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その64.強気な記者女と弱気な癒し係女 『嘘つきの羊飼い』

「きょ〜っおっの! 晩飯な〜んじゃ〜ろか〜♪」

 私の手を引きながら上機嫌でスキップしている姉はよく解らない歌を歌っていた。

 でも私は知っている。

 お姉ちゃんが上機嫌な時は何かを隠そうとしているとき。


「お姉ちゃん、いいの?」


「いいって何が〜?」

 上機嫌な姉はシラを切るつもりらしい。


「へーじさん……」


 私の言葉にお姉ちゃんは突然立ち止まった。


「……違うってば」

 いつものお気楽と違った声。


「でも……」


「本当に違うよ、私はへーじを何とも思ってない、友達よ……」

 振りむかないが、今、姉の表情に笑みが無いことだけは解る。

 私が縁から名前を聞く前から、実はへーじさんの事は知っていた。

 それは姉が時々へーじさんの事を話していたからだ。

 へーじさんと縁のお兄さんのコントのような日常を面白可笑しく聞かせてくれていた。

 初めて合ったとき、縁を介抱してくれたのだから良い人だと思える


 縁がへーじさんに特別な感情を持っているのは何となく解る。

 その感情は恋愛とは違うような気もする。


 姉もそれが解っていると思う。

 だけど姉は寧ろ2人をくっつけようとしている感があった。

 何か考えがあるのかは解らなかった。


 でもこれだけは解る。

 お姉ちゃんもがへーじさんをからかっているのが楽しそうに見えて、

 きっと姉も特別な感情があるのかなって……。

 だけど、ここまで言い切るなら私の思い違いな気もする。


「アッハッハ! へーじはからかうと可愛いからね〜!」

 そう言いながら私の方を振り返って思いっきり笑う姉は、楽しそうにそう言った。


 そして、再び背を向けて歩き出す。

「ねぇ、志保? 知ってる?」

 背を向けている姉は何気ない様子に私に声を掛けてきた。


 私は小さく「何?」と答える。

「『嘘つきの羊飼い』って知ってる?」


 突然何の話だろう? 小さい頃に読んだことがある気がする童話。

 確か……、嘘をつきすぎて誰にも信じて貰えなくなったという奴では無かっただろうか?


「知らない?」

 姉の言葉につい軽く首をかしげてしまう。

「う〜ん…? 昔読んだけど、ちょっと覚えてないかな?」

 鮮明には覚えていない。

 そう言った後、お姉ちゃんは一呼吸開けて、物語を喋り出す。

 それはまるで暗記しているかのようにスラスラと出てきていた。

「羊飼いの少年は、オオカミが出たというウソをついては、

村人が慌てて助けにくるのを見て喜んでいました。

しかし、いざ本当にオオカミが出たとき、村人は信じてくれず、

大切な羊がオオカミに食べられてしまいました。」


「…………?」

 お姉ちゃんは比喩を使うのが好きだ、記者としてのクセなのかもしれないが、

 たまに意味が解らないこともあった。


「アッハッハ! 難しかった?」

 豪快に笑った後、お姉ちゃんは小さく零す。

 姉らしからぬ小さな声で。



「嘘しか吐けない私に、権利何て無い……」


 お姉ちゃんの声は小さすぎて良く聞こえなかった。

「何て?」と、言おうとした瞬間、お姉ちゃんは走り出した。


「お姉ちゃん!? 待ってよー!」

 慌てて私も走り出す。運動神経の良い姉に追いつくのは結構しんどく、

 お姉ちゃんと正反対の私は運動音痴でm正直、キツィィ……。


「オホホホホホホホホホホホ!!! 捕まえてごらんなさ〜〜〜〜〜い!!」

 夕闇の中、テンション上げ上げの姉は、心配は必要無かったかもしれない。


 ……多分。


母と食器を洗っている時の話。

私「さよなら〜♪さよなら〜♪ふぁふぁふぁふぁん♪(知らない)」


母「何?卒表の時歌うの?」


私「嫌、歌わんけど(知らんし)」


母「そうか〜卒業近いもんね〜」


私「嫌、歌わんて」


母「やっぱ何処でもそういうの歌うのね〜」


私「・・・・」

私(そうか、私がアホなのは遺伝か)

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