その116.最低の強奪者の考えなんて……考えたくも無い。
「な、なんで僕が!」
僕の悲痛の叫びは、男には届かない。
そのゾっとする笑みは変わらない。
「選べ」
正に有無を言わせないというのはこういう事だろう。
何を言っても無駄なのは解った。
恐る恐る辺りを見渡した。
周りの僕と同じ境遇である筈の人質の人達は。
今度は僕と目を合わせようとしない。
まるで……僕がコイツ等の仲間みたいじゃないか……
なんだよ、それ。
あの中年男性を助けた時は、周りから尊敬の眼差しなんて物を感じた気がした。
何人かの人は僕の肩を叩いてくれたり、頑張ったと、讃えてくれた。
なのに、今は、僕を。
僕を……。
再びボーズ頭の男を見た。
楽しそうに笑っている。
こうなるのが解っていた様に。
気に食わない僕を……苦しめて楽しいだろうさ。
「ほら、選べよ」
男の楽しそうな声。
選べって……選べるわけ無いじゃないか!!。
なんだよ、なんだよ……。
心が締め付けられる。
僕だけが疎外されてる様な気がする。
気持ちが暗くなると同時に顔が下を向く。
「選べねェなら……」
男の冷たい声。
「お前が見せしめになれ」
冷たい銃口が僕の眉間に押し付けられる。
そんな
無意識に、反射的にその言葉が頭を過ぎった。
なんで、なんで!?
なんで僕が死ななきゃダメなんだよ!
血の気が引いたのが解る。
そして、突然。
心の中で、誰かの声が聞こえた。
『助かりたいだろ』
助かりたいさ!
『死にたくないだろ』
ああ!死にたくないに決まってる。
『だったら選べ、自分の代わりになる奴を』
!!。
『どうせ他人じゃないか、選んだって変わらないだろうが』
そうだ……これは……仕方ない事なんだ。
仕方の、仕方の無い事……!
聞いた事のある声だった。
自分が誘導されてるのは解っている。
だが、止められなかった。
恐怖と焦りで頭が上手く動かない。
「あ……う……」
声が漏れる。
「なんだ?」
楽しそうな男の声。
『言えよ』
その言葉に促される用に口が動く。
口を動かそうとした時。
僕の眉間に突き付けられた銃を、誰かが横から握った。
細く白い指。
綺麗な指だ。
だが、その指は怒りで力任せに握っているようで、微かに震えている。
その手の持ち主を目で追った。
縁。
綺麗な顔立ちを、怒りに震わせている縁が居た。
ッキ! と男を睨み付ける表情は、本当に怒っているが解った。
「へーじは殺させない!! アタシの物を奪わせて堪るか!!」
まるで子供の様に、唯思いっきり言った言葉だった。
……誰が、物だ馬鹿女。
いつから僕は君の物になった。
だけど、この女は。
僕を見る目が、唯一人だけ変わらなかった。
馬鹿だから……周りの人間とは頭の構造が違うのかね?
僕の中の、暗かった心が晴れていく。
たった一人が、変わらなかったというだけなのに。
僕の中で、彼女はこれほどまでに大きな存在になっていたとは。
思っていなかった。
男を睨み付ける縁。
だが、男の目は怒るわけでもなく、呆れるわけでもなく、寧ろ楽しそうに輝く。
まるでこう来る事が解っていたかのように。
「この男に死んで欲しくないか? ああ?」
男は楽しそうに縁に言う。
「当たり前じゃない!!」
それに反発するように縁は答える。
僕に銃口を押し付けたままだが、視線は縁しか見ていない。
「脱げよ」
男の楽しそうな声が、銀行内に響く。
ソノ言葉で、空気が変わった気がした。
……は? 何を言った、この男は。
その男の言葉と共に、仲間の男たちは汚らしい笑い声を上げたり、口笛を吹いたりしている。
縁の顔は、一瞬蒼白になるも、みるみる内に先程よりも怒りで真っ赤になっていく。
この男……!
最初から縁が目当てだったのだ。
比較的美人の部類に入る縁に、最初から目を付けていたのだ。
しかも、縁は気が強い。
気の強い物程、強奪者は掌握したがる。
怯える人質達より、縁の方が新鮮に見えるだろう。
僕に銃口を突き立てたのも、縁を行動に出させる為。
「……殺す」
縁は、女性とは思えないドスの利いた言葉を吐き捨てた。
その言葉と共に、強く握り締める拳。
だが、男はまるで聞こえていないように動じず、銃の引き金に指を掛ける。
それと共に縁は慌てて拳を、広がる危険で無い掌に戻した。
縁は、自分が妙な行動をすれば、僕が死ぬ事を察したようだ。
それを見て、楽しそうに笑うボーズ頭の男。
「いらねぇ行動をしたら、お前の連れを殺す」
縁が、唇を噛み締める。
鋭い睨みをボーズ頭の男に向ける。
縁は悔しそうに何か言いたそうにしたが、直ぐに口を閉じると……。
上着に手を掛けた。
「!」
……僕のせいで、縁が。
「ヒャハハ!」
男は下劣な笑い声を挙げる。
反抗してきた縁が、自分の掌握に入ったと思ったのだろう。
悔しそうに睨みつける縁。
上着を脱ごうと捲りあげる。
縁の目に、涙が、溜まっている気がした。
こんな大勢の中で、縁は……。
僕を守る為に恥を忍んだのだ。
僕の中で、何かが切れた気がした。
一人暮らしヤーーーーダーーーー!!
絶対さびしいorz
友達が居ないと死んじゃうタイプなんですorz
家事出来ないお金の計算出来ない、水道代?なにそれ美味しいの?
友人が一人東京に旅立ちました(TT)
がんばってこいよ〜、友人!
って、私ももうすぐ(東京じゃないけど)旅立つかorz