その77.一難去って、また一難。今回で77回目なのに不幸て・・・
やっと戻れた。
僕は教室の目の前にいる。
何でこんな目に。そう思いつつも未だ手に縁の感触が残っていた。
手を思いっきり握られることはあったけど、あんな優しくも握れるんだなァ……
唯の力馬鹿じゃないなじゃん。
て! ぬぁ〜にを! こっぱずかしいことを!
あーもー! 駄目! 考えんのはやめとこう!。
自分で自分の考えを頭を振って消し去ろうとしつつドアを開けた。
ガラッという音と共に開いた先に、教室、では無く。
ミホが立っていた。
珍しくその表情に笑顔は無く、ムスッとした表情で僕を睨んでいた。
「……え゛」
間抜けな声と共に、思いだした。
そういえば嘘ネタを言って彼女を騙していた。
これは、怒ってる?
何故かは解らないが、右手にスピーカーホンを握っている。
どうする気ですか、ソレ。
「へーじ」
何処となくドスの利いた声に若干焦る。
「な、なに?」
ミホは淡々といった具合に続ける。
「まぁ、そんな簡単な嘘に騙された私も私だけど、さ……
嘘付くならもっと真実味を入れなきゃ」
そう言うと僕の方向からくるっと回転すると教室の方を向いた。
……? 何だ?
スピーカーを構え、ミホがボタンを押すと同時に耳障りな音がクラス中に響いた。
『あー! あー! テステス!』
スピーカーで巨大な声がクラス中に響く。
何だ、何だ? と、いった具合にクラスメート達は迷惑そうにミホに視線を向けていた。
何をする気だ?
『ここにおわすー! へーじクンはー! 早句間っちと危ない関係のー!』
「ちょぉぉっと!待ったァァ!」
そう叫びながら横からミホの掴んでいるスピーカーをひったくる。
「な・に・を! 言う気ですかぁ!?」
「アッハッハ! こっちの方が真実味あるでしょ〜ん?」
「やめて! 唯でさえそういう風に見る人がいるんだから!」
これはマジである。
僕にその気は無いし、サクにも無いとは思う。
てか思いたい。
だが、サクの友情表現はたまに危ない。
だからこういう視線を向けられることもあるのだ。
「アッハッハッハ! 若干の真実が入ってる方が騙されやすいって知ってた?」
「それは何の真実味!?」
そこでミホはニヤッと笑う。
「これが『嘘』だよん?」
っぐぅ! 絶対気にしてんでしょ! いつも僕をからかってんだから一回位簡便してよ!
「まー! 嘘、言われた分、嘘は言い返すけどねー!」
そう言いながら僕から再びクラスに向き直る。
「みなっさーん!」
おおお!? そんなに怒ってんの!? てかスピーカー無しでも言うんかい!
「待って待って! それだけは勘弁して! 何でも言う事聞くからさァァ!」
最早泣きそうになりながらも必死で懇願する。
そんなことを言われた日に僕は転校しますよ!。
「へ? 何でも?」
またまた珍しいミホの目を点にしたような表情。
あれ? 僕いま何て言った?
何でも言うこと聞くから? 聞くから!?
うわぁぁ! ミホ(性悪女)にそんなこと言っちゃまずいよ!
何をやらされるの僕は!?
と、ガクガクしながらミホを見る。
「ほんとに? 何でも?」
「やっぱ無しで」
僕が小さくそう言うと、「この、ヘタレ」と言った後、再び大声を発そうと。
「待って待って! ごめん! 何でもOKだから!」
そう言ったとたん。
パァッ! と顔を輝かせ、その後何故か顔を赤める。
「じゃ、じゃぁ!今度の日曜にでも……」
「は?」
何でいきなり声が小さく?
「あ! あれ!私が一緒に行きたいとか、そんなじゃ無くて! 今週に日曜に姉妹で買い物行くんだけど! 荷物持ちなんて〜、ど、どうかな〜って!」
「え? あの子連れて行きなよ」
あの子、とは縁のことだ。
荷物持ちならばあの子は最適だろう。
「……君は私がギリギリで頑張れるような発言をかましたのに、それをブッチギリでぶっ壊すのね」
え゛!? 何!? 何で怒ってんの!? 男より女の子連れてった方がよくない!?
「わ、解った!解ったよ!」
そこでニンマリと笑う。
「というか、ゲーム続いてるよん?」
その言葉と共に慌てて表情を元に戻す。
気付かなかった! 思いっきり表情がいつもの顔に戻っていた!
「アッハッハッハッハ! 今の所、悪口は言ってないからOKだけど、こりゃ放課後までもつかね?」
っぐぅ! 絶対にやり遂げたる!