その58.募金は成果を出したのか、の発表というまんまのタイトル
「全員集まりましたー?」
大声を張り上げているのはボランティアのお姉さん。
周りには僕等4人以外にも老若男女と、様々な人たちが居た。
「結構ボランティアって大変だねー」
と、小さな声で縁に微笑んでいる志保ちゃん。
「あー゛! マジで疲れたな! 1時間半ぐらい立ってたんじゃね?」
と、頭に子犬を乗せているサク、っていうか君何もしてないでしょ。
そんな2人とは違って疲れを見せないミホは、ススス…と意味深に僕の後ろの近付いてきた。
……なに?
僕の耳元にそっと近づく。
ちょ、息掛かって恥ずいんですけど……。
「『彼女にそんな口を叩けるわけ無いだろうが!!!』……ブフ!」
そんな誰かさんの物真似の後、ミホは噴き出した。
……おい、何処で聞いてた。
可笑しそうに笑いながらミホは再び耳元でコソコソと呟く。
「こっぱずかしいことよく言えるねー! これネタにしていい?」
「ダメ」
チェーっ! と洩らしながら脹れっ面のまま、去っていく。
その脹れっ面を張り倒したいですけど! 歩くプライバシー侵害め!!
「へーじ、どしたの? 水歩さん何て?」
僕の隣の縁が覗き込むように首を傾げていた。
…………。頼む、僕をソッとしておいてくれ……。
「気にしなくていいよ……」
そう言いながら縁から目を逸らす。
今思い返すとメチャクチャ恥ずかしいこと言ってるよ僕!!
志保ちゃんとサクは僕たちが手を繋いでいたのを運良く見ていなかったみたいだけど、あの様子じゃ性悪女はばっちり見てたな。
ハァァ〜、どうしよう……明日それが新聞に乗ったらまたアホなのに絡まれる。
等とマイナス思考ぶっちぎりの僕に今度はサクが覗き込んでくる。
「どしたよ、へーじ? うちのバカ妹が迷惑掛けたか?」
その言葉に僕よりも縁が先に反応した。
「ああん!? 誰がバカだってバカ兄貴!! あたしが迷惑掛けるわけないでしょ!」
嫌、それは無いよ。
バリバリに迷惑掛けてるよ。言わないけど。
「ああああん!? ンだとバカ妹! 俺見たいにへーじに好かれてから言えやコラ!」
別に好いてないし、頭の上の子犬が可愛くて迫力に欠けますよサク、そして気持ち悪い。
睨み合うバカ兄弟を温かく見つめる性格正反対の姉妹。
「モテモテですねー」
と癒しの少女が言う。寧ろこんなバカ共より君にもてたいよ。
そんな志保ちゃんの隣で高速でバカ兄弟をパシャパシャと撮りまくっているミホ。
何に使う気だろうか……。
「はいはい! 騒がない! 募金箱持ってきてー」
そんな僕ら等無視してボランティアのおねーさんは、僕たちに指示を出していた。
バカ兄弟も一時睨みあいを中断して、
僕たちは募金箱をおねーさんの所に持っていくことにした。
まずは縁。
ドン! という音で結構な量が入っているのが解った。
「相変わらず頑張るねー!」
というおねーさんの言葉に恥ずかしそうに笑う縁。
次はバカ。
……置いても音がしない。
「…………ッチ」
おねーさん舌打ちしましたよ!? サク何で笑ってんの!? 君明らかに怒られてるよ!
その次に志保ちゃん。
箱を置くと同時に微かだが、確かにお金の音がした。
「すいません……あんまり集まりませんでした」
控えめな声に、サクの時と違った優しい笑みをお姉さんは向けている。
「よく頑張ったわ、偉いわね」
その言葉と共に志保ちゃんの顔がパーッ! と輝いた。
イカン……ほんっっと駄目だ……この子見てるとにやける……。
僕と同じ心境なのか、おねーさんの顔もにやけている。
そして性悪女。
置いた瞬間、ドン!! という大きな音が響いた。
その場にいた全員がその音に固まり、ミホだけが満面の笑みを見せていた。
中を覗き込んだボランティアのおねーさんの顔が驚愕へと変わる。
「……あなた、次も来るといいわ」
その言葉にアッハッハ! と笑顔で答えるミホ。
ミホと通り過ぎた時に言ってみる。
「脅迫で取ったお金って……どうよ」
僕の声に合わすようにミホも小声で話す。
「何言ってんの、善意で入れたお金よ? それに取っても困らなそうな奴からしか取ってないし?」
……あのチャラ男泣いてましたけども。
そう言った後、直ぐに通り過ぎた瞬間、躓いたのか「わ!」という小さな声が聞こえた。
反射的に振り向くと同時に、大量の小銭の落ちる音が聞こえた。
振り向いた先に、扱けているミホと大量に転がった小銭と札束。
「………………」
「………………あ」
その、あ、って何。あ、って!
友人「都市伝説でさ、しゃっくり100回したら死ぬってあるだろ?」
私「あるけどそれが?」
友人「挑戦したけど死ななかったぜ?」
私「挑戦したんだ!?」
友人「おうよ、流石に99回の時はビビッたわ」
私(・・・そんなしょうも無い都市伝説に命を掛けようとするお前にビビッたわ)