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その156.いつまで経っても、あの馬鹿は救えねーガキのまんまだ

 ちと昔の話なんだけどよ……。


 あいつが俺の家に来たのは俺がまだまだガキだった頃だ。


 そう、アイツは本物の妹じゃねぇ。


 玄関で親父達と話しをしているのを陰から見ていた。

 アイツは妙に自信満々で、金持ち臭いスーツを着ているオッサンの隣に立っていた。

 それが、俺が始めてアイツを見た瞬間だった。


 泣き腫らした目と、赤く腫れている頬が痛々しかった。

 ガキな俺が状況を理解出来るわけも無い。


 所々聞こえる親達の会話で、オッサンとアイツが親子なのが解った。


 だけどよ、あのオッサンは……!

 泣いている縁の手を繋いでねーんだよ……。

 俺の知ってる親子ってのは、

 泣いてる自分のガキの手を無理矢理でも握るもんだって思ってた。

 

 それを見ただけで、このオッサンが最低な野郎だってー事は解ったよ。


 オッサンは俺の親と一通りの話をした後、一人で玄関から出ようとした。

 慌てて後ろを追おうとした縁の目の前で、ドアは閉じられた。

 

 そん時のアイツの絶句した顔はよく覚えてる。


 大声では泣かなかったんだ。

 ただ啜り泣きを繰り返して居た。

 玄関に立ち尽くす、痛々しい後ろ姿を俺は見ていた。


 それから、アイツは養子として、俺の妹として家に住む事になった。

 最初アイツは、受け入れようとせずに、

 喋る事もしないアイツだったけどよ。

 そんときゃ俺と親で一生懸命立ち直らせようとしたよ。


 ミナミナは黙って俺の話しを聞いていた。

 

 俺はチラッと眠っているへーじを横目で見る


 お前も、聞いてくれてるよな?

 ……話はこっからだからよ。


 ある程度話すようになってもアイツが顔を挙げる事は無かった。


 俺はそんなアイツでも出来るだけ一緒にいようとした。


 ガキだったからよ、難しー事はわかんねーけどさ。

 アイツが顔を挙げてるのが見たかったって言う単純な理由だったっけ。


 ガキの時にさ、戦隊物とか、仮面ライダーとかさ、見てたろ?


 俺の言葉にずっと真剣な表情で聞いていたミナミナが首を傾げた。

 

 首傾げんなって、男のガキってのは大概正義の味方とかに憧れるんだよ。

 女のガキがお嫁さん、とか言ってままごとするみたいによ。


 嫌がるアイツと無理矢理に毎週見ていた。


 嫌がっていたアイツも、毎週見る内に楽しみになったみたいでさ。


 その日になると俺の腕引っ張ってテレビの前に座らせるんだよ。

 アイツ見たいクセにいつまで経ってもチャンネルの変え方解ンねーんだよ。

 笑っちゃうだろ? ……あん時はまだ可愛いかったよ。

 


 …………子供の頃にテレビの真似事とか、するだろ?

 それでさ、ヒーローの真似事をアイツとしてた。

 外に出て、二人で暴れまわった。

 そん時には、アイツは顔を挙げてたよ。

 笑顔で、一緒に遊びまわった。


 ヒーローの真似事をした。

 人を助けたり、イジメっ子を倒したり。


 お礼を言われた時の縁の顔はそりゃー嬉しそうだったっけ。


 もう、前の親父の事なんて、忘れてると思ってた。


 でも違った。


 アイツはな。

 自分が悪い子だったから捨てられたと思ってんだよ。

 だから良い子になったら、前の親父が帰ってくると思ってやがるんだよ。

 

 正義なんて形だけだ。


 アイツは、小学校の高学年になってもヒーローゴッコを止めなかった。

 俺が幾ら止めてもあいつはやめなかった。


 良い子になりたいとかいう、

 ガキ臭い事の為だけに正義を行ってやがるんだ。


 そして、良い事をしたら許してくれると、

 親に怒られて機嫌を直す為に家事を手伝ったり……

 アイツの正義は、そんなもんなんだよ。


 何処までもガキだ。


 アイツは、体だけ大人になったようなガキなんだよ。

 今、アイツが正義を行うのは、

 ガキの頃からの良い子になりたいってー思って繰り返すのが、今の年でも続いてるってだけだ。


 だから俺はアイツが嫌いなんだよ。

 どこまでも救えねーガキだ。


 何でアイツが今暴れてるかって?


 へーじが自分のせいで倒れたと思ってやがんだよ。

 そんで、そんな自分が許せないから。

 許して欲しくて、アイツは口でほざいてる正義を行ってんだ。


 誰かが、アイツを許すまで、アイツは暴れまわるだろうよ。



 必死になり過ぎて、頭がまわらねーのか知らないけどよ。

 ……アイツは今、オカシクなってる。

 自分でも本当は解ってる筈だ。

 今自分がやっている事が意味の無い事だってことはよ。



 本当。



 救えねェ……。

今回は少し書き方を変えてみました。


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