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その27.女の子と手を繋いだのは初めてです。…理由はどうあれ。

 よ、よし!冷静になれ!

 ひとつずつ頭の中でリクエーション(?)をするんだ!

 確実な選択肢を選んで死を回避するんだ!(必死)


→1.たるかったんで

 2.恥ずかしくて君の顔を見る事が出来なかったんだ!

 3.家の人が急病で!



おとこがたるかったとか言うなぁ!」

 振りかぶる拳。


 あ、ダメだ、今の状況でこの選択肢は確実にられる。


 1.たるかったんで

→2.恥ずかしくて君の顔を見る事が出来なかったんだ!

 3.家の人が急病で!!


 いやいやいやいやいや!こっちが恥ずかしくて言えんわ!

 と、言う事は残るわ……


 1.たるかったんで

 2.恥ずかしくて君の顔を見る事が出来なかったんだ!

→3.家の人が急病で!


 まぁ、ベタだけど、こん中じゃマトモかなぁ。

 でも嘘付いたのにまた嘘付くのってまずそうだな。


「早く〜答えようね〜?」

 バキバキと鳴る手が怖い、怖い!

「うううう家の人が急病でぇ!」

 ああ……もうどうにでもなれ!


「……本当?」


 ブンブン!、と首を前に振りまくる。

 あ、いかん気分悪くなった。

「じゃ、行こう」

 は?

 ちょ、何でさり気に腕取ってんですか、恥ずかしいんですけど。

「と、いうか、え?」


 腕を引っ張って立ち上がらされると、そのまま走りだそうとする縁が振り向いた。

「病院!」


「はぁ!?」


「急病なんでしょ!?急がなきゃ!」


「何で君が来んの!?」


「心配じゃない!」


「赤の他人じゃん!」


「バカヤロォォォ!」


「へぶぅ!?」

 デジャヴ!?

 だからいきなり殴るのは勘弁して下さい。


 「他人だから見捨てる!? お前それでも人間か! そしてあたし達(以下略、その5.参照)


「もうそれいいよ! めんどくさいよ! だるいよ! ソレ!」


「何て?」


「あ、嫌……何でもないです」

 僕のバカ! 何でここぞで弱くなるかなぁ。


「ほら! 行くよ!」


「あの、病院行くより、服とか持っていかなくちゃ駄目みたいだしさ……一回家帰んなきゃダメみたいでさ」

 ヨッシャッァァァ! ナイス僕! これじゃぁ、流石に。


「ヨッシ! じゃあ家行こう!」


「っはぁ!?」

 まじで!?

「ほら! 家行ってから病院直ぐ行こう!」


「ちょ! ちょっと! 仮に女の子でしょ!? 男の家に行くんだよ!? そこんとこどうなの!?」

 捲し立てる僕に全くもって意味が解っていないのか、不思議そうな表情で首を傾げる。

「家に行くだけで何でそんな顔してんの?」

 え? どんな顔してんの? 僕。

「まぁ……そうだけど」

 そうさ、何を動揺してるんだ僕は…

 これじゃあ僕が意識しまくってるみたいじゃないか! 意識なんてしてませんから。ええ本当。

「ほら! 行くよ!」

 !?、嫌……だからそんな手握んないでよ!

 恥ずかしいじゃん!

「嫌、あの」


「何さ」

 本当、真っ直ぐしか見てない瞳だなぁ。

「……」

 何も言わない僕を無視して、前を向くと僕の手を思いっきり引っ張りながら走りだした。

 君、僕の家知ってんの? 知らないよね? なのに、何で突っ走ってんの? 

 バカじゃないの?

 必死に走る縁に何とか追いついている僕が後ろから見えた縁の顔は本当に心配している様に見えた。

 これじゃあ、男と手繋いでるとかも見えてないのかね。

 赤の他人の為に、何も見えていないみたいで。

 嘘なのに。



 ってか! これ嘘ってバレたら不味くない!? 主に僕の命がァァァ!

 必死に走りながら、ダラダラと流れるのは汗ですか? いいえ冷や汗です。



 走りながら、ふと思った。

「何で僕が裏門から出るって解ったの?」


 振り向きもせず縁は答えた。

「兄貴に、へーじが逃げる様なら連絡してって言っといたから」


「……」

 あいつか。

 あいつかァァァァァ!

 あの電話の意味が解ったわボケェェェ!

 何が一緒に帰ろう! だぁ! ボケ!


「ねぇ」


「ッ! はい!?」

 心の中で悪態を付きまくっている時にいきなり何ですか!?


 珍しく、ボソボソと言った様な声を縁が出した。

「あたしは、身内が急病でも、連れ回すような人間に見える?」

 後ろから見える横顔が、一瞬が曇った。


 連れ回す……の意味は、きっと僕を何処かに連れて行くつもりだったのだろうか。

 だけどね、君に会って僕は間もないんだ。

 連れ回すってのはね、自分の我儘に唯振り回しているだけじゃないの?

 本当なら、関わりたくは無い。

 本当なら、多分。


「そうだね、見えるよ」

 走りながらで荒げる息の中、精一杯深呼吸をして冷めた口調で言う。


 ……殴るかい?


「そっか」

 覚悟していたのだが、拳は飛んでこず、そっけない一言だけが返された。


 何だろう、何か、痛いな。

 何処が? と聞かれれば、わかんないんだけどさ。

 嘘付いてる僕が、そんな生意気言えるわけないんだよな。本当は。


 無言のまま走る僕と縁。

 掌をギュッと握る縁の手があたたかい。

 寒い気候の中、制服姿で手を繋いで走っている僕と縁は周りからどう見えているのだろうか?


 ……。


 あ!

 ……考え過ぎて忘れてた!


 今の雰囲気で言っていいのだろうか。

 嫌、でも言っとかなきゃ不味いよな。流石に

 ん? もしかして逆にチャンスじゃね? 今なら殴られないよね!?


「あのぉ〜」


なんさ」



「…………道逆なんだけど」


 その一言と共に、縁が立ち止まった。


 殴らない、よね?

 気のせいだろうか、背中から妙なオーラが。


「それを」

 声が何処となく怒っている気がするんですが。


「それを?」


 振り向く拍子に繋いでいた手を離した。

 不覚にも離された手を目で追ってしまった際、縁が僕の方を向いた。

「早く言えェェェェェ!」

 叫び声と共に振り被られる拳。


 ですよねー(笑)

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