その111.子供も大人も境界はあっても同じ人間には変わらないらしい
僕の前に並べられた物は、数個のビニール袋、買い物帰りの客人から取ってきたのか、
その中に色々な物も詰め込んでいる。
中身を確認してみる。
調味料のコショウや、小麦粉?
何でもいいって言ったけど、調理するんじゃないんだから……。
次に見たのは、
子供の玩具のモデルガンや縄跳び?
取り合えず片っぱしから持ってきた感が否めないな。
僕が呆れた様に小さくため息を付いた。
さらに探ってみると、
中から新品の包丁を見つけた。
これは使える。
うん、ちょっとデカイけど新品だから殺菌をする必要も無いだろう。
更に弄ると、子供用の服やカバンも出てきた。
……これは包帯代わりになるかな。
他に使えると思えるものは、使いかけのライター、携帯型の小さな裁縫セット。
新品と思われる消毒薬、酒ビン。
後は銀行員達の上着を借りた。
銀行員達の上着を下に引いてその上に今も血を流す男性を移動させる。
移動は縁が持ち上げてくれた。
流石は怪力馬鹿。
改めて揃った物を見てみる。
まぁ……こんだけ揃ったのは上出来か。
新品の包丁の箱を開けて中身を手に取る。
縁は再び中年男性の傷口を抑えていた。
包丁を持つ僕を見て驚いた表情を浮かべた。
周りの人間も縁と同じ表情をしている。
君ら、ここまで来て僕が何するか解ってなかったの?
まぁ……言われるがままにやってたって感じだけど。
変に突っ張らずに言う事を聞いてくれた事には感謝だけどね。
「な、何をするの……?」
縁の不安そうな声に適当に答える。
「捌く」
「え……、え!?」
困惑を込めた声を挙げる縁
なんだよ、聞こえなかったのか?
「捌くんだよ、体を」
僕の一言に、何故か周りが凍り付いた。
「な……ななななな何言ってんのよアンタ!!」
声がデカイよ馬鹿。
縁は驚きの声を挙げると共に、
抑えていた手に力が入ったのか、
中年男性が「ぐふぁ!?」とか気絶しつつも苦しそうな声を上げた。
「コラコラ、君が人殺しになったらシャレにならんよ」
極めて僕は冷静にそう言った。
縁は小さく「わわ!?」と、焦った声を出す。
君どんだけ驚いてんの。
「銃弾が体に残ってる、体に弾残してるとソコから肉が腐る事もある、まぁ……そこまでは行かないまでも怪我人にはあまり良い状態とは云えない」
「へ、へぇ〜……成程〜」
解ってないのに解った様に頷くな。
頭の上のハテナが隠せて無いぞ。
手の上で軽く包丁を投げて回したりしてみる。
ちょっとデカイな……。
手術用のメス、人の腹かっ捌くのにメスは最低限の大きさだ。
それをこんなドデカイ包丁でしようとしている。
手術に必要な輸血や麻酔すら無い状況。
知識がある分、どれだけ難しいかが容易に考えられる。
子供の頃に親の手術を多少見た程度だし……。
こんな包丁で上手く行く可能性なんてたかが知れてる。
いっそう無いに等しい。
僕の手に緊張が走った。
流石に冷静ではいられない。
息を大きく吸いこんで思いっきり吐く。
意を決して、目を開けた時。
突然、僕の手を誰かが横入りから掴んだ。
その掴んだ先を見ると、一人の若い男。
多分この銀行に来た客。
僕達と同じ不幸な一般人だ。
若い男は僕を睨み付ける。
「何を考えているんだ!」
……フン、僕のやる事を止めるか。
まぁ、非常識ではあるわな。
止めるのが正解だ。
怒りを込めて男は言う。
「そんな事をして……ヒーローにでもなる気か!? 出来ない事を子どもがしようとするんじゃない!!」
……あ?
