その163. 届かないのは知ってるよ。 だけど届かせたかったら手を伸ばすまで
容赦なく雨が僕に突き刺さる。
僕は壁を伝いながら進む。
足がフラ付いてまともに立てなくなったのだ。
顔が火照る、風邪でも引いただろうか。
傷口が滲みる。
…………どんだけ踏ん張っても、身体がボロボロには変わらないらしい。
限界が近いのかもしれない。
いや、既に限界は超えている。
限界『以上』が近いのだ。
それでも、僕は足を止めない。
きっと足が使い物にならなくなったら僕は這ってでも前に進むだろう。
もう、二度と下は向かない。
下には地面しか無い、地面は何も表情を変えない。
だけど、上を向けば空が在る。
空は泣いたり笑ったりして飽きさせない。
空を……縁を見たい。
あの子に会いたい。
太陽の様に笑って、雨の様に悲しむ君に。
足が縺れ扱けてしまった。
バシャァ! っと派手に水が飛び散る。
僕は小さく舌打ちをする。
こんな事で僕の心が折れる事は無い。
直ぐに立ち上がろうと壁に手を掛けた。
上手く壁が引っかかるず、再び水溜りの中に倒れる。
先程の水飛沫程では無いが、小さな水飛沫が飛ぶ。
追い討ちの様に雨が僕の体中に突き刺さる。
……いかん、今のは少し堪えた。
負けるもんか。
歯を食い縛って再び壁に手を掛ける。
その時、僕を戒める様に降りかかっていた雨が消えた。
何事かと見上げた先に、円で広がるビニールの布が見えた。
誰かが僕に傘を指してくれたのだ。
傘を持ったその人は、僕の良く知る人物だった。
「ミホ……」
僕は掠れた声で彼女の名を呼ぶ。
あまりにも弱った声が出たのに自分で驚いてしまった。
これじゃまるで助けを求めてるみたいじゃないか。
……馬鹿馬鹿しい。
僕は無意識に薄く笑みを作っていた。
子供が強がるかのように。
ミホの顔にいつもの笑顔は無く、本当に心配する様に僕を見ていた。
……そんな顔も出来るんだ。
君は何時も笑ってるイメージが強いから、そういう顔を見ると妙な気分になるよ。
ミホはずぶ濡れの僕に、自分が濡れるのも省みず肩を貸して立ち上がらせてくれた。
ミホ……君、結構良い奴だったんだ。
僕の中で性悪女の株が少しだけ上がった。
路地の中を動き回っていると、縁とサクでは無く、居る筈の無い人物を見つけた。
包帯が痛々しく、包帯の部分が赤く染まっていた。
その状態の上で雨にずぶ濡れで在った。
雨が降ると同時に近くの店で大きめの傘を買った。
どうせあの兄弟の事だから傘は持っていないだろうと踏んだのだ。
しかし、そこまで考えていた私も、へーじを見つける事は予想していなかった。
暫し本当にへーじかと疑ってしまい、呆然とその人物を見つめていた。
その人物は、フラフラだが壁を伝い必死で前に進もうとしていた。
私は一目でへーじだと解ったのに筈なのに、居る筈が無いと考え直してしまったのだ。
居て欲しくない、というのが本音だ。
しかし、その後ろ姿は見間違う筈が無い。
何度も隠れて見つめたその後姿を、今更間違えるわけが無い……。
心の中で。
その人物で無い事を祈った。
これ以上無理をして欲しく無かったから。
その人物で無い事を祈った。
もし貴方なら、誰を探してここまで来たか解るから。
人がいないと寂しいと言う
人がいるとメンドクサイと言う
人と触れる合う事で、弱くなる事と強くなる事、二つを手に入れるそうです。
ならば触れ合わなければどうなるのでしょうか。
弱くなる事も、強くなる事も無いのでしょう。
どっちが良いかなんてある筈も無い。
しかぁし!!!
今は一人が良いんですー! 今は引き篭もりたいんですー! 友達や先輩とのも付き合いも、テストも全部ヤダヤダヤダー!!!
小説書く時間をくれェェェェェ!!!
……は!? つい取り乱してしまいました。。
次回も、宜しくね☆