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その161.……僕らしくない

 雲行きが怪しくなるのを見て舌打ちする。


 包帯だらけで出てきてしまったからか、周りの人間の視線を感じる。


 いつもならもう少し足には自身があるのだが……流石に体が思うように動かない。

 縺れる様な足だが、それでも必死に前に出ようとする。

 残念ながら今の僕の速度は比喩的にいえば亀よりも遅いんじゃなかろーか。


 ポツポツと振り出す雨が僕を襲う。

 次第に強くなるそれは、包帯や服に染み付き体が鉛の様に重くなる。

 傘を取り出す人や早足になる人達。

 

 僕はどちらも出来ない。

 

 傘を持っているわけが無いからだ。

 これ以上のスピードを出せるならとうに出しているからだ。

 

 まわりの僕を変人とでも見るかの様な目は一層強くなる。


 何してんだコイツ。

 何で必死になってんの?

 変なの。


 聞こえない声が、僕の心を貫く。

 


 ああ……僕が一番馬鹿らしいと思ってたよ。

 こういうの。

 

 だけど、不思議と今の僕はそんな視線を気にする事は無かった。

 気にする元気も無かった、という方が解り易いかもしれない。

 そして、それよりも。

 今の僕には縁の事しか考えられないらしい。


 雨に濡れながらも僕は前に進む。


 顔を挙げる気力は無い。

 下を向いたまま必死に足を動かしていた。


 降りかかる雨がうっとうしくてイライラする。


 肩に衝撃が掛かった。

 誰かにぶつかったのは直ぐに解ったが、今の僕は、少しの衝撃でも足を踏ん張れない様で……。

 フラフラの僕はそのまま固いコンクリートに尻餅を付いてしまった。

 

 パンツ越しにまで水が染み渡ったの解った。

 その瞬間に、僕のイライラは更に急上昇。


 クッソ! とことんついてない!


 僕が立ち上がろうとするよりも早く無理矢理立ち上がらせられた。

 誰かが僕の胸倉を掴み引き上げたのだ。 

 その僕を持ち上げた力には明らかな怒りが存在していた。

 顔を挙げると、如何にもガラの悪そうな男がそこに。

 僕がぶつかった相手だという事は直ぐに解った。

 

「テメーのせいで服が濡れたがろーが!!」

 そう言うと男は力任せに僕を突き放す。

 今度は水溜りに尻餅を付いた。

 

 クソ、ズブ濡れだ。


 舌打ちをしようとしたと同時に強い痛みが胸に走る。

 

 ッ痛……。

 傷口が……開いたか?

 

 だが、男はそんな事を気にさせてくれる様子も無い。

 その男の後ろから、更にガラの悪そうな男達が出てくる。


「おい、どーしたよぉ?」


「コイツが俺にぶつかりやがってよぉ」



 ほんっとーに ついてない


 男を思いっきり睨みつける。


「あ!? んだその目はヨォー!!」


 お前らは、いつもそうだな。

 縁じゃ無くてもブン殴りたくなるわ!!


「どけ! クズ共!! お前らになんざ構ってる暇はねーんだよ!!」

 男に向けて怒鳴り付ける。

 感情の赴くままに吐き捨てる。 


 消えろ! 今忙しーんだよ!! 馬鹿! アホ! 空気読め!

 

 言いたい悪態は山ほどあるのだが、口は一つしか無いので結局全部は言えないわけで。

 心の中で言葉は止まった。


  


「ああ!? んだとコラァ!」


 ガラの悪い男共は、僕を囲むように動き出す。

 クソが、群れてでしか何も出来ないクズ共が!


 心の中で殺意満点に悪態を付いていた時、ッハと我に返る。

 

 今の状況はあまりにも、マズイ。

 

 体がまともに動けば、何とか全力疾走で逃げるのだが、残念ながら今の僕の最高速度は先程も言った様に亀より遅い。


 簡単に言うと走って逃げれないわけで、ならば得意の口で状況を打開するのが一番なのだが……。

 先程思いっきり敵意を向けた言い方をしてしまい、最早僕の言葉に耳を貸すとは思えない。

 低脳のコイツ等は感情に任せて僕に暴力を振るう気だろう。

 

 ……感情で動くなんざ、知能が無いのか?


 心の中で馬鹿にした後、ふと気づく。


 先程感情に任せて男共を罵倒したばかりじゃないか。

 知能が無い様な事をしたから状況を打破するのが難しくなったんだろ。


 ……知能が無いのは僕だ。

 いつもの僕らしくない。



 いつもの様に、無意識に冷静な考えを取る事が出来ない。


 頭の中は、あの子しか考えられない。

 早く縁を見つけたい気持ちが強い。


 なんでだろう……


 なんか、僕はおかしい。


 それとも変わったのかな?



 男達が呆然としている僕を怒鳴り散らしている。

 

 今、考える事が出来ない僕には何も出来ない。

 傷口から血が滲んでいた。

 それも結構な量だ。 


 考える事が出来ない理由に、出血のし過ぎってのもあるのかな……と、ボンヤリ考えていた。


 男が再び僕の胸倉を掴んだ。


 何故だか、最初に縁に会った時を思い出した。


 こんな雨じゃなくて、粉雪の舞う、大晦日だったっけ……。


 男が拳を振りかぶる。

 ああ、殴られる。

 そう思っても、僕は目を瞑る事もしなかった。


 こういう時、あの馬鹿は助けに来るんだろうな。

 ……あ、違った。僕が助けに行くんだった。



 パァン!


 破裂音が雨の中に響き渡る。


 だが、それは僕を殴った音では無かった。


 眼の前で、拳は止まっていた。

 誰かの掌が右から割り込んで来ると、拳を止めたのだ。


 一瞬、縁かと思ったが、あの馬鹿が今ここに居る筈も無い。

 そして、僕を守った右手は綺麗な女性の手では無く、男の手だった。


 突然の事に、ぼんやりとしていた頭が動き出した。

 割り込んだ右側から、あまり好まない臭いがする。

 大人の臭いと言えば聞こえは良いが、健康から掛け離れたタバコの臭いは、僕は好きじゃない。

 白い煙が風に乗り、僕の顔に掛かる。

 その腹の立つ様なワザとらしい煙を掛けるやり方に、直ぐに誰だか察した。

更新遅くてゴメンナサイm(−−)m

ブログの方で小説が何処まで進んだか、いつ更新するか、とか書いて行きたいのでよかったらど〜ぞー^^


ブログ名【人生の攻略本が欲しいですorz】

http://wanwanoukoku.blog.shinobi.jp/


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