その135.最後の一人
爆発がした方に向かってもう数分は経った。
……あのガキ何処だァ?
他の奴等も見当たらなねェ、まさかあんなガキにやられたか?
は、まさか。
一つの部屋から薄っすらと煙が漏れていた。
ドアから漏れる煙を無視して、薄暗い中を覗き込む。
そこに、壁にもたれた獲物が居た。
……見ーーつけたァァ!
無意識に頬の笑みが割れる。
ガキは苦しそうに腕を抑えていた。
どうやら手負いの様だ。
丁度良い。
さぁぁぁぁてェ? どうやって殺そうかぁ?
フヒヒヒヒ!!!
「ダメだな……腕は上がらない……か」
撃たれた腕から血は止まらない。
布で縛り、無理矢理に血を止めた。
追いかけてきた人間は三人。
残りは一人。
一番狂ったような覆面だった。
武器はもう殆ど使い切った。
どーしようか。
隠れてやり過ごすか……?
いや、場所が完全に理解出来ていない所で隠れるのはまずい……か。
逃げ道を確保してこそ隠れる事に意味がある。
見つかって逃げれなかったら意味が無い。
まぁ、つまりは……今見つかったら終わりなわけだ。
行動あるのみ、かな。
背中を壁に預けたまま、そのまま立ち上がる。
カバンは捨てる。
最早中身の無い鞄を持っていても邪魔になるだけだ。
どちらにしても武器は無い。
逃げ回って、時間を少しでも稼ぐか。
片腕が動かない。
そんな状態でまともに逃げれるとは思っていない。
僕も……焼きが回ったな。
だけど、死ぬ気なんて無い。
最後まで抗ってやる。
馬鹿みたいに這ってでも、ボロ雑巾になってでも。
生き抜いてやる。
壁に手をかけて立ち上がると、それと同時に声がした。
一番聞きたくない、背筋が寒くなるような声。
「おいおいおい〜? どーしたよガキィィ……怪我でもしたかァ? フヒヒ!」
その声のした方向に首を回した。
そこに最後の三人目が居た。
覆面で表情は解らないが、覆面から除く目が楽しそうに笑っている。
片手には黒光りする拳銃を握る。
「アンタが最後だ、クズ」
只の強がりなのは解っている。
本当は……心の底から怖い。
喜んでいるこの男に腹が立った。
死んでもアンタみたいな奴に怯えを見せてたまるか!
僕の吐き捨てる台詞に、怒りを見せると思ったが、男は笑ったままだ。
「強がンなよガキィ? 一目で限界って解るぜオィィ……」
男はそう言うと、楽しそうにヒヒ、と小さく笑う。
……残念だが、男の言う通りだ。
男を警戒しながら脱出口を確認する。
入り口は二つ。
一つは男が立っている方向に、もう一つは前の覆面を倒した所。
選択肢は当然、前の覆面を倒した通路だ。
しかし、あっちは一直線の廊下。
拳銃を持っている覆面からしたら、直線状に、
しかも後ろを向いている僕は非常に撃ち易いだろう。
……クソ、さっさと移動しときゃ良かったな。
あまりにも場所が良くない。
「なんだァ? 逃げ道の確認かァ? おい」
その声で慌てて視線を男に向ける。
その僕の様子を見て何がおかしかったのか、男は楽しそうに笑い声を上げた。
男は僕を一瞥した後、何を思ったのか道を空けた。
……どういうつもりだ?
「おら、行けよ」
「……は?」
予想外の言葉だった。
どういうつもりだ……?
僕は何も言わず、男を睨みつける。
油断させる気か?
そんな僕を見て、男は楽しそうな声を上げる。
「逃がす気は無ェから安心しろよォ……俺に恐れて逃げ惑え、テメェは獲物だ! 俺がお前を殺しに追いかけてやる!! どーだァ!? いい考えだろぉ!? お前が怯える姿を想像するだけでゾクゾクゾクゾクゾクゾクゾクするんだよォォォ!!!!
お前の顔が最高に恐怖で歪んでから殺してやるよォ!!」
男は興奮した様に息を荒げ、最後まで言い切った。
そして、言い切った後、突如笑い声を挙げた。
「ィヒ!ィヒヒ!! イヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
狂ったように笑い声を挙げていた。
いや、『ように』じゃない。
コイツは狂っている。
慌てて狂った笑い声を挙げる男の横を通りドアをくぐった。
その先に、明るい廊下に出た。
直ぐに僕は廊下を走り出した。
部屋からまだ男の笑い声が聞こえる。
アイツは……もしかして三人の中で一番マズイ奴じゃないのか!?
武器はもう無い。
それにこっちは手負いだ。
まずは……今自分が何処に居るかを確認しよう!
男の狂った目が脳裏に焼き付いていた。
怖い……純粋に怖い!
無意識に縁が頭に浮かんだ。
知らずに縁に頼ろうとしているのが解った。
頼るな……! あの子はあの子で、きっと頑張ってるんだ。
僕は僕で、頑張らないと……!
友人Aが電話しろ電話しろと五月蝿いです^^;
まぁ……離れてても連絡が途絶えないのは嬉しいですねw
そしてどうでもいいですが今日階段から落ちました。うん、不幸には慣れてますw