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その76.一番怖いのって無意識何だよね……ああ、星になりたい。

「終わった、やっと……」

 チャイムが鳴る前に僕等は新聞紙を片付けることが出来た。

 そして2人して同時に深く息を吐いた。

 2つの白い息が宙に漂った後直ぐ消える。

 これだけでココの寒さを伺って欲しい。


「寒い……」

 縁も僕と同じ気持ちらしく、作業中も寒過ぎてお互い殆ど喋らず黙々と作業をこなしていたぐらいだ。


 流石の暴力女も寒さには弱いらしい。


 縁はスカートのポケットを弄った後、残念そうな表情と共に溜息を零す。


「ど、どうしたの?」

 ガチガチに震えながらも、笑顔は絶やさない。僕すんごい頑張ってます。


「ポケットに入れといたカイロ……もう冷めてる」

 そう零した後、残念そうに大きく溜息を吐く。


 カイロて……君、いや、いいけどさ。

 カイロをご存知ない方何ていないとは思うけど取り合えず説明しておこう。

 アレである、取り合えず手でワシャワシャしたら一定の間だけあったかくなる、冬での必需品である!


 ポケットから薄茶色い小さな紙の袋を取り出すと、ソレを睨んだ後、残念そうな顔をし、再び睨む。


 ……君は何がしたいんだ。

 余程残念なのか、カイロを名残惜しそうに見ている。


「へーじさん? もう冷たいですけれど、いりますか?」



「は!?」

 いらないよ! 何!? 人の使い捨てのカイロ欲しがる人何ていないよ!そしてすでに冷たいとか尚更じゃん!!

 だが、そんなことを考えても表情に出さず笑顔を保つ僕はクールでナイスガイ、そして今は 好青年。

 あ、まずい……流石に自分でここまで言うと恥かしいな。


 ん? というか、そんなの幾ら暴力女でも解るよね?

 じゃあ何で? 嫌がらせ?

 ……今の状況で嫌がらせだとすれば相当、性格捻じ曲がってるでしょうよ。

 まぁ、聞いた方が早いか。

「何で僕に……?」


 カイロを握り締めたままお嬢様口調のまま縁は言った。

「作業中、ずっと寒そうでしたから……」


 はい?

 ……するとアレですか? カイロを探したのも自分が暖まる為じゃなくて僕にあげるために?


 ……。

 どんだけ自分を犠牲にするんだこの子は。


 ま、まぁ仕方無い、僕の今の設定じゃ心の広い好青年だし? 貰ってやっても構わないけど?


「じゃ、じゃぁ貰っとくよ」


「え? いるの?」


 その、え? は何だ、その、え? は……。

 言っといて、ソレは無いでしょ。

 訝しそうにしながらも、僕の手にカイロを渡す。


 っう……確かに冷たい。

 取り合えずダメ押しだが軽くカイロを振ってみる。

 2度3度振った後、あまり期待せずに触れた。


 ……をや?

 微かだが温かさを感じた。

 思いっきりワシャワシャとしてみる。

 すると何と言うことでしょう! 冷たいカイロは暖かいカイロに戻った! テッテレー!


 は! どうでもいいことなのに嬉し過ぎて頭の中で変な効果音が!!。


「あったかい……」

 そう零しながら縁の使い掛けだということも忘れ、ッギュとそのカイロを握り締める。


「え? 嘘」

 そう零した声に気づくと、握るのをやめて縁を見る。

 半分驚き、半分訝しそうにしている縁の手が僕の目に映った。

 僕より先に来ていたのだからかは知らないが、縁の手が僕以上に赤くなっていた。


 ……。

「返すよ」


 そう僕が言った言葉に慌てて目の前で手を振って否定を示す。

「い、いりませんわよ」

 他人にあげた物をやっぱり返して下さい何てのは確かに言い難いわな。

 それでも僕はカイロを手放す気だ。

「いいって、もう十分あったまったし」


「で、でも」


 君、結構頑固ね。いいって言ってるのに。


「いりませんわ、折角へーじさんがあっためましたのに、いつ冷えるか解りませんし存分に温かさを味わいなさいませ」

 ……、お嬢様っていうかメイドさんみたいな口調になってない!? ミホもだったけど君のイメージも計り知れないね。


「僕はいいってば!」

 おっと、好青年とはあるまじき言い方のような気がするが、大丈夫か。


「へーじさんは寒い中、作業をしたのですから、その権利がございますわ!」

 お嬢様口調のまま縁の口調も強くなった。


「それは君もでしょーが!」


 あれ? 何で喧嘩みたいになってんの!?


 僕と縁は笑顔のまま、敵対心を向けつつ睨み合う。

 お互い一歩も譲らない、

 カイロというどーでもいいもんを譲り合っているだけなのに、何故睨み合いに・・・僕と彼 女は余程相性が悪いのかもしれない。


「……解りましたわ! こうしましょう!!」

何を思いついたか知らんけど、そのまま僕に近づくと僕の本当に目の前で止まった。

「……何?」

てか、近いんですけど、恥かしいんですがこのヤロー、ヤローじゃないけど。


「両手でカイロを握りなさいませ」


「???」

 意味不明、と、つい顔に書いてしまった僕に一瞬、イラッとした表情を見せた。

 解りましたよ!何するかしんないけどやりゃーいーんでしょーが!やりゃー!


 溜息混じりに取り合えず言われた通りにする。


 両手で握ると非常に温かい。

 ああ、和む。

 と、

 僕がほんわか、と思っていると、

 本当に突然、縁は両手でカイロを握っている僕の両手をそのまま覆う様に自分の両手で覆った。

「!!!!」

 わ! わ! わ!。

 直に縁の冷えた手が両手に染みる。


「おお〜本当にあったかい〜」

 先程の僕のように呑気な声を出しながら縁は気持ちよさそうに目を細める。


「え! ちょ! あの!」

  自分でも一切言っていることは理解出来ないが。

今の状況は気持ち的にアレだ、そのマズイ!!


「なんでしょう〜? わたくしのナイスあいでぃ〜〜あに驚きになりまして? これなら2人であったまることが出来ますわ!」

 ノットナイス! (not nice)

 ノットナァァイス!! 英語が合っているかなど知らないけども! 君はなんとも思わないんですか!?

 端から見りゃ君、男の手握ってんですよ!? 君には羞恥が無いのかァァァ!?

 うがぁぁぁ!! 僕は一般人であって、健全な男の子ですよ!? 何この地獄!? いや、天国!?

 もうイヤ! この子イヤ!


 そこでタイミング良くチャイムが鳴った。

 いえ、鳴ってくれた!!


「おおー!? チャイム鳴ったしクラスに帰らなきゃー! というわけで離して! もとい離して下さいませんか!?」

 何で僕までお嬢様口調なのかは知らないけども!!

 手を御放しになってェェ!!


「?」

 何で『何でこの人テンパッてんの?』みたいな顔してんの!? 本当に解んないの!? ここまできたら業とでしょ! ああ! でも業とじゃない不思議そうな表情!死んでいい!?


その不思議そうな表情のまま、手を離してくれた。

そしてその瞬間!僕は逃げるように猛ダッシュを決めた!。



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