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終わりと言う名のエピローグ

 あれから、後の話しをしようと思う。

 あの後、僕は順調に回復してスグに退院した。


 寧ろ傷の事よりも、退院した後の方が大変だった。

 退院した後、そのまま警察の方に向かった。

 僕が銀行で行なった行為は、犯罪に通ずるものが在るからだ。

 器物破損、無免許での手術。

 法律では緊急事態のみ、無免許でも医療を行ってもいい場合が在る。

 しかし僕は成人でも無いし、しがない高校生だ。

 その法律が適用されるかは謎だ。


 他にも犯罪者とは云え、殺害のギリギリまで追い込んだ。

 正当防衛の範囲を超えていたんだと思う。

 そして犯罪者の一人を逃したのも、バレれば不味い事の一つだ。

 

 正直、牢屋行きは免れないと思っていた。

 その可能性は十分にありえた。


 しかし、僕が警察で聞かされた言葉は違った。

 僕は罪に問われる事は無かったのだ。


 何故、罪に問われなかったのか。

 それは僕が寝ている間に起こった事だった。

 僕は罪に問われる形で話しが進んでいた。

 だが。

 銀行で一緒に捕まっていた人質の方達が、僕の事で全員が抗議をしれくたらしい。

 そして、何と。

 僕が逃がした男も。



 銀行を襲った男達の素性を警察に明かし、自分から出頭していた。

 自分から出頭した事と男達の情報を与えたのだから多少は罪は軽くなる。

 しかし、出てこなければ罪にすらならなかったのに……。


 男は僕の目の前に居た。

 是非僕にお礼を言いたいと、牢獄に入る前に僕を待っていてくれていたらしい。


 僕の「何で……」と言った言葉を聞いた男は優しい笑みを浮かべる。

「幾ら逃げても罪は消えない、ちゃんと罪を償って恥ずかしくない親になるんだ」

 男の決心を込めた笑顔を見て、僕は何も言えなかった。

 ただ、男が純粋であってくれて、子供の事を考えてくれたのは嬉しいと思える。

 その人たちだけで無く、クラスの仲間達も一緒に抗議をしてくれていたらしい。

 僕はベッドで寝ていただけなのだけど。

 サクやミホ程では無いけど、クラスメート達は何度も僕に会いに来てくれていたらしい。


 世の中、中々捨てたものじゃないのかもしれない。



 僕以外の、その後の話もしよう。


 サクは相変わらずバカばかりやっている。

 しかし、縁と最近よく話しをするようになったらしい。

 少しバツが悪そうにだけど、そう言ったサクは何だか嬉しそうに見えた。

 もう縁を隠そうとする気は無いらしく、学校内では縁と毎度派手に喧嘩している。

 だけど、サクがキレる事も、縁がキレる事も無くて、唯の兄弟喧嘩だ。

 ただ……毎度僕を巻き込むのだけは勘弁して欲しい……

  

 彼にも変化は在ったらしい。



 志保ちゃんは今も縁と仲良くしている。

 前よりもずっとずっと仲がよさそうで。

 今回の事は志保ちゃんにとってはとても怖い事だったのでは無いだろうか? と思った。

 あそこまでブチ切れた縁は、サクも見た事が無いと言っていたくらいだからだ。

 さり気なく聞いてみた。

 だが、僕の考えとは違った。

「確かに……知らない縁を見て怖かったです。 だけど、本心の縁を見れた様で嬉しい気持ちの方が強いです! 縁は、一人で背負おうとしますから、何でもかんでも隠して自分でやろうとしますから……へーじさんには、本当に感謝しています」

 そう言って僕に深くお辞儀をして見せた。

 そんなつもりは無かったんだけどな……。

 というか僕はお礼を言われることをしたっけ?

