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その6.貧弱毒舌男と肌寒電波医者


「いやーすまないね、知らないうちに寝ていたみたいだ」

 ニコニコと笑顔を僕に向ける医者が目の前で座っていた。

「所で、顔が凄く腫れてる気がするのは気のせいかな?」


「え? 元からじゃないの?」


「そうかい?」

 たっぷり皮肉を籠めたのに、あっさりと肯定しやがった。

 そうか、こいつ医者なのに馬鹿なのか。

 つか、何であんな所で寝てたんだ?こいつ。

「何で僕があんな所で寝てたか気になるかい?」

 口に出して無いのに何で解るんだ気持ち悪い電波医者め。

「僕はここで寝泊りしているからね、君がベッドを使っていては寝れないだろ?」

 病人専用のベッドって使っていいのか?

 嫌々おかしいだろ。

「他のベッド使えばいいじゃん」


「君の寝てるベッドがいいんだ…」

 おい、その発言は別の意味に聞こえて超きもいんですけど。

「嫌々そうだとしても何で僕の近くで寝てんのさ」

「君の近くで寝たかったんだ…」

 おい、その発言の意味が一つにしか取れないんですけど。

「ま、冗談はさておき」

 何処までが冗談だ。

「彼女に君を見ててくれと頼まれたんだよ」


「……」

 『彼女』、というのが一瞬解らなかったが何となく予想は付いた。 あの子は他人だ。

 何故会って間もない僕にそんな事をするんだ?

「偽善者が」

 意味の解らない行動をする彼女に苛立ちを覚えた。

「それで? その彼女は? 廊下?」


「え? 帰ったよ?」

即答された。


電波医者は簡単に言った。




「は?」

 僕は一瞬、医者の言葉が理解出来なかった。

 何故ならば、彼女は僕が彼女を待たずに帰ろうとしたからシャイニングウイザード

(飛び膝蹴り)をボクにかましたのだから。


「はぁぁぁぁぁ!? 何それ!? どゆこと!?」

 電波医者の襟首を掴むとブンブンと振り回した。

「なななななな何を言っているか解らないけど取り敢えず落ち着きたまえ!!」


 苦しそうにする医者を見て我に帰った。

慌て手を放すと、医者は咳き込んでい。

どことなく悪い気がしながらもどことなく良い気味だとも思ってしまう僕は性格は悪い方。


 落ち着け、クールにいこう僕。

 今更遅いとか無いから、まだ大丈夫だから、うん。

「帰る」

 そう医者に言うと、僕の足はドアへ向かった。

「あ! そうそう!」

 まだ用事があるのか。

 うんざりしながらも振り返る。




 医者はムカつく笑みを向けたまま言った。

「また会うって言葉は当たっていたろう?」


 ここまでムカつく人間も初めてだ…


僕はサッサと先に進んだ。



『またね』

 医者の声が後ろからした。


 また? もう会いたく無いから。

 医者を無視して、ドアを開けると、外に出た。

 ドアが閉まる瞬間に、医者の小さな笑い声が耳に入った。

 最後までイライラさせてくれる。

 もうあの電波の事は考えないでおこう。


 とりあえずあの女の子の事を偽善者と言った言葉を全力で前言撤回しておこう。

 偽善者と零した僕だが、正直に腑に落ちない。

 これが人間だ。



なぜ僕がイラつく必要がある?

 当たり前と思っていた自分の世界に亀裂が入った気がした。


あの女の事を偽善者と罵ったクセに、散々殴られたのに。



僕は。



待ってて欲しかったのか……?



 自分のよくわからない心に舌打ちをした。

 このイライラも、この良く解らない気持ちも、全部あの女のせいだ。


「……クソ女」

 小さな声で悪態が漏れた。

 そんなことの、意味が無いのは解っている。

 大きなため息が出た。

何をやっているんだ僕は……。


 帰ろう、時間もわからないんだから、姉貴に何を言われるかわからない。


 廊下の中の歩みを進めた。








 廊下の中の歩みを進めた。



・・・・ド・・・


「……?」

 音がした。

 今向かっている廊下の先からだろうか?

 病気が悪化しただろうか、幻聴かもしれない。

 再び大きなため息が口から漏れた。

 気を取り直して歩を進めた。




いかん…貯めてた分が、もう無くなりそうだ…

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