嫌悪感を抱くことが出来ないんだ。
君のことなんて知らないけど、ソレは解る。
縁は大きな瞳で僕を睨む。
だが、その目は怒りを示そうとするも、悲しみが隠れていない。
君は一人じゃないのに、何で無理をする。
それが正義なのならば、そんな物捨ててしまえ!。
「もっと周りを頼れ! 君には友達が居るだろ!?」
そう、君は『一人では無い』。
志保ちゃんの様な子が友達ならば、絶対にもっと友達がいるはずだ!
「だって! そんなの、悪いよ…」
僕に気圧されたのかは解らないが、縁の声が小さくなった。
表情の怒りは消え、今は困惑以外は無い。
「だったら、人の頼みなんて聞くな」
僕の即答に、縁が俯く。
君は。
優しいね。
「……僕を頼れ」
「え?」と、縁は小さく声を洩らした。
「僕だったら悪い気何てしないだろ?」
僕の言葉を理解したのか理解しなかったのか、表情は更に困惑で歪む。
そう、ミホがあの下駄箱で何故僕にあんな話をしたのか。
縁は悪に対しては遠慮は無い。
が、
中途半端な相手に対しては困惑するようだ。
募金のガキしかり、陰口を叩く女共しかり。
ならば僕はどうだ、目の前でハッキリと僕は言う。
曖昧な陰口では無く、直接言う。
対等だ。
彼女と僕は対等なんだ。
「君が悪い気をするならば、僕が変わりになる」
そう、僕は絶対に悪いだなんて思わない子悪党だ。
正義を語る君に出来ないことが僕には出来る。
「! そんなの…」
僕にまで気を使うな。君は黙って真っ直ぐ歩け。
守ってやる。
それで君が無理をする必要がなくなるなら。
本当だったら僕は、そんなの嫌だ。
だけど、
君が『僕と同じ』なら別だ。
縁は小さく、おそるおそる、といった具合に口を開く。
「何で?、何でへーじがそんなことを言うの?」
その言葉の意図は取れる。
昼と同じだ、何故僕のような人間がここまで言う? 本当だったら放って置く。
僕は先程も言った言葉を繰り返す。
「だから僕は今日一日は……」
「そうじゃない!」
ゲームのことを言おうとした瞬間、縁が大声を張り上げた。
僕はその大声に驚き、途中で言うのを止めてしまった。
そうじゃない…?
今度の言葉は僕にも意図が取れない。
顔を上げ、しっかりと僕を見据える縁は再び口を開く。
「アタシにそこまで言って! 逃げないでよ! 何でアタシにそこまで言ってくれるの!?
何で!?」
ッ!
僕は縁の言葉と共に固まった。
確かに僕の言葉は逃げだ。
その通りなのだから何も言い返せない。
僕はいつまでも好青年なわけでは無い。
今日一日の僕の行動は全てゲームだから。
だったら僕の言っている言葉は今日一日だけの幻想に過ぎない。
縁は僕に逃げるなと言った。
だが、ハッキリと言うのは正直に恥かしい。
何故、僕は縁にここまでする。
『対等』という言葉を言っても彼女は理解しないだろう。
彼女の性格に合わせた言い方をしなければならない。
成る程……。
こりゃ罰ゲームだ。
顔が熱い。
僕は慌てて俯いた。
多分、僕の顔は真っ赤だと思う。
最初に告白なんてしないと言っていたのだけど、
今が似たような状況であることは変わりない。
教室を照らす夕日で僕の顔が赤いのが縁にばれないことを祈る。
顔を上げ、彼女を一直線に見る。
彼女の目が薄ら赤く見えるのは夕日のせいか、それとも……。
彼女の目を見た瞬間、僕の鼓動は早鐘のように大きく、ドクドクと繰り返す。
心臓が直ぐ横にあるんじゃないか? と、疑問に思う程に良く音が聞こえた。
これほど鳴っていると、縁にも聞こえているのでは無かろうか。
言うんだ。
自分で自分の後押しをしようとするも、その度に鼓動が大きくなっている気がする。
縁の僕を見る目に疑問が浮かんできている気がする。早く言わなければ!
だが急かす度に苦しくなる。
今の状況だったらナイフを突き立てられても、え? これ玩具? とか言って笑える自身がある。
寧ろそっちの方がいい!言葉一つなのに何でこんなに大変なんだ!?
悪口だったら幾らでも言える。
だが、このたった一言が、あまりにも重い。
「……だから」
小鳥のようなか細い声が僕の口から漏れる。
よし! 良く言った! 僕!
「え? 何?」
精一杯振り絞っていったのに、縁は聞き逃したらしい。
「何で聞いてないんだよ!」
僕はショックでおもわず叫んでいた。
「聞こえるわけ無いでしょ!!」
縁は叫び返す。
ううっ!?
でもさっきのをもう一回言える程、僕の心はたくましくない!
睨み付けるような縁の視線から逃げるように目が泳ぐ。
「僕は言いましたー!もう言いませんー!」
自分でも思う。子供か。
「何よそれ!」
怒るでしょうね! でも僕もう限界なんです! 簡便して下さい!
「あーあー!もー聞こえなーいー!」
更に子供のように僕は耳を塞ぐ。
僕はそのまま逃げるように、教室を出ようと。
したが、ドア付近で人影が見えた。
人影はビクッ!と動きを見せた後、わたわたと動き出す。
わざわざ人影を確認するつもりは無かった。
だが、教室から出れば嫌でも顔を見ることになる。
「……え?何やってんの?君等?」
そこにデカイ体を小さくしよとしているサクと、今にもダッシュします! という具合に固まっているミホだった。
瞬間的に僕等三人は無言で固まった。
「待って!」
止めようと僕の肩に手を置いた縁も奴等二人が見えたのか、同じように固まった。
お使いに買い物に行った時の話。
言われていた物が無かったので電話。
私『肉まん無い』
姉『ッチ』
私(舌打ち!?)
姉『じゃあコンビニまで買ってこいや、勿論お前の金で』
私「不良かよ!!」
姉『後、ジャンプも』
私『ちょ!待っ!』
ツーッツーッツー……
私「どちきしょう……」