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その68.昔ヒーローゴッコでリーダーになったりするけど、いばれるのは遊びの間だけ

「校内への玩具の持ち込み禁止ィィ!!」

 叫び声と共に軍団に向かって飛び蹴りがかまされる。

 同時に覆面達の中に無理矢理捻じ込んでいるので、必然的に囲まれている形になる。

 何人かが吹っ飛ぶ間にも、

 前、後ろ、横に居る覆面は慌てて銃口を突然飛び込んできたトラブル娘に向けられる。

 飛び蹴りと共に立ち上がるまでの間に銃口を向けて放つまで十分な時間はある。

 彼女を彼女と理解していないらしい覆面達は反射的に引き金を引いた。


 BB弾とは云え。やはり女性に向ける物でも無い上に、大男のサクが痛がる位なのだから結構のエアガンだと思える。

 そのBB弾はぐるっと全体から縁に放たれる。


 流石の縁もBB弾は避けられない!!

 そう頭に過った。

 しかし、それが僕の杞憂に過ぎないのは直ぐに解った。


 飛んだ……。

 スカートなぞ知るかァ! といった具合にその場で飛んだのだ。

 位置的に見えないのが残ね……嫌、見えないだろうが、反射的に見上げた何人かの覆面が、

 覆面の上からでも解るような残念そうな顔をしたのを見て、

 半ズボンでも穿いているのだろう。

 多分、イヤイヤ僕は別に残念とか思ってないですから。

 目標を失ったBB弾の弾は目の前に居る仲間の覆面に命中、

 着地すると同時に覆面共を睨み付ける。

 睨まれた覆面達がビクッと怯んだのが解った。

 解る……解るよ。

 あの女とも思えない目は凄いよね、獣と言っても過言じゃない。

 睨み付けながら目の前の覆面の一人のエアガンを毟り取ると、

 そのエアガンと覆面達を交互に睨む。

「女に……玩具とは云え武器を向けるとは……」

 ボソボソと呟く言葉は小さい声の筈なのに、ハッキリと耳に聞こえる。


「それでも男か貴様らァァ!!!!」

 その雄叫びと共に片手で握っていたエアガンを握りつぶしやがった。

 バキャァ!というプラスチックで結構硬い筈のエアガンは唯のゴミへと変わった。

 握りしめた手を離すと、

 ゴミへと変わったエアガンは廊下に落ちるとガチャンッという音を立てていた。

 その音以外にその廊下での音は無い。

 全員が唖然としたまま固まっていた。

 野次馬も、覆面も、素知らぬ顔で通り過ぎる予定だった人達も、そして僕らも。

 メロンを片手で潰すのはしってたけど、

 まさか硬いプラスチックを片手で握りつぶすとは……。

 呆然としている僕たちを無視して縁は語る。

「男なら拳で来い……アタシが相手になろう」

 そう言って、拳を前に突きだす。

 縁がファイティングポーズを取ったのだ。

 ……また彼女の空間に支配されている気がする。


 固まっていた覆面の集団の中の一人がボソッと言った。



「………………良い」



 ?、………………は?

 その一声と共に次々と覆面共は喋り出す。


「流石俺の縁ちゃん……」

「可愛いのに気が強いってギャップがっ!!」

「ああ……あなたになら幾ら殴られても快感に変わる!!」

「良いー! 良いよー! 次行ってみよー!」


 ……こいつら病気か。

 呆然としていた野次馬達も冷たい視線を覆面達に向けている。

 てか、今でかいカメラ持ってる奴が居たような……、気のせいか。


「うぉぉぉ! 縁様ァァァ!!」

 何か我慢出来無くなったのか(何が我慢でき無くなったかは知らんが)、

 一人の覆面が縁に飛び出して行った。


 表情一つ変えず、縁は拳を後ろに引く。


 ドシャァァ!! という、すざまじい音と共に覆面の男はコンクリートの床に減り込んだ。


「………………次」

 低い声は、覆面達に良く聞こえたらしく。

 バカげたことを言っていた覆面共は黙った。


 ……減り込んだ覆面の表情は、満足そうだ。


「……待ちたまえ縁君!!」


 そう大声で言い放ったのは赤い覆面の男。


 白い覆面達の中から正にリーダーらしく正々堂々という感じに縁の前に現れた。


「部下の不手際を謝罪しよう」

 そう言って赤覆面はふかぶかと縁に頭を下げた。

 何も言わない縁をどう感じたかは知らないが赤覆面は直ぐに頭を挙げる。


「ここは俺一人で勘弁して欲しい」

 ……こいつがこのバカのリーダー。

 だと思う。

 馬鹿な割に正々堂々としている気がする。


「成程……あんた一人の首で部下全員を傷つけるのは止して欲しい、そういうこと?」

 赤覆面は無言で頷く。

 多分、この状況は縁からすれば嬉しい状況だと勝手に予想。

 何故ならば赤覆面は愛する部下の為に自ら一人が犠牲になろうとしているのだ。

 つまり、無駄に熱いノリの状況。


「……男じゃないの」

 ほら、良い笑顔ですよ。

 無駄に嬉しそう。


「解った!歯を……食い縛れぇぇ!!」

 そう言って思いっきり拳を振り被る。

 そのまま赤覆面に一気に拳が飛ぶ。

 当たった瞬間、間抜けな声が……。


「ありがとうございます!!」


 その声と共に赤覆面は思いっきり吹っ飛んでいった。


 ん? 今お礼言ってたような? アレ?


「隊長!!」

 自らを犠牲にしてくれた隊長に、

 助けられた隊員達は隊長の愛に感動したように集まる。


「隊長ゥゥ!! ずるいっすよォ!!」

 ……あれ?


「何、自分だけ殴られてんすかァ!! あ! コイツ満面の笑顔で気絶してやがる!!」


「俺も殴られたかったのにィィ!!」


「アレじゃ俺等カッコ悪いじゃん!! かっこつけやがって!! ちょっ! 次の時間コイツ無視しよーゼ!」


 中学生か……。

 隊長なのに、同い年のバカ友達同士の話し合いのようだ。

 なんやかんやで隊員たちは気絶した隊長をひきづってどっかに行ってしまった。




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