その42.空から降ってきていいのは女の子であって男はダメ!!何か気持ち的に!!
「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
「!?」
声がどんどん大きくなる。これは幻聴では無い!!
そして、声が真上からすることに気づいた。
上を見上げると、そこに貧弱男が居た。
「はぁぁぁぁ!?」
兄貴の次はへーじ!? 何で!?
流石についていけず、臨戦態勢依然に普通に驚いてしまい、呆気に取られる。
兄貴ならともかく、あのへーじが飛び出してくるとは思えなかったからだ。
そして、兄貴とは違い、小柄な貧弱男が落下したら100%死ぬのが目に見えている。
どうでもいいことを考えている間も貧弱男は接近してきている。
……アタシの頭上に!!
反射的に受け止めようと両手を前に差し出した。
何だかわかんないけど!! 行ける!! アタシなら行ける!!
そう決心すると、頭上のへーじを睨みつける。
志歩もへーじの存在に気づいたらしく小さく「キャァ!」と可愛らしい声を上げていた。
本当、女の子だね。
接近するへーじは直ぐ目の前!
さぁ!!
来い!!
ドシャァ!! という音と共に両腕に男一人分の体重がのっかってきた!
落下速度で何倍の重さになったかは知らないが、流石のあたしでも腕が落ちていく。
まだ! まだぁ!!
「でりやぁぁぁ!!!」
気合の入れた声と共に体全体でへーじを受け止め……!!!!。
そう思った瞬間、地面が凹んだ。
足は耐えた。しかし地面が足の形で数センチの沈みを見せた。
「へ!?」
あたしの間抜けな声で突然バランスが崩れたのに対応することが出来なかった。
バランスの耐えられなくなったアタシは、後ろへ落ちる。
その上に覆い被さるようにじへーじも一緒に落ちる。
「キャァ!」
高い声は志歩ではなく、あたしが反射的に放った物。自分でも驚くけど、ちゃんと女の子悲鳴出せるんだなぁ。
等と呑気に考えてしまった。
「あう!!」
後ろに倒れる拍子に、地面に頭を強く打ったようで頭に衝撃が走る。
ぐわん、ぐわん、と景色が揺れた。
耳から聞こえる音も妙な音を繰り返していた。
目の前に居るのは多分へーじだが、何故か顔が赤い。その赤い理由も今は考える余裕が無い程にふらついた。
目の前でグニャグニャのへーじの顔が赤面から真っ青に変わったことだけは良く解った。
「……り!! ……か……り!!!」
へーじの声が耳元で聞こえる。
志歩の声も聞こえる気がする。
くっそー……アタシもまだまだか。
薄れ行く意識の中、ふと考えてしまった。
その考えた言葉は自然と声に出ていた。
「……あれ? へーじ……初めてアタシの名前呼んだ?」
そのまま意識はテレビのようにプッツンと途絶えた。