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その84.君は強い、だけど弱い。僕だって弱い、だけど君よりかは強い。

 結局、鼻血を拭いた後 (僕が)、僕達2人は掃除を終わらした。

 縁は先程の落ち込みようは無くなり、いつも通りに見えた。

 っつーか君、僕に蹴り入れて満足したでしょ、絶対。


 夕日の照らす教室に佇む僕と縁。


 掃除は終わらせた。

 後は帰るだけなのだが、縁は一直線に僕を見据える。

 その瞳は僕に対し疑問が浮かび、何処か喜びも浮かんでいる気がした。

 猫のような大きな瞳は、不思議そうに、そして子供のようにマジマジと見つめる。


「何さ」

 僕は、如何にもどうでもよさそう。

 と言った具合の表情を見せる。

 正直、ここまで見られると恥ずかしい……

 僕なりの照れ隠しだと思ったらいい。

 だってさ!

 夕日で2人見つめ合うって!どこの少女漫画!?今にも告白な勢いですよ!!

 いえいえ、告白とかしませんけどね。

 もう一度、しませんけどね!?


 縁は小さく微笑んだ。

「へーじがなんで来てくれたかなんて知らない……だけど、ありがとう」

 そう言って笑う。


「君はいいの?あいつ等はまた君のことを言っていたよ?」

 僕は躊躇いなく教える。

 流石に何と言っていたか、までは言わない。

 そこまで最低のつもりはない。

 

 だけど縁に、何としてでもあの女共を嫌いになって欲しかった。

 君が正義と言いながら行う行為に一々文句を言う気は無い。

 だけど、あいつ等のためになることはして欲しくない。

 あんな奴らの為に、君が無理をする必要は無い。


 だが、縁は笑いながら言う。


「そっか」


 唯、それだけ。

 昼休みの時に言った言葉と同じ言葉。


 ……君は僕に何でお礼を言ったんだ。

 お礼を言ったってことは、助けて欲しかったんだろ?


 縁は僕に満面の笑みを向ける。

 なんで笑える。


 君の笑顔は嫌いじゃない。

 嫌いじゃないんだ。


 だけど。


 

 違う、

 昼休みの、君が悪口を言われてたのを教えた時と同じ笑顔。


 その笑顔が、隠していた。

 あの時は解らなかった。

 だけど、

『今度は騙されない』


「君は、そうやって昼休みの時も僕に笑いかけたね」

 僕の言葉に縁は頭の上にクエスチョンを出して首を傾げる。

 あの時は、君の信念がとても強いのだと思った。

 だが違う、君は『僕が居たから悲しまなかった』

 さっき、君は教室で一人、僕がいなかったら君は泣いていたかもしれない。

 一人で悲しんでいたのかもしれない。

 でも、僕が居たから。

 彼女は、慌て隠す。

 彼女のめんどくさい信念がそうさせる。


 僕が居ても隠しきれない程、落ち込んでたくせに。

 何故、落ち込んでいるのを隠そうとする。


「やめろよ、一人だけ背負ってカッコつけて、

それも君の言う正義か?」

 自然と声が鋭くなってしまう。

 僕だろうが、ミホだろうが、志保ちゃんだろうが、君は絶対に悲しい姿を見せない。

 バカ兄貴だったら尚更だろうさ。


 僕の言葉に、笑顔は崩れた。困惑した表情で僕を見る。

「ア、アタシは別に……そんな」


「だったら何故、そんな表情をする」

 意識してるつもりはない、だが、声が鋭くなる。


 縁の困惑の表情は、怒りへ変わる。

 言い返す言葉が無いのか?だから怒るんだろ?

「ア、アタシは本当に、なんとも思ってない! 昼に言ったでしょ!? 

アタシが好きでやってるんだ! それで、アタシが何と言われようがしったこっちゃない!!」


 じゃあ何で君は、僕が来た時に泣きそうな顔をしていた!

 自分ではそう思い込んでるだけで! 本当はすっごい気にしてるんだろ!?


 お前の兄貴は馬鹿だけど!

 悲しいことがあればその場で悲しむ! 

 君みたいに貯め込んだりはしない!


「本当は弱いくせに!強がるなバカ女!!」

 縁の叫び声に合わせるように僕は大声を張り上げた。

 夕日が照る教室に、僕の声は響く。


 縁が僕の言葉にビクッ!と体を揺らした。


「よ、よわいくせに!?」

 そんな言葉を出されるとは思っていなかったのか、表情は今度は怒りから驚愕へ。

 そらそうだ。君は実際に弱くないし、ガタイの良い男だって簡単に倒せる。

 自分でも弱いだなんて思わないだろうさ。

 君の中の正義の味方は、いつでも強いんだろ?


 弱い、というのが解った。僕は解った。

 ミホが前に言っていた言葉を理解した。

 この子は弱い。力の意味じゃない。


 でも、言葉じゃ言い難い。

 でも解った。弱いんだ!

 

 募金の時に、あのガキに『偽善者』と言われた時に気づくべきだった!


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