その142.恐怖の戦いは終わった……終わったんだ!
「取り合えずさ……手、貸してくんないか、な……」
へーじの言葉で、ハッとした。
改めてへーじを見ると、
あまりにも痛々しい姿をしていた。
アタシは言われるがままに、手を貸す。
フラフラしながらも、へーじはアタシの手を取って立ち上がる。
しかし立ち上がると、力尽きたかのように、そのままアタシに倒れてきた。
慌ててアタシは倒れて来たへーじを支える。
「へ、へーじ!?」
傍から見れば抱き合っている様にも見えなくも無いだろう。
顔が熱く火照るのが自分でも解る。
「ごめん、ちょっと疲れたわ……このまま肩貸してくんないかな」
へーじはアタシにもたれたまま、掠れた声を出した。
本当に疲れてるんだ……
赤い血で染まった右腕や髪の毛が物語っていた。
……戦ったんだ、あのへーじが。
何故そこまでしてくれたんだろう。
こう言っては何だが、あまりにもへーじらしくない。
だけど……。
今は、何も聞かないで置こう。
「へーじ……頑張ったね」
まるで子供を褒めるような言い方をしてしまった。
また馬鹿にされるかな、と思ったが違った。
「……だろ?」
と、へーじは顔を上げてアタシに悪戯っぽく笑い掛けてきた。
肩を貸しているのでへーじの顔がどうしても近くに在る状態だ。
不覚にも目の前の笑った顔に心臓が高鳴った気がした
……き、気のせい気のせい、うん、うん! 気のせいだから。
女の子に肩を貸す状態というのは、いささかカッコ悪い気がする。
しかし、今更そんな事は言ってられない。
立っているのもやっとの状態なんだ、こればっかりは仕方無い。
しかし、縁が来てくれて助かった。
八木が僕に集中していたお陰で、縁の存在に気づかなかったのもホッとした。
縁に肩を貸して貰いながら、八木に視線を向けた。
気絶している。
モロで縁の蹴りを頭に食らったんだ……無事な筈が無い。
もう一人の狂った覆面は床に大量の血を流しながら、ピクリとも動かなかった。
縁が目を逸らす。
頭を撃ち抜かれたんだ、多分即死だったのだろう。
二人の悪党を他所に、僕達は部屋を出た。
これで悪夢は終わりだ。
僕達は……助かったんだ!
広間まで来ると武装をした警察達が出迎えてくれた。
僕達は即座に保護されたけど……警察の今更感に呆れる。
外には救急車が来ているらしく、直ぐに病院に連れて行ってくれるらしい。
そう思うと、その準備の良さだけは褒めて置こう。
縁から離れると、警察の一人に肩を貸して貰った。
いつまでも女の子に肩を貸してる状態というのも気恥ずかしい物だ。
離れた縁は直ぐに僕の方を向く。
「……へーじ、大丈夫?」
本当に心配した様に縁は僕に言う。
いつもの強気な瞳はどうした。
心配そうに覗き込む二つの瞳に不覚にもときめいてしまう。
久しぶりに言う気がするが、縁は十分に魅力的な女性なわけで……安心してしまったからか、何故か縁を意識してしまっていた。
「……? へーじ顔が赤いよ? 」
「……う、うるさい」
慌ててそっぽを向いてしまう。
警察を促して一足先に玄関口へと足を踏み出した。
見なくても後ろで不思議そうに首を傾げる縁がイメージ出来た。
さっきまでの恐怖が嘘の様だ。
そうだ、これでいつもの日常に戻れたんだ。
警察共が広間に押し寄せてきやがった。
俺は物陰から忌々しく睨みつける。
散策されれば俺が見つかるのも時間の問題だ……。
だが、ただじゃ捕まらねェ!!!
あの女を殺してやる……殺してやる!!
幸い潰されたのは利き手とは逆の手だった。
未だに女の回し蹴りで食らった腹が痛む。
利き腕で拳銃を力いっぱい握り締めた。
憎しみを込めて。
殺す、この俺を舐めやがったあの女を!!
警察に紛れて女が見えた。
一人の警官がガキを連れて先に外に出たのが解った。
それに続こうと女も歩き出す。
警官共は慌しく銀行の奥へ消えていく。
邪魔者共は消えた。
女が外に出た所で狙い撃とう。
絶対に殺す!
あの女だけは殺す!!!
私「メロンパンが存在するのならスイカパンが存在しても良いと思います」
友人「え、あるよ?」
私「マジデ!?」