その52.弱気なあの子の場合
だが、直ぐにその影はッパ! と消える。とりあえず前向きに考えることにしたらしい。
「み! 水歩さんはともかく! 志保なら!! 志保ならしっかりとしてる筈!!」
と嬉しそうに大声を発し、希望を乗せながら志保ちゃんの方を向いた。
確かに、あんな良い子なら率先して募金活動をしてもおかしくない。
縁に釣られて僕も一緒に志保ちゃんの方を見る。
志保ちゃんは小さな体に、あの白い箱は大きいらしく、少し足が覚束ない。
「あの……募金を……お願い……しまー……す」
……声が小さくて全く聞き取れない。
志保ちゃんは目の前に通る人の後ろを追いかけて必死に、
「あの……募金……」と言っているが聞こえて居ないらしく素通りされる。
寂しそうな表情を一瞬見せるも、首をブンブンと振ってしっかりと前を見て意を決したように頷いていた。
そして目の前に通った人の後ろにくっ付いて「募金! お願いします……」と最後は声が小さくなるも最初は大きい声を出して頑張っていた。
しかし、やはり聞こえていないのか、そのまま素通りされる。
再び表情が悲しそうな顔へ変わった。
俯いてよく見えないが……泣きそうになっているのか心配になってしまう。
そんなソワソワして見ていた僕たちだったが、
志保ちゃんの前を青年が何気なく通ると、
ついでといわんばかりに志保ちゃんを見ずに募金箱にお金を入れていった。
募金箱に落ちた音はあまりにも小さい音で1円程度かもしれないが、それでも志保ちゃんは 顔を上げ、嬉しそうに表情を輝かせていた。
「ありがとうございます!」
先程よりも大きな声で言うと、驚いたように青年は立ち止まって志保ちゃんを見た。
性格の悪い姉とは全然違う可愛らしい満面の笑みは青年にクリーンヒットだったのか、顔が赤く染まっていく。
解るよその気持ち!
恥かしそうにしながら青年は逃げるように走り去っていった。
走り去っていった後、志保ちゃんは募金箱を軽く振ると、まだ少ないのか金属音より箱に当たるような音を立てたそれでも、志保ちゃんはとても嬉しそうに、微笑んだ。
何だろう、にやける。
そして、こう……胸がキュンッと……小動物を見るような。
そんな思いで横を見ると、縁も同じ心境らしく、顔が完全ににやけていた。
「うん、しっかりっていうか……頑張ってるね」
再び縁に了承を求めると、にやけたまま、うんうんと頷いていた。
無謀にもランキングというものに挑戦してみました。
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