その153.朝倉(あさくら) 坪侍(へいじ)
ヒーローは僕に手を差し伸べた。
熱く、光を放ち、何処までも明るく、闇を照らす太陽の様な子。
時々曇りが掛かるけど、それでも何時かは光が照らす。
僕がその手を振り払った。
一度でもどん底に落ちた僕が、『この子』の手を取るのを躊躇ったのだ。
今なら、僕は『あの子』の手を取れる。
少し遅いかな。
いや、きっと手遅れじゃないよね。
でも、今、君は僕に手を差し出すかな。
『今は』僕に手を差し出すのは難しいかもね。
だったら無理矢理取ってやる。
今度は僕が手を指し伸ばす。
その手を思いっきり引っ張ってやる。
僕は君みたいに手を取るのを待ってなんかいないよ。
それで言ってやるんだ。
『正義を教えれるもんなら教えてみろ、暴力女』
って。
『僕』が僕の思いを先に言った。
『僕』が薄っすらと笑った気がした。
『時間は在るんだ、じっくりと考えると良いよ』
その言葉の意図は掴めない。
お前の言ってる意味も解んないし、結局お前は僕の味方なのか?
『答えてやるよ』
僕っぽい生意気で捻くれた様な言い方。
『一つは、アンタの傷は並大抵のもんじゃないし、今死ぬか生きるかの瀬戸際だからさ』
「え゛!!! マジィ!?」
つい大声を出してしまった。
え、うっそん、僕普通に大丈夫なんだと思ってたよ。
『ってーか僕に会うのって、よっぽどヤバイ状況じゃ無いと会えないから』
「……まじで」
『マジもマジ、大マジ』
てか以前の縁のパンチで僕は死に掛けの状況だったわけだ。
今更だが、縁のパンチが殺人的な威力なのが良く解ったよ……。
『っつーわけ、君が生き残ったとしても、物理的に回復するのは大分先だから、考える時間はあるんだよ』
なんっつー……怖い言い方するんだこの馬鹿。
『しっかり考えて、君がどうすべきか決めればいい』
「……もう一つの方も答えろアホ」
もう一つの方。
お前は僕の味方か?
『僕』なのに僕を殺そうとしたお前は。
少し間を空けて『僕』が口を開く。
『……僕は君だよ』
ああ、そうだね。
『君が自分を殺したいと思うなら、僕は君を殺す』
その言葉にはしっかりと殺意を込められていた。
背筋が寒くなる。
『だけど』
『僕』がまた、間を空ける。
『君が生きる事を望むなら僕は君を生かしたい』
はっきりと『僕』は言った。
よくは見えないけど、きっと『僕』は僕をまっすぐ見ていたのだろう。
……そういう事か。
君は僕なんだな、解ったよ。
僕が死ぬ事を望めば、僕を殺し、僕が生きる事を望めば、僕を生かす。
君は、僕なんだ。
死ぬ度胸も無いクセに、死ぬ事を望んでいた。
高校に入って、最高の人間に出会っても僕は、まだ心の闇を持っていたんだ。
そんな事思っていない筈だったのに。
どこかで死ぬ事を望んでいた。
だから変わりに殺そうとてくれたんだろう?
…………君は、僕の一番の味方だったんだな。
気づかなかったよ。
「ありがとう」
そう言って僕は笑いかけた。
自分で自分にお礼を言うってのも変な気分だけど。
それでも思いを込めて言えた気がする。
『僕』も笑った。
灰色の世界が崩れていく。
な、なんだ!? いきなり!?
『じっくり考えなよ』
光り輝く『僕』がゆっくりと薄れて行って居るのに気づいた。
「な、何? どったの?」
いまいち理解が出来ない。
何が起こったんだ?
『別に、ただ僕は消えるだけ』
何で消えるんだろう。
『何? ずっと僕と居たいの? なんというナルシスト(笑)』
うぜぇ!!
男はクスッと小さく笑った。
『……もう会えないと良いね』
「こちらこそ願い下げだバカヤロー」
……始めて自分と向き合ったのに。
それなのに、もうお別れだ。
『朝倉 坪侍』
『僕』が僕の名前をフルネームで呼んだ。
名前を呼ばれたのは久しぶりかな。
『頑張れよ……』
その一言が芯に響いた気がした。
何か言おうとした、だが言えなかった。
灰色の世界と、『僕』は、消え去ったから。
とうとうへーじのフルネームが出ました。
ですが、今迄通り『へーじ』は『へーじ』という書き方で行かせて頂きます。
かたっくるしい名前よりも、『へーじ』の方が呼び易くないですか?(笑)
へーじの世界はここで終了でございます。
次から展開が発展する様にがんばりたいです。
皆さんは逃げた事―ありますか?
無い人も良し、有る人も良し、
ちなみに私は……。
友達のアイスの当たり棒を勝手にパクリました!!
欲しかったんだから仕方無いじゃない(笑)
感性は人それぞれでございます。
しょうもない事でも、大きな事でも、逃げたという本能的概念は変わらないんでないでしょーか。
いえ、私もよく知りませんがww
何が言いたいかとゆーと……私は逃げる事がいけないとは思いません。
立ち向かう事も、逃げる事も、どちらもが正解だと思います。
人生行動したら過去には戻れませんからねー(ーー;)
だからこそ、好きなように頑張りましょう(適当)
だけど、後で後悔する気がするなら、後悔しない選択肢を選ぶ事にこしたことはありませんけどね?w
偉そうな作者でしたー(^p^)
ぶっちゃけ何かカッコイイ事が言いたかっただけですサーセンww