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187/189

その186.最初も最後もロマンチックの欠片も無い僕等らしい僕等

 ロザリオを後ろから付けてあげようとしただけなのに……。

 まさか回し蹴りを食らう羽目になるとは思わなかったよ、アデデ。

 まぁ、後ろから突然そんな事をすればセクハラと間違われてもあながち間違いでは無いけどさ。

 相変わらず良い蹴りだった。

 そんな僕を蹴った縁はというと。

 不思議そうに、というより呆然とそのロザリオを見ていた。


 何でココにあるの? と言いたげに。


「……ミホがくれたんだよ、何でそのロザリオだったのかは……偶然かどうかは解らないけどさ」


 あのミホの事だ。

 僕たちの事を観察していたとか……まぁ、取り合えずどうにかして縁があのロザリオを欲しがっている情報を手に入れたのかもしれない。


 本当に偶然、という可能性も在るけれど。


「何でアタシに……? へーじがもらったんでしょ?」

 そんなジッとロザリオを見ながら言われても説得力無いって。


「僕なんかが付けるより君が付けた方が似合うでしょーが」


 ガッシャーン!


 と、昔のマンガの様に縁は派手に扱けた。

 普通に言っただけなのだが、何で扱けたんだ?

「え、何してんの君……」


 縁の顔は真っ赤になっていた。

「ななななな何が似合うよ!? アタシ何かが似合うわけ無いでしょーが!!」


「いや、普通に似合ってんじゃん、うん良い感じだ」


 ガッシャーン!(2回目)

 え、だから何で扱けてんの?


「は、ハァ!? ばばばばばバッカじゃない!?」


「僕は純粋にそう思ったから口に出しただけなんだけど……」


 ガッシャーン!(3回目)

 

 ……はっはーァ?

 縁の顔は最初の時以上に真っ赤になっていた。

 僕と目線を合わせようとせず、手に持つロザリオをモゾモゾとイジッている。

 時々僕のほうに視線を向けるが慌てた様に視線はロザリオに落ちる。



 可愛い所あるじゃないか。



「いらなかった?」


「別に……欲しくないわけじゃないけど…」


「じゃぁ欲しいんだ?」


「…………」

 そこで黙るのか。


 少し、意地悪がすぎたかな?

 僕は目の前の子どもの様な縁を見て頬が緩んでしまう。


「……じゃあ、こうしよう、君が欲しいんじゃ無くて、『僕が貰って欲しい』んだ、これなら良いだろう?」

 意地っ張りな君の為に言い方を変えてあげた。


「……へーじが貰って欲しいなら、貰う……」

 縁も自分の為に言い方を変えたのが解ったのか、最後の『仕方なく……貰う』と付け足すような言い方は小さ過ぎて聞こえ難かった。


 意地っ張りな、この暴力少女が。

 堪らなく。


 愛おしくて。


 ギュッと、そのロザリオを握りしめて。

 真っ赤な顔で、長い髪の毛が顔に隠れるくらいに俯いて、小さく呟く。


「……がと」


「ん?」

 流石に小さすぎて聞こえなかった。


「……ありがと」

 少しだけ顔を挙げて、僕の目を見て、今度はハッキリと縁は口にした。

 少しだけ顔を挙げたから、顔が少し見えた。

 リンゴの様に真っ赤になった顔と。

 恥ずかしすぎてか知らないけれど涙目になっていた潤んだ瞳。


 ……参ったな、こりゃコッチまで恥ずかしくなってくる。

「あ、ああ、良いよ」


「…………」


「…………」


 ……沈黙が続いた。

 だけど、嫌いじゃない沈黙だ。


 僕も縁も、一言も言葉を発しない。

 縁はひたすらロザリオに視線を落とし、僕は縁を見れずに空を見ていた。

 青い空が、視線いっぱいに広がる。


「ねェ」

 か細い声が、聞こえた。


「何?」

 僕にしては珍しく、優しい声で言葉を返していた。


「何で……アタシにここまでしてくれるの……?」

 視線は下にだけれど、ロザリオに、ポタポタと滴が落ちていた。

 綺麗な滴が。


「アタ、アタシはへーじに……嫌な事いっぱいしたよ……? へーじだって大怪我したのに……迷惑いっぱい掛けたよ……? ねェなんで? どーして……?」

 嗚咽の混じった声は、本当に疑問に思っている声で。

 小さくシャクリ声を挙げながら、少女は小さく泣いていた。


 ……ああ。

 何が暴力女だ。

 何が正義の味方だ。

 そんなの関係無い。

 この子は本当に、小さな女の子じゃないか。

 皆、こんな子に何を求めていたんだ。

 正義なんて重い物を、何故背負わせた。


 少女は泣いていた。

 僕のあげたロザリオをギュッと両手で握り締め、そこに涙を零して。


 強気でいた、意地を張っていた皮が剥ければ、唯の少女。

 何の変哲もない。


 ああ、だから言える。




「好きなんだよ」



 そこで、縁が顔を挙げた。

 ボロボロの涙を流したまま。

 涙や鼻水でグチャグチャになった表情は、お世辞にも『綺麗』とは言えなかった。

 だけど、堪らなく『可愛かった』。


 それ以外に理由はいらない。

 必要が無い。


 好きだから助けた。

 好きだから怪我したって許せる。

 好きだから何でも許せた。

 好きだから……。


 流石に照れ臭くて、照れ笑いをしてしまう。

 人生初の告白。


「……ッ!」

 突然縁が突進してきた。

 かと思うと、顔面を思いっきり近づけてくる。

 僕の顔を両手でガッチリと掴み、動かない様に固定される。

 


 ぇ、うぇぇ!? ここでヘッドバット(頭突き)!? 君どんな神経してんの!?

