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その133.へーじ、縁ちゃん……お願い無事で居て……!

「お、お姉ちゃん、早いよォ〜」

 少し離れた所から可愛らしい女の子の泣きそうな声が聞こえる。

 無論、そのかわいこちゃんの姉である私も可愛いのだが、今はそんな事を言ってる場合では無い。

 馬鹿との電話を切った後、私達は直ぐに家を出た。

 あの馬鹿の考えそうな事なんて直ぐに解る。

 妹の志保も最初は付いて来ていたが、やはり体力が無い分離れていってしまったのだ。

 本当は待ってあげたいけれど、今は急がせてもらう。

 へーじがいない以上、あの馬鹿を止める役割は私しかいない!


 走り出して結構が経ち、銀行は既に目前。

 多くの人だかりと、けたたましいサイレンの音で、場所は直ぐに解った。

 近づいて行くと、その耳に障るサイレンの音よりも大きな声が聞こえた。


「離せコラァ!! 俺がへーじを助けるんだッ!!」

 声の先に目をやると、予想通り、馬鹿が居た。

 数人の警官に羽交い絞めにされながらも、必死な抵抗をみせていた。

 大人の、しかも何人もの警官に抑えられなければ止まらない馬鹿サクの必死さに、少し関心してしまう。

 事を起こす前に、警官達が止めてくれたことにホッとする。


「お、お姉ちゃん、お兄さんは……?」

 私の直ぐ横に、追いついて来たらしい志保が居た。

 息を切らしながら膝に手を置いている。

 ……姉の私から見ても、なんか色っぽいわね。

 等と、非常時だというのに妙な事を考えてしまっていた。

 取り合えず、志保の言ったお兄さん……直訳すると、縁ちゃんのお兄さんが居る所を指差す。

 私の指差す方向に志保は目をやると、私と同じ様にホッ、と胸を撫で下ろしていた。


 取り合えず、サクをどうにかできないかと、考えた、その瞬間だった。


 ドォォォォン! と、爆発音が聞こえた。

 誰もがその音のした方向である銀行に目を向けた。

 見た目は変わっていない。

 だが、黒い煙が空に向かって飛んでいくのが目に入った。

「な、何!?」

 私の直ぐ隣で志保の怯えの声が聞こえた。

 何、と言われても、私にも中で何があったのか、まるで理解が出来なかった。

 状況が解らず、可愛い妹の怯えを薄める事も私には出来なかった。


 ざわついていた野次馬達の声もピタリと止まり、耳障りなサイレンの音だけが聞こえる。

 

 誰もが喋るのをやめた、あの騒いでいたサクの声も聞こえなかった。

 無意識に視線が銀行からサクへ移った。

 大きく目を見開き、銀行を眺めていた。

 その表情が、最悪の状況を予想した事を解らせた。

 呆然と開けていた口が、ゆっくりと、動いたのが見えた。


『へーじ』


 声に出したのかは解らないが、ハッキリと口の形でへーじの名前を出していた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 間髪入れた瞬間、サクが大声を張り上げ、羽交い絞めにしていた警官達を振り落とす。

 呆けていた警官たちも、我に返るとサクの大きな体に飛びついた。

 だが、サクは止まらない。

 警官達の抑えも無視してズンズン前に進む。

 

 ソレを見た私の行動は迅速だった。

 目をパチパチして何事かと驚いている志保を置いて、私は野次馬の中に飛び込んだ。

 全員が驚いて固まっている中を移動するのは思ったよりも楽で、直ぐにサクが居る所に付く事が出来た。


「何してんのよ!! 馬鹿サク!!」

 後ろから間髪いれずにそう叫んだ。

 私の声が聞こえたのか、サクは立ち止まった。

 振り返りもせずに、サクは答える。


「助けに行くんだよ!! へーじを!」


 何言ってんのよ……!

「アンタが行った所で何になるってのよ!! 大人しく警察に任しておきなさいよ!」


 そうだ、人質はへーじだけじゃない! アンタがへーじを助けられたとしても、他の人質達に被害が及ぶかもしれないんだ。


 そこで、サクが振り向いた。

 怒ったように私を睨み付けて来た。


「ダチが目の前で危険に晒されてんのを!! 指加えて見てられるかよ!!」


 ……この! 馬鹿!!


「そーゆー事言ってんじゃ無いのよ馬鹿!!」


「あァ!? んだとぉ!」

 面食らったように叫び返すサクを、私は思いっきり睨みつける。


「アンタはそんなに、へーじが、信じられないの!?」

 私の言葉に、サクの私を睨む目の色が変わった。 

 ……へーじは、見た目は貧弱だから、守りたいと思う気持ちは解らなくは無いよ。

 


「一番身近に居たアンタが、一番よく一緒に居たアンタが、なんでへーじを信じられないのよ!!!」


 そう、へーじは貧弱なんかじゃ無い。

 本当は強い人、私は知ってる。

 昔の彼は、確かに、弱かったかもしれない。

 だけど、今は、きっと……!

 へーじは強い心を持ってくれて居る。

 ずっと、私は見て来たんだ。

 だから間違いない。

 今の彼は、絶対に死なない。

 私では無理だったけど、彼女が、彼を変えてくれた。



「信じなさいよ! それでも信じられないなら私の言葉を信じて!! これで……へーじが死ねば、私をぶん殴れ!!」



 私は思いっきり叫んでいた。

 サクに向かって、思いっきり。

 鼻が、ツンッと熱くなった気がした。

 まるで自分に言い聞かせるように、叫んでいた。

 

 本当は、サクを追う為じゃなくて、私も助けに行きたかった事が、今解った。

 サクみたいに馬鹿だったら、私も銀行内に飛び込んでいたかも知れない。

 でも、私はサクみたいで無くて、考える事が出来る。

 サクみたいに、感情に一直線なのが、時々羨ましくなる。



 つくづく、サクも、私も……へーじが好きらしい。

 

 半泣きの私を見て、何を思った。

 サクは、銀行から離れた。


「サク……」


 私の擦れた声を聞かれたのが、少し恥ずかしくなった。


「俺はへーじを信じる、勿論ミナミナあんたの言葉もナ」

 その目は、まっすぐと私を見る。


 どうやら……解ってくれたらしい。

 

 それに、へーじが大丈夫だと思えるのには一つ確信のような物が私の中にあった。

 

 縁ちゃんだ。

 ずばぬけた運動神経と力を持つ縁が傍にいると思えば、安心してしまう。


 へーじ、縁ちゃん……無事で居て……! 

久しぶりの更新でございます……しかも話は進まず、ほんとすいまっせーーーん!!

次からはちゃんと話は進みます、そして更新も早くしたいです。。。。


メッセージを送ってくださった方、名前は伏せさせて頂きますが、更新を早くして欲しい、と言って頂きありがとうございます!

早く見たい、気になる! と思ったという事ですよね!

ありがとーございます!!そう言った言葉に応えれるように出来るだけ早くの更新をさせて頂きます!

お互い大学に入ったばかりですが、これから頑張って行きましょう!!

そして……ゴールデンウィーク中怪我をせずこれからも頑張って下さいというお言葉を頂きました。

すいません、怪我しました(TT)

まさかあそこで車が来るとは……

私のすばらしい動きで車にはねられるのは回避しましたが、その後に自転車がタイミング良く飛び込んでくるとは……。


運命って奴は中々やるじゃない…

いえ、言ってみたかっただけです! ごめんなさーい!

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