 ……んー、解らん。

 取り合えず解ったのは。

 志保ちゃんは何処までも良い子で、優しい子で、やっぱり可愛い子だって事だ。


 彼女もまた、変化を示したのかもしれない。



 ミホは今回の事を新聞にすると息巻いていた。

 どんな新聞になるか見ものだ……いや、あまり期待はしていないけどサ。

 最近、サク以外にも良く一緒にいるようになった人物だ。

 縁との出会いから、新しい悪友が増えた、といった感じだ。

 いつも通りのいつもの笑顔だけど、最近はもっと表情が豊かな感じがする。

 彼女の事を知ったから、きっとそう思える様になったんだと思う。

 だけど、僕と居る時……というか、縁の話しや、縁と居る時に一瞬だけ辛そうな表情を見る時が在る。

 嫉妬してくれてる……等と思い上がった事は考えないけど。

 そういうのとは違うと思った。

 少し心配になって聞いてみた事が在る。


「縁の事が嫌い?」


 キョトン、とした顔をした後、大声で彼女は笑いだした。

「んーん! 大好き!」

 そう言った彼女の笑顔は、心の底からの笑顔だった。


「へーじの事もおんなじ位に大好きだよーん?」

 そう言ってアッハッハ! と何時ものように豪快に笑ってみせる。

 彼女は相変わらずだ。

 全く、何処までが本気なのか……。


 彼女はきっと変わった。

 だけど変わった所がいまいち解らなかった。



 縁はというと。

 前と変わらず学校内では風紀を乱す者を裁き、外では見る人全てを助けボランティアにも勤しんでいる。

 だけど変わった所もあった。

 一つは見た目だ。

 僕が上げたロザリオを肌身離さず持っているという事だ。

 学校でも、外でも、制服の上から鮮やかに赤いロザリオが輝いていらっしゃる。

 彼女はそのせいで悪党達から『恐怖の赤十字架せきじゅうじ』だとか『赤い審判者しんぱんしゃ』だとか……様々なナイスなネーミングセンスを付けられている事に気づいていない。

 まぁ、名前を付けているのはどこぞの性悪女であろう事は考えずとも解る。

 サクの話しでは、寝る時も風呂の時も付けているらしい。

 そこまで気に入ってもらえると逆に恥ずかしくなってくる。

 これは余談だが、そのサクが何となく興味を持ち、止める僕の言葉も聞かずにロザリオに触れようとした瞬間、一瞬で病院送りにされていた……逆に言えば逆鱗を作ってしまったのかもしれない。


 もう一つ、彼女は人を頼るようになった。

 全てを背負おうとするので無く、色々な人と協力する様になった。

 志保ちゃんの話しでは、クラスでも若干浮いていた縁が打ち解けたと嬉しそうに話していた。

 そりゃあんだけ正義を連呼していればクラスでも浮くだろうさ。

 何はともあれ、志保ちゃん以外に仲の良い子が出来て良かった。


 そして、僕と縁の関係だが。

 実はそこまで変わっていない。

 縁が勝手に暴走して、僕が振り回される。

 そこは変わっていない。

 