 僕はこれから来るであろう痛みと恐怖で慌てて眼を瞑った。


「っ!」


 衝撃という衝撃は来なかった。


 だが、衝撃とは違い、別に柔らかい物が口に当たった。

 不意に目を開けると、目の前に縁の顔が在った。

 何やらギュッと目を瞑って必死そうだ。



 唇を押しあてられていた。


 キス、というにはあまりにもぎこちなくて。

 無理矢理、思いっきり、只強く押し付けた感じで。

 僕の勝手なイメージだけれど、優しいイメージのキスとは何か違った。


 というか、絶対に頭突きだと思ったのだけれど、あまりにも予想外で頭が周らない。

 

 僕は何が何だか解らず、足を縺れさせ、後ろへと落ちる。

 つまりは倒れて行っているわけだけれど。


 そのまま縁と一緒に倒れて行き。


 頭を思いっきりブツけた。


「んンむっ!?」

 悲痛の叫びは塞がれているわけで、変な声が出た。

 痛い! 痛いのとわけわかんないので、取り合えず、痛い!!

 というか、押し倒された状態になっている。


「ひむ!?」

 縁も何故か妙な声を挙げた。

 思いっきり瞑っていた瞳は大きく見開かれ、顔は耳まで真っ赤なのが良く見える。

 妙な声を挙げた瞬間、縁はスグに唇を離した。

 唇を放し、何故縁が変な声を挙げたのかスグに解る。


 何というか……アレだ。

 頭をブツけた際に舌を出してしまった様で……。

 いや、あの……舌を入れてしまったわけだ。


 流石にまずかったか、と僕は焦る。

 ダラダラと色々な汗が流れる。

 不可抗力で僕にそんなつもりは全くと言って良いほどに無いのだけど。

 ゆっくりと立ち上がり、しゃがみ込んでいる縁に目をやる。

 目を思いっきり瞑り、両手で口を必死な感じで塞いでいた。

 ゆっくりと目を開くと、ギロッと僕を睨みつけた。


「……」


「……」

 無言で間が空く。

 こ! 怖い!!


「…………変態」


「…………」

 何も言い返せません。

 いや、でもね? でもね!?


「いきなりキスしてくんのもどうかと思うよ!?」

 僕の言葉にまたまた縁は目を見開く。


「う、うるさい! うるさい! うるさい!!」

 そう言ってブンブンと手を振っている。

 ……いやー、まぁ、可愛いんだけどさ……。


「あ、アタシ言葉じゃなんも言えないから、体が勝手に動いたって言うか、何て言うか……」

 最後が何かゴニョゴニョしているが、つまりは口よりも手が出る縁らしいっちゃらしい。

 ……体が先に動いてしまったらしい。




 僕は、大きくため息を吐いた。


 どうやら、僕たちは最後まで上手い事『決まらない』らしい。

 僕たちらしいっちゃ、らしいわけだけど。


 最後の最後まで。


 僕達はロマンチックの欠片も無い様だ。


「……そろそろもどろっか」

 サクやミホが来る前に戻っておいた方が良い気がした。

 今の状態を見られたら何を言われるか解ったもんじゃない。


「そ、そだね」

 縁はそう言うも、僕の目を見ようとはしない。

 君は……自分でやっといて……後の事は考えてないらしい。


「……行こう」

 僕は呆れつつも、手をさしのばす。

 俯く縁に。

 自己紹介をし合った縁がさしのばした様に。

 暗い路地で暴走する縁に僕が手をさしのばした様に。


 手を出した。


「―ッ」

 縁は、躊躇無く手を取る。


「うん、行こう」

 僕たちは肩を並べて歩き出した。

 お互い目線をあわせることはしないけど、手の暖かい感触がしっかりと伝わっている。

 縁は強く、絶対に離さないと表現するように思いっきり握っていた。


 首から下がるロザリオが胸の上で揺れる。

 太陽の光に当てられ、強く強く光って。

 中央の水晶に入っていた小さな花弁が目に付いた。

 頭の良い僕はその花が何なのかスグに解った。

 そして、クスっと小さく笑ってしまう。


「何よ」

 訝しそうに、縁が声を零す。

 勝手に笑った僕が気味悪かったのかもしれない。


「いや、ちょっとね?」


 君知ったら怒りそうだし、言わない。

 その花弁の花が、あまりにも君にピッタリで。


 花の名前は『薔薇』


 意地っ張りな、君らしいよ。


 僕は、薔薇の花言葉を思い出そうとしていた。

 

 何だったかなー?


 きっと、花言葉も君にピッタリなんだと思うよ。

自分にとっての最高の人物に出会えるのは中々無い事だと思います。

しかし、それでも生きていれば、必ず出会えます。

友でも、恋人でも、動物でも。

その出会いを大切にして下さい。


そんな大切な私の友の一人が、忙しすぎてオカシクなりそうになっています。


夢を追うお前は最高だよ。

だけど、お願いだから壊れないでくれ。

辛かったら電話をして来て欲しい、お前は一人じゃ無いんだって。

何があっても私はお前を見捨てないよ。


……って、オカシクなりかけていた友人にメールを送った。


友人「きめーよボケww」

返信


私「何だとコラw」

送信


友人「……ありがとう」


私「おう」


 大切な物が出来たら、死ぬ気でソレを守ろうとするのも、きっと私達人間だと私は思いたいです。


明日、明後日と連続で更新する事を約束します(多分)。


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