その117.僕の中での君という存在
突き付けられた銃の筒を掴むと自ら額に力いっぱい押し付けた。
ガンッ! という衝撃が頭に響き渡る。
だが、そんな痛みは気にしない。
男は突然の事に驚いたのか、縁から慌てて僕の方を向くと、
反射的に引っ張られた銃を引っ張り返そうとする。
だが、僕は引っ張られないように思いっきり額に押し付ける。
額に擦れる鉄がズキズキとする。
僕は男を一心に睨みつける。
息を大きく吸い込んで、憎しみをぶつける様に吐き出した。
「このビチグソがぁぁぁ!! 僕を撃つならサッサと撃て! それとも所詮撃つ度胸も無いようなカスかぁ!?」
恐怖も、暗がりも、全て吹き飛ぶ。
僕の怒りの声は銀行内に響き渡る。
強盗の男達は、全員呆然としていた。
僕がそんな行動を取るとは思っていなかったらしい。
ボーズ頭の男ですら、驚いた表情を浮かべたままだ。
僕の怒りはまだ続いている。
なんでこんなに怒っているのか、正直自分でも解らない。
だが、何故だか、死ぬほど、許せない!
「へーじ……」と、僕の名前を呼ぶ縁の声が聞こえた気がした。
小さな声で、思わず口に出た、と言った具合だ。
男を睨みつけていたので、縁の表情を確認する事は出来なかった。
睨み合う僕と男。
静寂。
聞こえるのは、外からの警察の音だけ。
「……ッチ」
男が大きく舌打ちした。
銃を握り閉めていた僕の手を振り払う。
「興醒めだ、クソ野郎」
拳銃を上に向けると、パァン! パァン! パァン! と3度の銃声音。
その音と共に、外からの警察の声は収まった。
その意図は読めないが、男はそのまま一人出口に向かって行った。
仲間の覆面の男達は、それを見送った後、僕達人質を囲う様に立つ。
見張りなのだろう。
……とりあえずは、助かったの……か?
その場にへたり込む。
あー、やっばい、何言ってんだ僕は……。
今更怖くなってきた。
「カッコつけるからよ、馬鹿」
縁は僕の方に向けて呆れた視線を向ける。
……何を言ってんだこのタコは。
「涙目になってた奴に言われたくないよ」
「な!? なってないわよボケ!!」
おま……ボケって。
まぁ、いいけどさ……。
「大人しくしとけよ」
君が暴れたら、手の着けようがないからな
。
「いやよ! あんな奴らに……」
……気持ちは解るけどさ。
小さくため息を吐いてから続ける。
「銀行強盗の籠城なんざ、殆ど成功したことが無いんだ、待ってたら警察が助けてくれる」
そう言った後、僕は胡坐で座る。
縁は不満そうに口をすぼめるも、隣に座る。
男が外に出たのは、警察に直接交渉に行ったのか……?
ま、それ以外で外に出る理由は無いか。
無理に外に出る必要は無いわな。
「……あのさ」
縁の小さな声が聞こえた。
考え事をしている時に話しかけるなよ、めんどくさい。
「あんがとね」
……!、いきなり何だよ、気持ち悪いな……。
縁は、僕を見据えてハッキリと感謝の言葉を口にした。
……ったく、無い無い。
「ヤバイよ……恐怖で空耳が聞こえたよ今……僕も終わりかな」
「〜〜〜!! あ、アンタねー!」
何か怒ってらっしゃる。
「もういいわよ! 馬鹿!」
何怒ってんだよ。
ちょっとした冗談だろ。
「こっちこそ……あんがと」
お礼を言うのはこっちだっての。
馬鹿女。
最近、更新速度が遅くてすいません^^;
実は……もう少ししたら一人暮らしが始まるのですが…。
その前に、都会の方に旅行に行きます!!
愛する人に会いに…(笑)
皆さん……成功する様に見守ってて下さい!
私は……やったらァー!
男の一世一代の猛アタックなめんなよー!!