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その169.素直に素直に

 壁にもたれて居る縁を僕は見下ろしていた。

 縁はボロボロだった。

 泣き腫らした目に、殴られた様な痕を顔に残し両手や体中は血だらけで。

 縁が僕を見る目は、まるで信じられない物を見た様な目していた。


 ……おーい、何だその目はー……僕は幽霊じゃないぞー、生きてるぞー。



『どうして』


 声に出さずに、唇だけを動かして縁はそう言った。




 …………。



 どうしてもクソも、どこぞの馬鹿が馬鹿な事してるって聞いたから態々駆けつけたんでしょーが。

 っとに、馬鹿だな。

 ここまで馬鹿だとは思って無かったよ。

 いっぺん死んだ方がいいんじゃない?

 脳みそ使ってる? 頭のネジ飛んでんじゃないの?


 っほ! んとに! 馬鹿……。







 ……違う。




 僕は溢れ出そうな言葉を飲み込んだ。


 僕が言いたいのは、こんな事じゃない。

 変に意地張って人を悪く言うのは、クセみたいな物なんだ……。


 ゴメン。



「縁」


 僕が彼女を呼ぶ。

 ビクッと、体を揺らして縁は反応した。

 

 ……大丈夫だよ。


 座り込んでいる縁に一歩二歩近付く。


 縁は後ろに下がろうとする。

 しかし、後ろは壁だ。

 何逃げようとしてんの。


 大丈夫だから。


 縁の眼の前まで来ると、手を指し伸ばす。


「……迎えに、来たよ」


 ただ、小さくそう言った。

 縁は、目を見開き、呆然としたまま僕を見上げていた。

 手と僕を交互に見比べた後、震える唇を動かした。



「何でへーじが……」

 なんで? 理由なんて居るかよ。

「『助けるのに理由は要らない』って、君なら言いそうだけどね?」


 僕は簡単にそう言う。

 縁は暫し呆然とした後、小さく笑い出す。

 馬鹿にした様に……というよりも妙に自虐的なほどに。



「……あたしが? 確かに言いそうよね……馬鹿みたいに」


 そういうと、再び小さく笑い出す。

 縁の目に、いつもの光は無い。



「……らしくないね」

 僕の一言を言った瞬間、縁は笑うのを止めた。

 暗い、ギラついた目が、僕を見る。


「あたしらしいって何さ……?」

 小さくそう言う、声は小さくてもハッキリと怒りが在るのが解った。


「正義の味方で居るのがあたしらしいって事でしょ!? じゃあ正義じゃ無いあたしって何!? 何も無い!! あたしには……何も!!!!」


 捲くし立てる様に、縁は叫び散らす。

 こりゃ……重症だね。


 縁の目からボロボロと涙が零れる。


「何が……正義よ、ばっかみたい!! …う、うう……」

 あそこまで正義の信念を貫いていたのに。

 何が、君をそこまで変えた。



 ……変えたのは僕だ。

 そして、変わったのが僕だ。



 嗚咽を零しながら縁は涙を流す。


 いつのまにか。


 雨は止んでいた。



 涙を誤魔化す事は出来ない。

 ポロポロと泣きじゃくる彼女。


 隠す事無く、彼女は曝け出す。


「正義なんて馬鹿みたい……へーじの言う通り、只の自己満足、偽善」

 いつもの気高い彼女は居ない。

 いつも意地ばっかり張ってた彼女は居ない。




 ……僕も人の事は言えないけど、ね。




 ……泣きじゃくる彼女は、泣き止まない。

 只自分を馬鹿にして、自虐を繰り返す。


 素直、と言っていいか解らないけど。


「あたしなんて……死ねばいい、死ねばいいんだ……」


 差し伸べた手を引っ込めると、ガリガリと頭を無造作に掻いた。

 大きく溜息を吐いてから、僕はいつまでも自虐を続ける彼女に零す


「どうでもいいけどさ」


 その言葉で縁の自虐は止まった。



 妙に素直な縁に小さく苦笑してしまう。








「いい加減僕の好きな人の悪口止めてくんない?」







「……え?」

 縁がそこで顔を挙げた。

 涙でグチャグチャになった顔は、驚いた表情のまま僕を見つめる。

 僕はその大きな瞳を見つめ返す。


 ……ん、遠まわしに言っても、解んないかナ。


 君がその気なら。



 素直になってやろーじゃないの。

サブタイトルを『デレ』にするか、今のタイトルにするか考えた末。。。こっちになりました。

深読みで『デレ』ってのも良いと思ったんですが……ねぇ? 何かギャグっぽくなるかなぁと思いコチラのタイトルに。




ヤホーでこの小説のタイトルを何となくノリでやってみると何とビックリ!


ネット小説更新チェックなるサイトのコメディー部門で5位!!

いや〜……嬉しかったな〜〜><

小説家になろう、のサイトの中からのランキングのようですが、とてもやる気になりました!

やっぱこういうのってすっごく嬉しいですね〜^^


皆様のお陰です、本当ありがとうございますm(−−)m

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