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その50.何でこんな事に・・・そんなイラついてる僕の場合。

 僕は一体何をしているんだろう……。

 ザワついた商店街の中、空は放課後ということで赤み色を帯びている。

 普通なら帰る時間帯のハズなのに。


 何で僕は白い箱を首からさげているのだろう。

 首に掛けている白い箱は僕が動くたびにブランッと小刻みに動く。

 手で抑えていなくては鬱陶しくて敵わない。

 その箱にデカデカと黒字で書かれている文字は。


 募金。


 周りにも僕と同じように首から白い箱をさげている人物達がチラホラといた。

「募金を宜しくお願いしまーす!」といった大声が所々で響き、その中で一際大きいのは多分縁の声だろう。


 もう一度言おう、僕は一体何をしてるんだ?


 呆然としている僕に一人のサラリーマンが近寄ってきた。

 顔は青白く、あからさまに元気が無いように見える。

 僕の目の前で止まると、ゴソゴソとポケットをまさぐりだした。

 ジャラジャラという音に募金をするつもりだということは解ったが、募金をする人間は大抵笑顔で機嫌が良い。

 もしくはまだお金のありがたみが解ってない子供ぐらいが募金をしていた。

 その中でこのサラリーマンの不安そうな暗い顔は不自然に思えた。

 だが、こういう人間の考えも何となくだが予想出来る。

「何で募金をする気ですか?」

 あまりにも暇だったのか、つい声に出ていた。

 話しかけてきたことに驚いたのか、男のサラリーマンは口をパクパクとしていた。

 そんな男を無視して僕は続けた。

「何か後ろめたいことをやらかしたから……?」

 言ってから顔を伺うと、暗い顔が驚きの顔に、当たりか。

「あなたはその後ろめたいことに後悔している。

そして、その悪意的な行動から少しでも目を逸らしたいが為に小さな善を行おうとしている。

だが、それは善意ある行動とは言わない。

唯の自己満足に過ぎず、表情にまで見せるその後ろめたいことをこんな小さな善でチャラになろうとは思いませんよね?」

 息一つせず、最後まで言い切ると、男のサラリーマンはドンピシャリだったのか、泣き顔で走り去っていった。


 ……うん。八つ当たり。


 満足気にしている僕に後ろからもの凄い大声が発せられた。


「何しとんじゃァァァァァァァ!!!」

 その大声に合わせるかのように頭に衝撃が走った。


「ぶほぁ!?」

 何だかこの間抜けな声を上げるのも久々な気がする。

 そのまま硬いコンクリートに痛みで転げまわっていると、華麗に着地した縁と目が合った。

 お互いにッキ!と睨みつける。

「何すんだよ!」


「あんたこそ何してんのよ!!」

 縁の声の方が大きかったので怯んでしまった。

つまり先に主導権を握られた!

「何で善意ある方にバリバリの悪意をぶつけてんのよ!! 募金して貰ってんのよ!?

小さいながらも幸せを貰ってんの!! 解ってんの!?」

 お前はバイト先の先輩か! バイトしてないけど。

「小さな幸せを頂く代わりに、リアルな助言を与えたんだよ」


「そんな理不尽な等価交換あるかァァ!!」

 舌打ちする僕を無視して縁はそのまま続ける。

「明らかに八つ当たりじゃないの!!」

 あ、やっぱそう見えた?

「何か不満があるなら、あたしに言いなさいよ!!」

 ほぉ……そんなことが言えるのか! 不満なら腐るほどあるわ!!。

「じゃあ言うけど何で募金!? 何で僕が手伝わなきゃ駄目なわけ!?」


 そう、あの放課後に集合した後、そのまま商店街に来て白い箱を渡されたのだ。

 そして有無を言わさず笑顔で言ったのだ。

『募金しろ』


「理不尽なのは君でしょーがぁ!」

 僕の言葉にキランッと縁は目を輝かせた。

「ッフッフッフ……これにはちゃんと意味があるのだよへーじ君!」

誰だ。誰のつもりだ。

「これは正義なる行動!! どうだ!! 気持ちいいだろう!!」


「嫌、無駄にめんどい」

 簡単に言った僕に、縁の顔が引き攣った。


「き……君の薄汚れた心が洗われるだろう!!」


「は? 何言ってんの?」

 再び、僕の簡単な言葉に、縁は大きく溜息を付いた。

 僕が付きたいんですが。

「それ……それよ!! へーじは正義! っていうか善意の心とかが無いの!! だからあたしが教えてしんぜようと思ったの!」

 それが僕を手伝わせているわけか。


「いや、いらんし」


「駄目! あんたが嫌だろうーが! あたしの気が治まんないの!! どう!?

この優しい心持を!」

 そう言って胸を張っている縁の後ろを、募金活動のお姉さんが通り掛っていた。

「あ! 縁ちゃん!! 助かったわ〜、

突然来れなくなった人がいて急遽人数が必要になったのを直ぐ手配してくれて。

約束通りケーキ奢っちゃう!」

 そう言って笑顔で縁の肩をポンポンッ! と楽しげに叩く。

 ……そうかそう言うことか。

 ピシッという具合に固まっていた縁は直ぐに動き出すと戸惑った表情と共にお姉さんと僕を交互に見た。

「え!? あ! あの!」


「じゃ! 頑張ってね!」

 そう言うと縁の話等聞かず、サッサとお姉さんは去っていった。


「……優しい心持って言葉の意味教えて?」


「さ、さぁ?」


 その場で同時に僕等は言葉を止めた。


「そりゃ……ケーキは欲しかったけど、それとこれとは別で……」

 ゴニョゴニョと言っても聞こえませんが。

 ジトーッと言う具合に縁を見ていると、突然縁は顔を挙げた。

「あーもー! へーじは、あの3人を見習うべきだよ!!」

 半ばヤケクソというか逆ギレといった具合に、一緒に来た3人の内の一人を指差した。

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