その47.縁…君もてるんだ……うわぁ! 趣味悪っ!!
学校の放課後、チャイムと共に鞄を取ると教室を出た。
「どこ行くの?」
廊下に出た瞬間に、ミホが後ろから呼び止めてきた。
「どこって、帰るんだよ」
とりあえず当たり前のことを言う。
「……縁ちゃんはいいの?」
「僕は了承したつもりは無いよ」
「アハハ! 良いね! 全くその通りだわ!」
行け、というのかと思っていたのだが。
肯定されるとは思ってはおらず、ぶっちゃけ拍子ぬけだ。
「アハハ? 行けと言うと思った? 強制するのは簡単だけど、それは自分が決めることだしね」
……へぇ、君はどちらかと言えば縁よりと思ってたんだけどね。
「何でも簡単にYESと言わない君も良いけど、NOばっかり言ってても何も始まらないよん?」
「それは説教かい?」
僕の言葉に簡単に笑って一蹴して見せるとミホは再び口を開く。
「違うね、意見だよ」
フン……唯の性悪じゃ無さそうだね。
「悪いけどその意見を受け取る気はないよ、今はNOを言う時だってだけだ」
そう言うと、ミホを無視して廊下を歩きだす。
「アッハ! へーじのそいういう所は嫌いじゃないよ」
ミホの言葉を聞くつもりは無かったが自然と耳に入った。
それは好きでもない、て取れるよね?
僕も君の言い方は嫌いじゃないよ。
ミホは、後を付いてくることはなく、一人で廊下を歩く。
別に、縁のことを聞くことも、ミホの言うことを聞くことも無いわけだ。
下駄箱の所まで来た。
もう直ぐ外に出る、問題は如何にして、縁に出会わず帰る……なのだが。
靴を取り出そうとした時、ドンッ! と誰かが肩をぶつけてきた。
あだぁ! 何だ!?
肩のぶつかった相手は僕を睨むと、何かを投げつけてきた。
慌ててその紙を手に取ると、朝に渡された新聞と同じ物だった。
「お前、ソイツの何なんだ」
睨む主は特に体が大きいわけでも無いのだが、その声に迫力があった。
視線を下に向けると上靴が見えた。
上靴の色から縁と同じ学年。つまり僕の一つ下だと解った。
特に特徴の無い姿かたちだが、強いて言うならぶっちゃけイケメンだった。
つか年下なのにタメ口ですか、これが世に言うゆとり教育という奴か!
「は? ソイツ?」
この男の言葉に意味を持つことが出来なかった。
ソイツとは誰だ? 何なんだって? コッチがなんなんなんだ?。
「ちょっと、君何? 僕帰りたいんだけど」
「話てんのは俺だ!! 縁とどういう関係何だよ!!」
は? 縁? 本当何なの?
「暴力女がどしたの?」
「ぼ! 暴力女!? あんな美しい人を暴力女だと!?」
……は?
「え? 美しい? 誰が!?」
「縁以外誰がいんだよ!」
うわぁ……頭オカシイ子だ、
「いいか!? 縁は俺の『物』だ!! 手を出すんじゃねェゾ!!」
その言葉に、何か苛立ちを感じた。
頭の中がチリチリする感じだ。
純粋に、イラついた。
ッチ……何か君むかつくね。
「手を出す気は無いし、君があの子にご執心なのは解ったよ。」
その後に直ぐに付け足す。
「だけど」
僕は、人を物のように言う人間は嫌いだ。
綺麗事を並べてるんじゃない、唯単に、
ムシズが走る!!!
「君の『物』!? どういう意味でそう言ったなんざ知らないし知りたくもない!! 勘違いするな! あの子は誰の物でも無い! あの子自身の物だ!! クズが! 何様のつもりだ!」
捲し立てる僕に、男は戸惑った表情と共に一歩後ろに下がった。
だが、戸惑った表情は怒りの表情へ。
そのまま、僕の胸倉を思いっきり掴まれた。
「っぐ!」
苦しいだろ! 放せよクズ!!
「何だとコラァ!! 殺すぞ!」
年上だとしても、背の低い上にガキっぽい顔の僕に負けるとは思わないらしく、その手に拳を作りやがった。
ッチ! 口で勝てなきゃ手を出すのか! これだからクズは嫌い何だ!
今にも振り被りそうな拳を握り締めるイケメン、と、その男を力の無い僕は思いっきり睨む。
情けないが、それぐらいしか出来ない。