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その80.僕は『善人』じゃ無い、だけど『悪人』のつもりも無い

「は、はぁ!? 誰がクズ!?」


「この状況で誰がクズかも解らない君の頭は予想以上に馬鹿なようだね、クズ」

 もう、アレですよ溜まりに溜まったストレスが今思いっきり解消されている感じである。

 まぁ、この時はそこまで考えていないけど。

 僕の声に若干後ろに後ずさっているクズ女。


「はぁぁ!? 何アンタ? 頭大丈夫!?」


「君の方だろ?」

 相手の言葉に即返答、僕のハッキリとした言葉に困惑した表情へ変わった。


「な、何よ! こいつ!」


「こいつアレだよ、新聞に載ってたじゃん!」

 僕から見て右側の女が真ん中のクズ女に向けて何かを耳打ちしている。


「ああ、アンタ何? あの女の彼氏なわけ?」


 彼氏? やっぱり頭がクズなら考え方もクズか?

 クズ女は突然ヘラヘラとムカつく笑みを浮かべる。


「こいつアレだよねー! プレイボーイとかヌかしてたんでしょ? キッモーイ!」

 キャハハ!! という笑い後が再び耳に障る。


「黄色い声で喚くなブタが」

 僕の声は自分でも無意識なまでに低い声になっていた。

 僕の言葉と共に、女共の声はピタリッと止まった。

 真ん中のクズ女の顔が真っ赤になっていく。


「何だよ、怒ったのか? 人にそこまで言えるのに自分が悪口を言われたら怒る? ッハ! ブタじゃブタに失礼だ!! やっぱりクズがお似合いだな!」


 僕の吐き捨てた言葉に、左側と真ん中の女は更に赤くなるが、右側の気の弱そうな女の顔だけは青くなっていた。

 僕は最早相手が女だということも忘れて口を開いていた。

「聞いてんの? クズ共」



「チョーうっざい! いきなり人に悪口言って何なの!?」

 左側の女が耳障りな高い声で喚く。


「あの子に謝れ」

 僕は短く、簡潔に言った。


「は? 何で謝んなきゃいけないわけ? 別に悪いことしてないし」

 真ん中のクズ女がそう言った瞬間、僕の中で何かが切れた気がした。

 自分でも、こんなことは無かった。怒りに任せて、思った。


 殺したい。




「は? 何? 殴る気? 殴ったらアンタ退学になるんじゃない!?」

 知らずに僕は拳を握りしめていた。

 そんな自分に気づくと、自分自身で驚いてしまった。

 僕が、人を殴ろうとする程怒っていたことに驚いた。


 女の言葉に、僕は一瞬正気に戻った。

 そうだ、2年が1年の後輩を殴ればどうなる?

 しかも相手は女で僕は男。

 これはかなりの問題になる可能性は大きい。 退学も言い過ぎではない。

 僕が躊躇を見せたことに感づくと、真ん中のクズ女はしてやったり、と言わんばかりにムカツク笑みを浮かべていた。


「ほら! 殴れば!? 私があの女のことボロクソ言ってたのが気に食わないなら殴ればいいじゃん!! あんな女にそこまでする価値なんて無いけどねぇー!!」


 その言葉で、戻った正気も直ぐに消えた。

 お前はあの子みたいに、他人の為に一緒に病院まで行こう何て言えるか?

 学生が遊ぶであろう放課後の時間を募金に費やせるか?

 イジメを見過ごさず、立ち向かえるか!?

 彼女は一切文句を言っていない。

 ソレは彼女がやりたかったからやった。だから文句何て自分が言う必要が無い!


 なのに、


 なのに何でお前があの子の悪口を言える!!!!。


「この……クズがァーー!!!」

 僕は叫ぶと同時に近くの下駄箱を力任せに蹴った。

 ガァン! という音が回り中に響き渡った。

 力の無い僕でも、そんな音がするのだから、余程僕は怒っていたらしい。

 何で? 自分でも解らないが、死ぬほどムカツク!

 僕が下駄箱を蹴った瞬間に、「ッヒ……」という小さな悲鳴が聞こえた気がした。

 クズ女共の誰かが発したらしい悲鳴に、3人の後輩が怯えていることに気づいた。

 怒りで真っ赤に顔を染めていた左側と真ん中の女は青ざめ、右側の元から青ざめていた女は目に涙を溜めていた。


 僕が、最早退学等と言うことを考えていないのが解ったのかもしれない。

 だがその通りだ。

 僕の頭の中に退学に対しての恐怖心は消えた。


 叫んだ後、僕は何も考えていなかった。

 唯、勝手に口が開く。


「殴るなんてもので済ますものか……僕が卒業するまでにお前を追い詰めてやる……」

 ボソボソという声と一緒に、僕は一歩、女に近づいた。

 その僕の動きと共に女は一歩下がる。

 両端の女共が慌てて真ん中の女から離れていった。

 それを驚愕の表情で真ん中の女は見た後、困惑の表情のまま、視線は僕に。


「退学になるんなら……退学になる前に、お前を地獄に落としてやる、

どんな手を使ってでもお前を追い詰める、

同じ事をしてやるよ……あの子に後何をした? 背中を蹴った? 

