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その146.壊す力を持つ小さな少女

 止めようと腕を掴む警察達をも振り払い、

 縁ちゃんは拳を振り下ろしていた。

 血で真っ赤に染まる拳と返り血に寒気を覚える。


 一発で鼻を折る程の威力を何度も叩き付けられているのだ。

 

 正直にゾッとする。


 生きているかさえも疑わしい。

 男の指がピクピクと痙攣しているのが見え、

 それがまだ息がある事を示す様で、幸いと言えば幸いだろう。


 サクは何処に居るか解らない。

 私自身が縁ちゃんを止めれる分けが無い。

 私の視線はへーじの方向を向いた。 



 警察達は縁ちゃんの対処で忙しいらしく、私の事は見ていない。

 つまりは、死に掛けていると思われるへーじもほったらかしなのだろう。


 

 直ぐにへーじの所に着く事が出来た。


 近くで見ると傷が多い事が解る。

 銀行内で何があったのかは解らないが……あの貧弱男が死ぬ気で頑張った事だけは解った。


 数々の傷よりも眼に付くのが、胸から流れ出る大量の血。

 


 酷い……コンクリートの床一面に、真っ赤に広がっている。



 外は寒い為、上着を何枚か重ねて居た私は、

 躊躇わずに上着を脱ぐと、へーじの撃たれた部分に巻くと思いっきり縛った。

 こんな事で止血になるかどうかは解らないが、

 何もしないよりかはマシだと思う。

 

 絶対にへーじを死なせたくない。

 いつも冷静な方だと思っていた私は、

 自分が動揺しているのに気づいた。

 手を握り締め、震えを抑えようとする。


 視線を再び縁ちゃんに向けた。

 必死に止めようとする警察達だが、縁ちゃんの力に翻弄されている。

 それでも警察が邪魔臭いのか、縁ちゃんは警察達を睨みつける。


「離せッ!! 邪魔よ!!」

 縁ちゃんの叫び声と、血走った瞳に警察達は後ずさる。

 血だらけの姿と、血走ったその眼を見れば、誰でも恐怖を覚えるだろう。



 そんな警察達を確認した後、視線は気絶している男の方へ。

 男の顔は最早原型を留めていない。

 男の黒い覆面が血だらけで真っ赤になっている。



 男の状態が見えていないのか、それともまだ許さないのか……


 縁ちゃんはやめない。


 そのまま縁ちゃんは再び拳を振り上げた。





 しかし、その拳は振り下ろされる事は無かった。

 



 サクが縁ちゃんの腕を掴んでいたのだ。



 後ろから周り込んでいたのだろうか?


 縁ちゃんは再び視線を上げる。

 警察達を睨んだように、サクを睨みつける。


 兄を見る様な目では無かった。


「……離せ」


「誰が離すか」


 二人の兄妹は睨み合う。



「アンタも見てたでしょ……」

 音がする程に、縁ちゃんが歯を食い縛る。


「コイツは! へ、へーじを撃ったんだ!! 悪党だ!! 殺してやる……絶対に! 絶対に!!」

 まるで駄々を捏ねる子供の様に、自分の行動が正しい事を認めて欲しい様な言い方だった。

 その姿に、いつもの美しさも、正義も無い。


 サクは何も言わずに、掴んでいた腕を離す。

 そして、即座に縁ちゃんの胸倉を掴むと、

 

 持ち上げた。

 

 簡単に縁ちゃんは持ち上がっていた。

 縁ちゃんは慌てた表情を見せ、大声を張り上げる。


「は、離せ!!」


 サクは縁ちゃんを睨みつける。

 

 今迄に見た事が無い程に怒りを込めた表情だった。

 

 縁ちゃんもその表情を見て、驚いた表情を見せて押し黙った。

 縁ちゃん自身も見た事が無いのかもしれない。


「お前が……」

 サクはそこで区切ると、思いっきり息を吸っていた。


「お前が向かうのそっちじゃねーだろうがァッッッ!!!!」

 サクの声がビリビリと響き渡る。


「へーじは誰の為に倒れてやがる! アイツが求めるのは敵討ちか!? ふざけるな!! へーじを思うなら、へーじに向かえよ! 今血だらけで死に掛けてるアイツによォ!!」


「だ、だって……こ、コイツが」

 弁解をする様に縁ちゃんは声を漏らす。


「黙れ! オマエは自己満足でこの男を殺そうとしてんだよ! テメェの下らねェ正義のせいか!? へーじよりも、こんな野郎を殺す事を優先するのかオマエはァァッ!!!」

 サクは叫び終えると、少しの沈黙が流れた。

 その沈黙を破ったのは、少女の苦痛を込めた声。

 小さく、嗚咽が繰り返される。

 その声は、サクが掴んでいる縁ちゃんから聞こえる。

 

 サクは縁ちゃんを離した。


 ヨロヨロと縁ちゃんは後ずさる。

 視線は、サクでも、覆面の男でも無い。

 

 

 へーじを見ていた。


「へーじ……」

 か細い女の子の声。

 先程まで覆面の男を殺そうとしていた少女には見えない。

 嗚咽を漏らし、ただ、ただ。


「へーじ……へーじぃ……」

 

 と、へーじの名を繰り返して居た。

 

 子供の様にしゃくり上げ、血だらけの手でポロポロと流れる涙を拭っていた。


 サクのお陰で、縁ちゃんは我に返ってくれた。

 だけど……あまりにも縁ちゃんが哀れに、空しく、小さな子供の様だった。

感想の返信が遅くてゴメンナサイィィ!!!

早いうちに返すのでお許しください。。。

そして今回のは後から題名を変えるやもしれません。。。何か納得が・・・w

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