その言葉は、僕の脳髄にハッキリと伝わる。
だが、脳に伝わっても言葉の意味を数秒考えてしまった。
ヒーロー? 僕が? クク……お笑いモンだね。
「悪いけど、僕はヒーローのつもりは無い、ヒーローは間に合ってるしね」
僕の言葉が理解出来なかったのか、若い男は睨みつつも眉を上げた。
解らないだろうさ、解る必要何て無い。
僕の視線の先に居るのは若い男じゃない、身守る様にコチラを見る縁が僕の目に映る。
「と、取り合えずやめなさい!! 子供がそんな物を持つんじゃない!!」
……ッチ、子供子供って。
僕を睨み付ける若い男を負けずに思いっきり見据える。
「じゃーさぁ、大人さんよー……アナタがやりますか?」
そう言って僕は新品の包丁を若い男に差し出す様に、刃を持って若い男に柄を見せる、
男が確実に焦った表情をしたのを僕は見逃さない。
「見殺しにしたいんならそうしたら良い、僕には関係の無い事だ。」
若い男は怯んだように一歩後ろに下がった。
僕は続けて口を開く。
「こちとら、ガキの記憶で昔見た様な曖昧な手術を、こんな所で始めようとしてるんだメチャクチャなのは解ってる……知識のある僕が一番解ってるんだよ」
本当だったらこんな事しないし、したくない!
だけどな、この中年の男が死んだら、他人なのに悲しむ様な馬鹿が居るんだよ。
「僕以外に出来る人間が居たら喜んで代わってやる……出来ないなら口出しをするな」
それだけ言うと、僕は中年男性に向き直る。
男の手が僕の腕から離れた。
残念だけど、医者を名乗り出る者はいない、一番可能性があるのは僕だ。嫌だけど……。
「……そ、その人は」
後ろから先程とは別の高い声がした。
女性だ。
その女性の不安そうな声が僕の耳に届く。
流石に緊張は解けていた、鬱陶しそうに女性の方を向く。
そこに、涙を流す銀行員の女性が居た。
先程、強盗に懇願した女性だ
。
年齢は僕よりも上の『大人』が、泣いていた。
流石に僕もギョッとする。
銀行員の女性は、呆然としている僕等気にせず涙を流しながら口を開く。
「その人は、私達の大切な仲間の一人なの……助けてくれるのなら……助けて」
大人でも、子供を馬鹿にする人間と、子供にまで縋る大人が居るらしい……。
……なんだよ、泣くなよ。
「保障はしないよ、成功率何て馬鹿みたいに低いんだ」
僕の言葉に女性は涙を浮かべながら、俯く。
「だけど……」
僕の零した言葉に、顔を挙げる。
「必ず助ける、そう言えば……アナタは安心しますか?」
それだけ言うと、再び中年男性に向き直る。
クソ……これじゃ本当にヒーローみたいじゃないか。
寒気がするね。
僕の背中に涙声が降りかかる。
「……お願い」
……フン、誰だか知らないけど、その間抜けな泣き顔を、その仲間に見てもらうといいさ。
僕は包丁を握り直した。
血を流す勇気有る中年男性を見据える。
今度は笑顔でな。
友人の家に泊まりに行った時の話
やる事を全てやってやることが無くなった私達は、個々に別々の事を始めた。
私←携帯
友人B←PSP
友人C←DS
友人A「……無いわぁ〜」
私「何が?(携帯を弄りながら)」
友人A「友達の家に来て全員バラバラの事するのってどうよ」
私「え、良いんで無い?」
友人A[はいー! 皆これから絶対やったあかん事決めようぜー! 破ったらアレな! 死ぬ事な!」
私「え? 無視? 私の発言無視?」
友人A[B!PSPするな!」
友人B「……」←無言でPSPをベッドに投げる
友人A「○○!←(私の名前)携帯するな!」
私「……ッチェ〜、なんだよー」
そう言いつつ携帯を閉じる私。
友人A「C!お前は……」
友人C「……」←言葉を予想して既にDSを閉じるC
友人A「息するな!!」
私(え、おかしくない!?どっちにしても死ぬじゃん!)と心の中で突っ込む私。
友人C「……」←息を止めている。
私(健気や!この子健気やァァー!!反論せず言う通り息止めとるー!!)と、心の中で称賛する私
友人A[なんかつまらん……」
そう言って寝転がるA
私(Cはほったらかしですか!!今も息止めてるよ!早く突っ込まないとずっと息止めちゃうよ!!)そう思うだけで突っ込まない私
友人A[……Cさぁ」
私(お!言うんか!言うんかァ!!)
友人A「何馬鹿な事してんの?」
「は!?」←私
「っぶふぅ!」←C
「……」←B
「?」←A