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その44.良い事と悪い事は交互に、・・・うん、解ってましたとも

保健室に入ると、先生は不在だった。

とりあえず彼女をベッドの上に乗せることにした。

ショートカットの女の子は慌てた様子で出て行こうとする。

「どこいくの?」


「あの!・・・先生呼んできます!!」


ちょっと!ちょっと!今どっか行かれると縁と2人っきりになるじゃん!何か嫌だから居てよ!

「ここにいてよ!」

僕の言葉に目を丸くする。

思ったよりも表情が豊かな子だな…。

「あの・・・でも!」

よっぽど慌ててるようで、困ったような表情を見せる。

だが、悪いけど今は手伝ってもらいたいこともあるし、直ぐに『調べたい』。


「冷蔵庫に冷やし枕があったら持ってきて、無かったら洗面器から水を汲んでそこに氷を入れる。それにタオルを入れて持ってきて」

そう言いながら冷蔵庫と洗面器の順で指さす。

正直な子のようで、素直に僕の指さす先を見てくれた。

一瞬だけ顔を困惑して見せたが直ぐに「はい」、と小さく返事をして行動に掛かってくれた。

ふむ、良い子だ。


縁に近づくと瞑っている目を右手で開いて見せる。

大きな瞳が目の前にあった。

縁にこんなことをするのは気が引けるが、っていうかばれたら殺されるなぁ。

瞳を覗き込んで焦点が合っているかの確認。

「あの…持ってきました」

控えめな声に反応して振り向かずに言った。

「それ置いといて」

女の子は言われた通り近くの台に乗せてくれたようで、ちゃぽん、という水の音に冷やし枕が無かったのが解った。


うん、良い子だ。

縁の頭を両手で優しく持ち上げる、本当は頭を打った人間の頭には触れない方がいいけど。

縁の後ろに手を回して腫れている部分を探した。

一部分に小さなたんこぶを確認した。うん、対したことないな。

そこでホッと胸を撫で下ろすと、ゆっくりと頭を元の位置に戻した。


「あ・・・あの?何してるんですか?」

再び控えめな声に振り帰った。

「ああ、状態を見ようと…?」

何故か女の子の顔が赤い。え?何?

女の子の視線は縁と僕を交互に見ていた。

「そういう関係なんですか?」

え?どういう関係?

とりあえず、先ほどまでの行動におかしなところがあったかを頭の中で確認してみる。

・・・・あ。


あれか、まさか頭を持ち上げた時のか、確かに傍から見れば、抱きじめているように見えなくもない。

「ああ…て、違うから!」

慌ててつい、声が大きくなってしまった。そりゃ動揺しますとも!

「たんこぶの位置を見ただけだから!」


「じゃ!じゃぁさっき!・・・・その!き・・・・キスみたいな」


「・・・・は、はぁぁぁ!?」

キス!?キッス!?してませんよー!それはどんな勘違いですかぁ!?

「あ!あの!すいません私お邪魔でしたか!?」

「ちょっちょ!落ち着いて!!何で!?何で僕が!?」


「だ!だって!私に指示を出した後に縁に近づいてそのまま、キ…キ!」


「いいよ!一回一回言わなくても!!」

何故!?流石にそんなことはしませんよ!?

再び思い返してみる。

・・・あれか?目を見た時か?

「あれも眼の焦点があってるの見ただけだから!!断じて!!!そんなことしないよ!」


「そ、そうなんですか?」


「そうだよ!!」

何か躍起になって声が大きくなる。


「そうですか、すいません…早とちりしてしまって」

解ってくれたのか、今度は自分の考えすぎに顔を赤くしたようだった。

何だろう…この子見てるとほっとけないような感じが・・・・気のせいだろうか。


「でも、何で先輩そんなこと出来るんですか?」


っ・・・・。確かに普通の高校生はそんなことしないわな。


「偶然知ってたことやっただけだよ」

僕の言葉に深く追求せず、「そうですか」と短く言ってくれた。

察してくれたのか、それとも唯そう言ってくれただけなのか。


やめよう。無理に考えるのはやめとこう。


冷えた容器に手を入れた瞬間、思っていたよりも冷えていたようで手が震えた。

「あの、へーじさんですよね?」

その子は僕の名前を言った。

…?名前言ったっけ?初対面だよね?

僕が不思議そうに振り向いたのを見たのが、変だったのか。その子は微笑んでいた。

僕の不思議に思った表情を読んだのか、先読みして女の子は答えた。

「縁から聞いたんです。」


「へぇ…何て聞いてたの?」

手で容器の中のタオルを回しながら唯単な興味本位で聞いてみた。


「えっと、貧弱で悪口しか言えなさそうなひ弱な男に会ったとか・・・」


この女…だけどその通りだから何とも言えない。

「でも、むかつくけど嫌いになれないって言ってましたね」


・・・・はっ、僕は嫌いだよ。

そこで、女の子は一瞬間を開けて見せた。

「でも、縁から聞いたのとは少し違いましたね」

、?

もう一度振り向いた。

そこに微笑んでいる可愛らしい少女。

よく見ると頭に赤いカチューシェを乗せ、小柄なその姿は見事に『可愛い』という言葉が似合う気がした。

いかん…また顔が熱い。

慌てて容器に顔を戻す。

僕はハイエナかァァ!!女とみたら直ぐ赤面ですか!?ダメです!!ダメですぞぉ!!僕は最クールで(自称)ナイスガイなんだ!!(自称)

「な、名前は?」

いい加減名前を聞いておこう、さっきから女の子女の子と地味に失礼な気がする。


「私は立花たちばな 志歩しほです」


ギュッとタオルを絞りながら名前を聞いた時、疑問が過った。


ん?立花?

気のせいだろうか、同学年で同じ名字の性悪な女を知っているような・・・・。

いやいやいやいや!無い無い!こんな可愛い感じの子とあんな性悪が何て。無い無い。


しかし、可愛い子だな。

等と思いながら縁の頭の後ろにタオルを入れようとした瞬間、


バッチリ!と!寝ている筈の縁と目が合った。

え?あれ?


「何ニヤついてんのよ、馬鹿へーじ」

そんな何時も通りな感じの声と共に、蹴りが繰り出された。

縁の直ぐ横居たので、腹に減り込む様に入った。

「ごふぅ!?」

そのまま宙を浮く、今度は横に。

看病してただけなのに何で!?

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