じゃあ僕はお前の背中を刺す、

足を掛けた?だったら階段から落としてやる……

机にネズミの死骸でも詰めるのもいいな・・?」

 僕が一歩近づく度に、女は一歩後ろに引いていた。

 女の表情には、既に恐怖しかなかった。

 真っ青のまま、目に涙を溜めて今にも泣き出しそうに見えた。


「何だよ、何で泣きそうになってるんだよ、クズ、

僕が悪役みたいじゃないか……

やったことをやり返されてから気持ちが解るんじゃ遅いんだよ……

10倍にも、100倍にも、あの子の気持ちを味あわせてやる」


 やられた気持ちも解らないクセに好き放題、わめきやがって。

 お前を『昔の僕』と同じにまで追い詰めてやる。




 女の後ろは壁。

 もう下がることは出来ない。

 後は、僕が追い詰めるだけ。



 僕が後一歩で、女に触れる所まで来た。

 女が恐怖で目を瞑る。



 その瞬間だった。

 僕の腕を後ろから誰かが掴んでいた。

 そして、後ろを振り向く前に、目の前に真剣な表情をしたミホが横入りに入ってきた。


 そして有無を言わせずに。



 パァン! という子気味良い音が響き渡っていた。

 ミホが僕に平手打ちをしたというのが解ったのは、その数秒後。


 一瞬、


 何で自分が殴られたか理解出来なかった。


「え?」と、間抜けな声とジンジンとする頬。


「やりすぎだよ、へーじ」

 いつものお気楽な声とは違う、低い声。

 叩かれたと同時に後ろを向く形で、僕の腕を取っていた人物が解った。

 ミホと同じ様に、真剣な表情をしたサク。


 ゆっくりと向き直ると共に、僕は俯いてしまった。

 何をした、僕は。

 怒りに任せて、ボロクソ言って……これじゃあコイツ等とやってることはあまり変わらない。


「う……ああ〜〜!!」

 短い呻き声に少し顔を上げた。

 そこに、先程僕がボロクソ言っていた女が、


 泣いていた。


 いたたまれなくなった、僕は、再び俯いた。



「アッハッハ!!」

 何故か、ミホのいつもの笑い声が聞こえた。

 そして直ぐその後。


「うるさい」

 その声と同時にッパァン! と再び乾いた音。


「!?」

 驚いて顔を上げた先に、ミホが泣いていた女に平手打ちをしていた。

 な、何で!?

 泣いていた女も、泣くのをやめてポカンっという具合にミホを見ていた。


「は!?」

 その声に反射的に振り向くと、サクの顔も先程の真剣な表情を忘れたようにポカンっとしていた。

 よし、困惑してるの僕だけじゃない。


 ミホは思いっきり! 女の胸倉を掴んで女の間近で睨みながら叫んだ。

「泣くぐらいだったら最初からやるな! 家に帰って自分でやったこと考え直しな!」


 女は呆然としながら、コクコク、と頷いていた。


 ミホ……いえ、ミホさん、お……男前です。



 ポカン顔の女の背中を押して両端に居た女2人の所まで連れて行っていた。

 その後、その3人は弾かれたように、慌てて逃げ帰っていった。


 そしてミホは振り返っていつもの笑みを見せている。

 ……今はその笑みが怖い。


「へーじ」


「はいぃ!」

 駄目だ! 正気に戻ってると強気にでれない! というか怖い!



「さっきの無しでもいいよ?」

 ミホは優しくそう言った。


 え?

 多分、アホ面をしているであろう僕に、ミホはため息を零す。

「だーかーらー! 今さっきの暴言は無しでいいって! 言ってんの!」


 殴られた頬がジンジンとしている。

 ゲームのことを言ってるのだろう。

 何でだろう? ミホは何故そういってくれているのだろう?

 ミホにとっては予想通りで、嬉しい筈だ。


「……何で?」

 解ってる、僕の負けた。

 目の前でブチ切れたんだ。

 唯の馬鹿だとは思う。勢いに任せた結果だ。

 それを、無しでいいと言ってくれた。

「……」

 僕の、何で? に答えなかった。



 ミホは間を開けた後、口を開いた。

「あと、ゴメン」

 ミホは困ったように小さく笑った。

 何を謝る?

「殴っちゃった、アハ……ゴメン」

 再び小さな声で謝る。


「気にしなくていいよ」

 ミホが止めなければ、僕は、多分……女に手を上げた。この、僕が。


 寧ろ。

「止めてくれて、ありがとう」


 僕の言葉に、困った笑みは困惑に、その後、いつもの満面の笑みへ。


 「……何だよサク」

サクが僕をもんの凄い不審に見ていた。


「お前、本物か?」


 ちょっと! ここボケる所じゃないよ!?


「本物だよ!」


「お前、『ありがとう』とか言えるのな」


 僕はそんなに『ありがとう』を言わないのだろうか。

 

「アッハッハ! 私は言われたの二度目っすけどね?」

 そう言って、たからかに笑うミホ。

 アレ? 僕前に君に言ったっけ。

題名の編集を致しました。

題名を考えず投稿したこと、不覚お詫び致します。

いえ、毎日更新めざしてるのに、もうすぐ12時、まずっぅい!!とか思っちゃったんです、

結局間に合いませんでしたが・・・

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