その37.次の日胸焼けがきつくて死にそうです。助けてください。
こちらの勝手な事情で後から一部追加いたしました。
恐れ入ります、っていうか本当すいません。
「うぇっぷ……」
朝の校門前、吐き気が僕を襲う。
立ち止まった僕を見る人間はいない。
普通にスルーして学校へ入って行く。
寒いし胸焼けだし、吐きそうだし。
朝からテンション下がりっぱなしだよ!
「よ! へーじ」
そんな声と共に背中に衝撃が走る。
うぇっぷっ!?
後ろから慣れ慣れしく背中を叩いた衝撃が弱弱しくなった腹を襲う。
この加減の無い叩き方は予想できる。
「何すんだよ……」
恨めしく、後ろを見ると予想通り立っていたのはサク。
肌寒い空気の中に居るはずなのに暑苦しく思える笑顔を向ける大男。
「何だ?具合悪そうだな?」
君の妹のせいだよ!
睨むようにサクを一瞥した後、さっさと学校へ歩を進めた。
「お! おい! 無視すんなよ!」
サクの言葉等一々気にするのもめんどくさい!
「うっさい!! ボケ!」
怒りを込めて振り向かずに吐き捨てる。
君が電話しなきゃこんな思いしなかったんだよ!
そのまま勝手に早歩きになる。
「何だよ! 何怒ってんだよ!!」
その早歩きに急いでついてこようとする足音が聞こえる。
それを無視して教室へ向かう。
「ちょっと!! 待っ! のわぁ!?」
間抜けな大声に反射的に振り向いてしまった。
仕方が無いでしょ、驚いたんだから。
振り向いた先に居たのは間抜けに扱けているサクがいた。
「ぐんぶぉぉ……」と、痛がっているようだが、ざまぁみろ!
といわざるをえない。
言わないけど。
「朝っぱらからデカイ声出すなバカ」
低い声に、もう一人の人物を確認する。
視線は扱けているサクから低い声のする上へ向いた。
そこに居たのは、白衣を纏っているダラダラ駄目教師。
その顔にいつものめんどくさそうな表情は無く、真っ青でしんどそうな表情をしていた。
……風邪か?
そのまま死んだらいいのに、と、ぶっちゃけ嫌いな教師に悪態を付いている僕を他所にサクは駄目教師を睨む。
「てっめ! 何で足かけたんだよ!!」
どうやら扱けたのは駄目教師が足を引っ掛けたらしい、相変わらず教師らからぬ行動をするなァ……
「うるせぇっ、て、こちとら二日酔いでしんどいんだよガキ!」
二日酔いかよ、だがそれは八つ当たりでしょーが。何をイラついてるんだ?
「は? ふつかよい? 知るか!」
はい、ごもっとも! 今のはサクが正しいね。
珍しく。
駄目教師は舌打ちすると何か悪口を呟いたのが聞こえた。
てか嫌な予感が。
僕の勘は見事に当たった。
当たって欲しくないけど。
座った目は僕の方を向く。
「へーじ」
「な、何ですか!?」
怖! 不良とかとはまた別の迫力があるな! この人!!。
「姉は……大丈夫か?」
……? 姉? 何で顧問でも無いのに僕の姉貴が運ばれたを知ってるんだ?
というか、僕に姉が居る事を何で知ってるんだ?
「あ、はぁ、無事ですけど」
とりあえず零すように答えたが、駄目教師は「そうか」と小さく零すだけだった。
?、疑問に思う僕を無視して、駄目教師はフラフラと廊下を歩き出す。
なんなんだ?
「何であいつ不機嫌なんだ?」
僕と同じ様に疑問に思っているサクがいつのまにか隣にいた。
「二日酔いだからじゃない?」
僕の答えにサクは首を不思議そうに首を傾げた。
「いや、だから、ふつかよいって何だ?」
「本当に知らないのかよ!!」
やっぱ君はバカだ!!
「っつーか結局お前は何を怒ってたんだ?」
突然話題変えられると困るんですけど。
「……君の妹が作った生物兵器で昨日死にそうなったからだよ、
僕にどんだけ焦げを食わせる気ですか。ガンになるわ!」
「誰が生物兵器を作り出した女だって?」
その高い声に高速で反応した僕は、瞬間的にしゃがみ込んだ。
予想通り、頭の上をすざまじい風が通過した。
飛び蹴りは狙っていた僕の後頭部に当たらず、そのまま僕の隣に居たサクの顔面へ激突した。
「おぴゅ!?」
間抜けな声と共に、横に2回転も回転しながら吹っ飛んでいった。
サク……正直にゴメン。
「ッチ、外したか」
舌打ちと共に、睨みつけてきたのはご存知暴力女こと、縁。
兄貴を思いっきりふっ飛ばしたのに、
その顔に謝罪の気持ちなんてこれっぽっちもない感じだ。
「あ! 朝からなんですかーっ!?」
僕もサクを気にする余裕何て無く、顔がひきつっているのが自分でも解る。
「うっさい!」
その声と共にしゃがみ込んでいる僕の顔面に軽い蹴りが入る。
地味に痛い!
涙目になっているけど、意地でも泣くもんかボケェ!
「君が昨日作ったのはどう見ても生物兵器でっしょーがー!!!」
僕の声に怯むこと無く、ッキ!と僕を睨む。
「食べてもいないのに良くそんなこと言えるわねー!」
食ったから言ッとるんじゃァァァ!!
「第一!昨日の料理で炭だったとしても何で甘かったんですか!?
しかも頭痛がしたわ!! アレか!? 塩と砂糖間違えちゃった♪、とか言う天然か!?
頭が痛くなるほど入れてたらドッチでも変わらんわ!! 天然じゃないだろ!!
確実に殺す気だったよ!! あの料理は!」
縁は捲くし立てる僕を不思議そうに見つめていた。
先程まで睨んでいた瞳とは違った困惑したような瞳。
何だ?
「食べてくれたの?」
あ……。
「ま……まぁ材料も勿体無かったし? お腹減ってたからちょびっとだけ食べましたよ?
本当にちょびっとだけ!!」
何で言い訳してるんだ? 僕は……。
まぁ全部死ぬ気で食いましたけども。
腹へってたからですがね!!
?、
気のせいだろうか。
俯いている縁の顔が少し赤い気がする。
「……り……と」
突然声が小さくなって何て言ってるのか聞き取れない。
「へ? 何?」
もっと聞き取れるようにと、自然と縁に耳を近づけていた。
結論的に顔を近づけた。
「!?」
あからさまに動揺した縁は瞬間的に顔を上げた。
顔が真っ赤になっていた。
え? 何で? 赤くなる要素ありましたか?
「な! 何でもないわよボケーーーー!!」
「へぶぅ!?」
罵倒と共に放たれた右ストレート。
顔面にクリーンヒット!ッフ……良いパンチだ。
サクと同じ様に吹っ飛んだ僕を無視して縁は逃げるように去っていった。
「あ、あの女ぁ……」
予想外なパンチは思ったよりも僕の芯にまで届いていた。
廊下に寝転がっている男2人に目もくれない生徒達を取り合えず怨めしそうに睨むことにした。
朝から不幸だ……。