その60.募金のお姉さんは縁と知り合いのようだ。
募金箱をお姉さんの前に置いた。
縁程多くもないし、志保ちゃん程少ないわけでもない。
まぁ、妥当な量だとは思う。
「ありがとう」
お姉さんは僕に笑みを向けながら募金箱を受け取った。
「突然の助っ人助かったわ〜」
「はぁ、」
「で? あなたは縁の彼氏かしら?」
「っぶ!!」
いきなりの発言に吹いてしまった。
何でそうなんの!?
「何でですか!?」
「だって手繋いでたじゃない」
「やめて下さい!!」
考えたくない! 考えたくない!!
「ま、どっちにしても、何かあったらあの子を助けてあげてね? 良い子だから……」
その言葉に意味深な何かを感じた気がした。
このお姉さんと縁は、知り合いらしい。
まぁ、そうじゃなきゃケーキとかもないわな。
「はい!」
そう言って渡されたのは白い箱。
小さな白い箱を僕に受け取る様に促すと笑みを向ける。
「これ……?」
とりあえず受け取ると大した重さは無い。
「5人分あるから、皆で食べてね?」
その言葉で中身が何なのか解った。
縁の言っていたケーキだ。
「でも、僕らの分も……?」
「いーの! いーの! 手伝ってくれたからね」
嬉しそうに笑うこの人はきっと良い人なのだろう。
「ま……一人を除いて」
付け足すように言った言葉に何となく怒りが含まれている気がした。
サク、君のことだと思うよ……。
「……縁と一緒に居てあげてね?」
そう小さく零した言葉の意図が読めなかった。
だが、昔からの知り合いだとしたら。彼女の、あの性格を知っているのなら。
「さぁ……僕には関係無いですし」
そう冷たく言い放つ。
そう、関係無い。ミホが言おうが、このお姉さんが言おうが。
関わるか関わらないかは、僕が決めることだ。
怒られるか、軽蔑されるかと思ったが……。
お姉さんは笑っただけだった。
……怒らないんですか?
「そっか、君みたいな人間の方がいいのかもね?」
「え?意味が……」
「それじゃあ、『またね?』」
そう言って、お姉さんは去って行った。
周りのボランティアの人達もいつのまにか減っていた。
募金箱を回収してる業者の人達の方が多くなっているくらいだ。
どうやら箱を置いたらそのまま解散らしい。
……取り合えずケーキを縁に渡しに行くことにした。