その19.暴力熱血女再び!やっぱり熱血はマンガだけで結構・・・
あの夜、縁と名乗った少女がそこにいた。
何故サクと睨みあっているのかは解らない。
だが、空気が凍っていた。
先程まで騒いでいた野次馬達もシン……と静まり返り。
サクと縁を見据える。
さながらガンマンの決闘シーンに居合わせた感じだ。
僕もその一人であることにかわりはなかった。
よく見ると、数人のガラの悪そうな男達が床でノびていた。
白目を向いている所がかなり怖い。
あの子がやったのだろうか、というか他にいなさそうだ。
サクを改めて見る。
サクにいつものお茶らけた仕草は無かった。
「てめェ」
最初に言葉を発したのはサクの方であった。
縁は答えない。
「てめぇが暴れるのはかまわねぇ」
見知った者の様に声を掛ける。
この2人は知り合いなのか!?
一年間一緒に居るが、サクが女の子と知り合いだという話は聞いた事がない!
何よりも、この子が同じ学校だとは思えなかった。
というか、そんな絶望的なことを思いたくもなかった。
サクは続ける。
「だが、俺の友達にも、俺の環境にも出てくるんじゃねェ!」
サクが怒りの声を上げて、右腕を空に思いっきり振った。
「そんなこと、知った事か」
縁は小さく声を漏らす。
「アタシはアタシのやりたい事をやってんだ! アンタこそ口出しすんな!!」
サクと同じくらいの大声を張り上げ、その高い声はよく耳に通る。
2つの瞳が睨み合う。
瞬間、ッワ!!と回りに歓声が起こった。
何事!? と慌てて見渡す僕は何故か空気な気がする。
この展開は、あの時と一緒。
あの女の子に空気が支配される。
僕は置いてけぼりですか。
「嫌ァ、無いな」
いつから居たのか、直ぐ隣に駄目教師が居た。
何が無いのか知らないけども。
今迄何してたんだよ。
「止めてくださいよ!」
「嫌、死にたくねぇし」
今にも2人はぶつかりあいそうな勢いで睨みあっている。
確かにこの間に入るのは死を覚悟するのは仕方ない。
でも、そこは教師として頑張りましょうよ!
「プライド無いんですか!?」
「死にに行く為のプライドは無ェ」
カッコイイですね! でもそれって単に怖いだけじゃん!
誰が鳴らしたか、カーンッとゴングの様な音が鳴り響いた。
鳴らすなよ!
同時に2人が床を蹴った。
何で止めにきたのに、戦ってんのさ!
僕の苦悩は続く様で。
アア……頭が痛い……