その61.女の子の下着は男の夢・・・変態とかじゃないから普通だから
「さっきのお姉さんからだよ」
そう言って、縁にケーキの箱を手渡す。
とたん、パァッ! と嬉しそうに表情が輝いた。
……そんなに甘いの好きなのか。
「皆の分もあるって」
そう付け足すと、後の3人も嬉しそうに顔を輝かせた。
「アッハッハ! いーね! いーね!!」
「ケーキって何か久し振りだねー」
「ジャンケンな! 勝った順から選ぼうぜ!」
…………。
お前もかよ。
女の子がハシャいでいると可愛いけど男がはしゃいだらキモイな。
「何処で食べるー?」等と言ってキャピキャピしてる姿は何となく微笑ましくはある。
「……太るんじゃない?」
僕の何となしの言葉に、何故か空気が凍った。
え゛? 本当なんで?
先程までキャピキャピと騒いでいたお嬢様がた全員が白い目でこちらを見ている。(バカは「ん?何だ?」とか言って理解していない)
「……さいってー」
目が据わってますが縁さん。
「アッハッハ……女の子にそりゃタブーだわ」
目が笑って無いですよ!?
「へーじさん……ありえません……」
志保ちゃんまでェェ!?
「ちょ! ちょ! 僕は正論を言っただけで!!」
「うるっさい!!」
その一言と共に飛び蹴りが炸裂。
一瞬見えた白のパラダイスは一生忘れない。
「べふぅ!?」
顔面にクリーンヒットの後、綺麗な孤を描いた、一瞬空中散歩。
「へぇじいぃぃぃぃぃぃ!!」というバカデカイ声が聞こえた気がしたが、意識飛んでたので何だか夢心地。
そのままコンクリートな床に叩きつけられる。
ぶほぁ!? マジで痛い!!
「おい! へーじ!! しっかりしろ!!」
そう言って起き上がらせてくれたのはサクだった。
……何だかんだで本当良い奴だな君は。
チキショォ、蹴ること無いじゃんか……。
そこで嫌らしい仕返しを思いつく。
クソ! さっき見えたパラダイスを縁の兄であるサクにばらしちゃる!!
どうだ!! 恥かしいだろう!! 僕としたことがこんな惨い仕打ちを思いつくなんて。
「え? 何だって?」
ボソボソと言ったが聞き取れなかったらしい。
デカイ声で言ったら縁に聞かれるだろ!! もう一度小さな声で同じ言葉を繰り返す。
その瞬間、サクに電流走る。
「な……ナニィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!」
嫌、そんな驚かんでも。
っていうかデカイ声出したら縁達がこっちに来るでしょーが!!
「へーじが! けりの瞬間、縁のパンツが見えただってェェェ!! へーじが!! しかも性格に似合わない白い純潔の白だったってェェェ!? へーじが!! それを見たってェェェ!!」
そのサクの叫び声に、僕の体中の神経が逆立った。
「ちょ! バカァァ!! わざとか!? わざとだろ! 僕に死んで欲しいのかァァ!?」
しかもわざわざ僕の名前を強調しやがった!
叫び声をあげる僕の背中に殺気を感じた。
……振り向けない。振り向けないィィ!!
「あ! 縁! 違うんだ!! へーじは故意的に見たわけじゃないんだ!! 唯純白の白が良かったとか言ってただけで!!」
それ弁解になってねぇぇぇぇ!!!
「ほぷ!?」
間抜けな声と共に、サクが飛んだ。
……縁が瞬間的に殴ったらしいが、早すぎて見えなかった。
目の前におわすのは、若干黒いオーラと、何かこう、
マンガでよくありそうなゴゴゴゴゴ!!とかいう音を立てている縁が居る。
顔は怒りと羞恥で真っ赤に染まり、猫のような釣り上がった目は怒りで見開き若干涙を浮かべていらっしゃる。
……そらそうだ、現在地、商店街のど真ん中でサクは大声で自分の妹の今履いていらっしゃる……その、何だ……
アレを暴露したのだ。
恥かしくて泣きそうにもなるわな。
やり返した感はあるが、元々僕が悪いわけだし……。
何よりもサクがあのような暴挙に出るとは。
「ごめん……」
とりあえずそう零す。
「……取れ」
震えた小さな声で良く聞こえなかった。
「え?」
「責任取れ!! ボケェェェェェ!!!」
その言葉と共に繰り広げられたのは顔面に思いっきり!! 振りかぶったストレート。
あ、蹴りは恥かしいんだ。
等と呑気なことを考えていたが拳が目の前に来た瞬間。
子どもの頃から現在までの映像が高速で頭の中で流れた。
え? これって死ぬ直前に見る走馬灯って奴?
あ、僕死ぬんだ!!
ドギャァ! というリアルな音と共に意識が飛んで行く。
空中を飛んでいるのが解った。
それは精神的にか、身体的にか、両方かは解らないが。
消え行く意識の中、最後に頭に言葉が浮かんだ。
……やっぱ守る必要ないでしょ。