その134.何も出来ない私達……今の二人の物語に、私達はいらない
多くの警察達が銀行の前に集まり、
いつでも突撃が出来るような体制を取っていた。
私の隣で苦々しそうにサクは銀行を睨んでいる。
信じるとは言ったものの、結局はへーじが危険であることには変わりない。
本当は直ぐにでも助けに行きたいだろうに、我慢してくれている。
その隣で、私の妹が心配そうに銀行を見つめていた。
志保の親友である縁ちゃんも捕まっているんだ、不安にもなる。
後ろでは他の多くの野次馬達が騒いでいる。
野次馬の中には、テレビ会社まで来ている。
私たちが家で見たのとは違うテレビだろうか……?。
「現在、立てこもっている銀行強盗の人数は未だに解ってはおりませんが、およそ、30近い人質の人数を確認致しました」
女性のキャスターが大きなカメラに向かって淡々と仕事をしていた。
「1発の銃声音の後、3発の銃声音が銀行内から聞こえた模様です」
女性キャスターの言葉に私の心は更に不安になる。
来たばかりの私じゃ状況を理解する事は出来ない。
サクに聞こうにも、サクの頭でわかりやすく説明してくれるとは思えない。
さり気無く女性キャスターの方を向くと、耳を傾ける。
状況が気になる、情報が欲しい。
へーじと縁ちゃんの状況が気になる。
「先程、銀行強盗の男が出てくると、4人の人質を撃った、逃亡用の車の用意をしろ、さもなくば人質の命は無い、等と繰り返し叫び警察との交渉を求めていたようです。依然人質の安否は確認出来ません」
……成る程、犯人は本気って事ね。
警察も中の様子が解らない以上は、下手に動けない。
なによりも、もし本当に人が撃たれていれば、4人という人数は多すぎる。
これ以上の被害は避けたいだろう。
だが、逆にこれ以上の被害が出れば待機している警察を突撃させる可能性がある。
曖昧な位置に警察を置き、コントロールしている様に思えるのは考えすぎだろうか?
立てこもっている敵は、思ったよりも頭が良い人間の様だ。
頭の良い人間が犯罪を起こす事程迷惑な事は無い。
……無事で居ると良いけど。
横目で女性キャスターを見ていると、
その女性キャスターの前のカメラが突然キャスターでは無く、銀行の方を向いた。
慌てたように女性キャスターも銀行の方を向く。
その瞬間、突然周りの騒がしさが一層増した。
何事か、と私も慌てて銀行の方に目を向けた。
そこには、銀行の入り口から、一斉に人が出てきていたのだ。
「ご覧下さい!! 人質となった人達が出てきました! 解放されたのでしょうか!?」
半ば興奮した様な女性キャスターの声が耳に入る。
私は、人質の中から慌ててへーじと縁を探した。
―いない。
出てきた人間は、警察に保護されて行く。
嬉しそうな表情をする人や、涙を流す人。
だが、へーじと縁が見当たらない。
「おい……へーじは何処だよ…」
動揺した様な声が横から聞こえた。
サクが何度も顔を動かし、へーじを探していた。
その表情には必死さが否めなかった。
一斉に出てきた人達とはワンテンポ遅れて
二人の人間に両肩を預けた男性が、ゆっくりと出てきた。
遠くからでもハッキリと解る腹部の赤い染みに寒気を覚えた。
自分の中で早鐘の様に心臓が鳴るのが解った。
もしかして……もしかして……!
いやな考えだけが脳裏を過ぎる。
4発分の銃声音……。
まさかその4発分の犠牲者になったのだろうか?
まさか……まさか!
私は必死で、二人を探す。
私としては珍しく、動揺していた。
「……お姉ちゃん」
突然、志保が私の手を握った。
その志保は私に何を伝えたいのか、ジッと私の瞳を見つめた。
今の私の表情は、泣きそうになっていたのかもしれない。
その瞳は、心配する様に、そして落ち着く様に言っている気がした。
そうだ、落ち着こう、私はサクにへーじを信じろと言った。
そう言った私が、最悪の事態を考えてどうする……!
私は、志保に向けて頷くと、手を離した。
そして、私は野次馬の中から情報を探し出そうと歩き出す。
大丈夫、きっと大丈夫!
情報は、直ぐに見つけた。
人質だったと思われる人達が大声で騒いでいたからだ。
その中でも、銀行員の制服を着た若い女性が必死に警察に懇願しているのが見えた。
「お願いです!! 中にはまだ2人子供が居るんです!!」
「落ち着いて話をして下さい」
冷静に対応しようとしている警察も、女性に押されているようだ。
子供……。
「あの子達のお陰で死人が出る事もありませんでした! あの子達のお陰で私たちは逃げ出す事が出来ました!! お願いです!! あの子達を……」
何となく、予想出来た。
へーじと縁は、戦ったんだ!
縁ちゃんはともかく、あのへーじが。
あの二人なら、確かに何とかしてくれるかもしれない……!
何故、そう思ったのか、大きな確信は無い。
確信は無いのに、無意識にそう思えたのだ。
「へーじ……」
後ろでサクの声が聞こえた。
いつのまにか私の後ろに来ていた。
話を聞いていたのならサクにも解っただろう。
へーじと縁がまだ中に居る事が。
今、私が出来る事は何も無い。
でも、へーじ達の所に向かおうとする気持ちは強くなる。
耐えろ……! 向かおうとするサクと、そして自分を必死に止めようと思う。
自らの気持ちとは裏腹に、別の気持ちも存在する。
今そこは『へーじ達の舞台』
私たちが出しゃばる所では無い。
私たちは待つしかない。
ただただ無事である事を祈る。
次から再び銀行内の話に戻ります(汗
今年に入る前に終わらしたいとか言ってたのが懐かしいですね(遠い目)
……喋るネタが無くなってきましたww
強いて言うなら男に迫られて困ってます(死
誰か助けてプリーズギブミー(TT)
追記 4発の銃声音に、?、と思われた方、最初の銀行員を撃った一発と、その117を参照すれば4発撃ったのが解ると思われます。
ちなみに、へーじと戦った覆面達の銃声音ではありません。
あれです、広い銀行内の奥の方の発砲ですので聞こえていない、という事にしておいてください(汗
解り難い表現をしてすいませんでしたー!orz




