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その176.会いたくて、死ぬほど逢いたくて






 ドアの開く音が聞こえた。


 僕は慌てドアの方を向いた。

 やっぱり嘘だったんだ!

 そこに縁が居て、僕に意地っ張りな表情を向けてるんだ!



 だけど。

 そこに居たのは縁じゃ無かった。

 僕達を見て目を丸くしている志保ちゃんが居た。

 泣き顔でボロボロのまま座り込んでいる僕と、目を伏せるサクが、僕を見下ろす形が見えているだろう。

 そんな状況を志保ちゃんは目の当たりにして、流石に直ぐに状況は理解できないだろう。

 

 縁じゃなかった……。

 そんな……。


 

 視線を上げれない。

 俯く事しか……出来ない。


「馬鹿野郎……」

 サクの声が上から降ってくる。


「テメェー……悲しいのはお前だけじゃないんだよ」

 その声が、震えてる気がした。


「俯いてんじゃねーよ!! 終わったんだよ!! もう会えねーんだよ!! だけどな……だけどなァ!!」

 今度は僕の胸倉を掴まれたかと思うと、思いっきり持ち上げられた。

 眼の前のサクの瞳が僕を睨みつける。


「アイツはテメーがそんな風になる為に体張ったんじゃねーんだヨ!! アイツの事思うなら顔を挙げろよ!! いつものテメーで居ろよ!! アイツが望んだのはソレだろーがァァ!!」

 サクの声が、叫び声が僕に降りかかる。

 サクが僕に手を出したのは多分コレが初めてだ。

 最初は驚いたが、僕は直ぐに目を逸らした。

 サクの目が、赤く腫れ上がっているのに気づいたからだ。


 悲しいのは、僕だけじゃないんだ……解ってる、解ってるけど……。


 僕は、大切な人間が消えても、冷静で居られる様な人間じゃないんだよ!


 過去に望んだ、母が、父が、姉が、僕が傷付いた時、何処までも冷静で、何処までも機械の様だったらどんなに良いか。

 そうだったらきっと僕はこんな思いをせずに済んだんだ。

 そんな嘘でしか無い冷静さを持とうとした僕だ。


 いつもの、僕でいられるわけが無い。


 暫くすると、サクは申し訳なさそうに僕の胸倉を優しく離した。


「悪い……」

 サクは、小さくそう零す。


 ……そんなに、僕は情けなく見えたのかな。

 心配させたみたいだ。


 だけど、今は、もう。

 何も考えられないんだ。


 ゴメンよサク……。




 縁の奴……本当に……。



 本当に死んだのか、な………………?



 正義の味方の最後は悲惨だと言われる。

 だけど、それでも本当の正義を貫こうとした彼女に、迷いを捨てた彼女に。


 幾らなんでも、あんまりじゃないのか、神様……。


 神様なんて考えた事も無かったのに僕は、はけ口を向けた。

 誰にも向けられない、悲しみと、怒りと、苦しみと、慰めを。

 きっとこの矛盾する様で似た感情を押し付けれるのは神様しか居ないと、僕は考えたのかもしれない。


 神様なんて、そんな矛盾した人間の考えの為に信仰されてるんだから。

 懺悔という言葉の意味が解った気がする。


 だけど、幾ら望んでも、怒っても、悲しんでも、縁が生き返る事は無いんだ。


 もう君はいないの?

 本当に、いないの?


 ボロボロボロボロと流れる涙。



 そこに、何時もの僕なんて居る筈も無くて。

 恥も外見も気にせず、僕はひたすら涙を流す。




 会いたくて、死ぬほど逢いたくて。

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