 だが、全然変わっていないわけでは無い。

 小さな変化だけど、変わった所も在る。

 縁は時々、時々だけど、弁当を作ってきてくれたりする様になった。

 顔を赤く染めながら恥ずかしそうにするのは中々絵になるが……

 作った弁当を僕に向けてブン投げるのは止めて欲しい。

 どんだけ恥ずかしいんだ君は。


 中身は、相変わらずだが……。

 そして何よりも弁当を人に向けてブン投げるクセに、後から感想を聞きに来たりする。

 当然「マズイ」で一蹴。

 その度に喧嘩になるわけだけど……あんな消し炭を食ってやっているだけでも有り難く思って欲しい。

 そして、退院してから少し後に、縁から前の彼氏の事を少しだけ教えて貰った。

 彼氏、というよりも何時のまにかそうなったという人物らしく、今となっては愛していたかどうかも解らないらしい。

 一人で背負い込み突っ走る縁に初めて手を差し伸べた男性。

 そんな人物に会って、人を助ける事を沢山していても、助けられたことが少ない縁は自然と惹かれていった。

 ボランティア活動等、縁の言う正義の行いを一緒に手伝ってくれて、縁は嬉しかった。

 しかし、理由も無しにそんな善意や、ましてや……こういう言い方はアレだけど……

 暴力女な縁に近付くのだから裏が在ったのは当然だったのかもしれない。

 僕が縁と会った日、つまりは大晦日。

 男と待ち合わせをしていた縁が偶然、男が電話をしているのを聞いてしまったのだ。

 内容は、あまりにも酷い物。


 縁の家は、サクもそうなのだが裕福な家だ。

 男は縁の家の金を狙っていたのだ。

 そして、縁の体も。

 縁はパッと見、暴力的な所を除けば魅力的な少女だ。

 男が仲間であるだろう者と話していたのは、縁を『どうやって襲うか』。

 それを聞いてしまった縁は、正義の怒りよりもショックが大きくて逃げ出していた。

 そんな事もあれば、男性を『信頼する』事が出来なくなるのは当然なのかもしれない。


 ……淡々と喋っていた縁に僕は「何故そんな嫌な過去を教えるんだ?」と聞いた。

 そんな事、思い出したくない筈だ。

 そんな事、話したくない筈だ。

 縁は、はにかむ様に笑うと恥ずかしそうに、声を小さくして言う。

「へーじには、聞いて欲しかったんだ……」

 自分の逃げた事をしっかりと話して置きたかったと、付け足したように言った後、

 縁は少し辛そうにしながら笑う。

 ……理由はどうあれ、言い方に萌えた。



 最後にこれは自慢だ。

 サクがロザリオを触ろうとして瞬殺されたりいしていると言ったが、彼女は僕にだけロザリオを預けたりする事が在る。

 預ける状況と云えば、生徒会役員の会議の時等だったり職員室に呼ばれている時だったり。

 確かにどちらも学校内で付けていれば怒られそうだから解るんだけど……。

 時々よく解らないタイミングで渡して来たりもする。

 彼女なりの……何かの表現のつもりだろう。

 何はともあれ誰にも触らせないロザリオを僕には触らせるのだ。

 つまり、縁は僕を『信頼』してくれているんだと解釈した。

 そう、『信頼』されているんだ。

 他の奴には触らせないのに、男の僕に。

 

 ……何となく……本当何となくだけど。


 うん……悪い気はしないね、悪い気はね。


 きっと一番変わったのは彼女だと思う。


 これで僕の物語は終わりだ。

 どうだっただろうか?

 沢山の出来事は、僕達の世界に変化を与えた。

 そして僕達自身にも。


 口の悪い奴でも、暴力的な人間でも、性格の悪い奴でも、馬鹿でも、気弱でも。

 それがその人自身。

 そして一人一人に物語が在る、今回は僕の物語りを見せたけど、他の皆にも物語が在る事を忘れないで欲しい。

 それがハッピーか、バッドか。

 決めるのは物語の主人公で在るその人自身。


 え? 僕の物語はどうだったかって?

 ……まだ僕の物語は全てじゃないし、今までのは一部に過ぎない。

 暴力女にぶん殴られるわ銀行強盗に襲われるわ、友人に変態が居たり人の弱みを探すのが趣味の女の子が前の席だわ学校の教師なんてプロレスラーやってるし……。


 『現状』じゃ僕は周りを見ると幸福とは言い難いね。


 ……だけど



 取り合えずは、『現状』じゃ嫌いじゃ無いよ。


 だから。


 一応ハッピーエンドかな。


 ハッピーエンドって事にしておくよ。


 毒舌な僕にしては前向きな発言をしたんじゃ無いかな。


 僕自身も、変わったらしい。 


長かった……100話くらいで終わるよwとか言っときながらの大幅に先に行って180話以上…(TT)

一年とちょっとの連載。

イヤー長かったなーw

この話が始まったのが2008年 09月 20日

そして今が2009年 11月 2日

えーと……1年と1ヶ月と12日だからー……407日間の連載ですね(適当)

407÷188=2.1648...大体約『2』ですねwええw

大体二日に一回の割合での更新ですね(頭悪いのであってるのかは知りませんが)

小説家になろう内の更新頻度を良く知らないので、私の更新速度が速いのかどうかは知りませんが。

私的には最後まで遣り遂げたので、頑張った方では無いのでしょーか。

それでも待たせていた! という方には深くお詫びします。

ゴメンナサイでしたー!


それと、ここまでの話しを見てくださった皆様に、深く深く! お礼を申し上げたく思います。

何度も感想を下さった方、ありがとうございます、「あ! またこの人感想くれた!」という喜びは言葉に表すのは難しい程に嬉しく、時に勉強になり、時に笑わせて頂きました。

本当にありがとうございました!

一度のみの感想の方も、新たな読者がいらっしゃるという感覚は本当に胸が躍りました。

どれほど励みになり、力になったかは解りません、っていうか99%は皆様が見ているから最後まで書いたというのであって、皆様が見て下さらなかったら最後までちゃんと終われたかどうか……(ていうか無理)残りの1%は気合です。ええ、人間気合でなんとかなります。


本当に、ほんとーに! ヘーじ達の物語を最後まで見て頂きありがとうございます!!


小説家になりたいという一身で、始めて完結させたのでは無かろうかと思う作品で、とても今、物思いにふけってます(遠い目)


……次回作の事も少し考えてはいますが、反応を見てからにしようかという思いもありますw

現在コメディー部門で9位(確か)全ての部類合わせて100位以内(多分)

私としては嬉しい限りの結果ではあります。

しかし、自分がまだまだ低いレベルである事は自覚しています。

これからも、精進して行き、皆様に見て貰える素晴らしい作品を書けたらなと思っています。


 今迄読んで頂き本当にありがとうございました!


 あ、ラストっぽくなってますけど次の次話がラストです。


 ……あれww後書き書いてる内に11月3日になってるww

 私普通に約束破りましたねw

 すんまっせェェェェん!!!orz

 

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