その107.アタシもアンタも『意地っ張り』……優しくしないでよ、馬鹿…
アタシよりも先に歩くのは貧弱男。
何を考えてるか解らないこの男は何なんだろう。
仕方無く、後ろを付いていく。
何かを考えている様だが、何を考えているかなんてわかるわけがない。
そんなへーじは、無言で先先と歩いている。
折角の外出で、女の子を無視して何をしてるんだこの男は。
まぁ……アンタに変な期待はしないわよ、バーカ。
心の中で悪態を付いておく。
小さく溜息を零して、何気無く辺りを見渡してみた。
カップルらしい男女が手を繋いで過ぎ去っていく。
何気なく、目がそのカップルを追っていた。
「ねぇ、買ってくれるでしょぉ〜?」
「ははは! 考えとくよ」
楽しそうなカップルの声が耳に障る。
再び前を向くと、へーじの背中が見える。
へーじは、一切そちらを見ず、黙々と歩いている。
もう一度溜息を零す。
別に……へーじなんかに期待はしない。
アタシは確かに暴力的だ。
アタシが女の子らしくなんて、おこがましい。
解ってる、もういいや……。
別に期待なんてしてない。
今更女の子らしくなんて、遅すぎたかもしれない。
再び何気なく辺りを見渡す。
やはり、町中は騒がしい。
沢山の店が並んでいる。
そして、なんと無しに横を向いた。
ガラスケースが目の前にある。
黒い上半身のみのマネキンに飾られた赤いロザリオがあった。
アタシの視線は釘付けになっていた。
その赤いロザリオに見覚えがあったからだ。
同じ物か、似た物なのかは知らない。
見たのは幼い頃。
アタシが小さい頃に、初めて親に強請ったロザリオに似ていた。
アタシの親は威厳ある人であり、とても厳しい人だった。
幼いアタシは、幼いながらに親に愛されていない事を知っていた。
しかし、仕事ばかりの親が、初めてアタシを町に連れ立ってくれた。
その時に、幼いアタシは簡単で、やはり愛されてるんだ。
なんて喜んで、はしゃいで親の周りを走ったりしていた。
そんな時に、キラキラと赤く光るロザリオを、こんな風にガラス越しに見た。
それに魅入られたアタシは、初めておねだりをしていた。
『これが欲しい』
と、
本当は何でも良かった。
この幸せな毎日に、証が欲しかったのかもしれない。
だが、答えは……幼いアタシにはあまりにも残酷だった。
『物に何故、物を買う』
幼いアタシは最初に言われた意味が解らなかった。
あまりにも冷たい一言。
その時の事は、今も良く覚えている。
赤いロザリオはキラキラと光っている。
綺麗。
本当に綺麗。
小さく煌びやかに光るそれは、可愛いとも取れる。
赤く輝く装飾に、目が惹かれていく
子供の頃に見たのと一緒な気までしてくる。
何年前の話だ、というのに。
それを見つめるアタシの耳元で、声が聞こえた。
「……欲しいの?」
慌ててガラスケースから離れた。
声の主は、前を歩いていた筈のへーじだった。
……欲しいと言っても、意味は無いのは解ってる。
別に……欲しくもないし。
下を向いてしまう。
目を合わせたくない、アタシは今どんな顔をしているだろう。
「……別に」
小さくそう言った。
嫌な物見ちゃったな。
しかし、アタシの耳に意外な言葉が聞こえた。
「……買うかな」
その言葉に、慌てて顔を上げた。
この男は何を言った……?
「え……、え?」
自分でも変な声が出たと思う。
変な声が出る程……驚いていた。
そんなアタシ等どうでもよさそうに、辺りを見渡す。
へーじの表情はいつも通りの、めんどくさそうな表情をしていた。
何かを見つけるたのか、再び歩き出していた。
へーじの視線の先に、銀行があった。
このロザリオの金額は対した物だ。
それを、一高校生が買う?
なんで?
アタシが……見てたから!?
先程のカップルが頭に思い浮かんだ。
途端に顔が熱くなる。
そして自分でも気付かずに突然大声を出していた。
「ちょっと! い、いらないわよ! アタシみたいなガサツで乱暴な女が……あ、あんな可愛い物欲しがるわけ無いじゃない!」
へーじは歩を止めない。
アタシを見ない。
「ねぇ! 待ちなさいよ! いらないってば! アンタから貰ったって!!」
そうだ、何とも思わない。
思うわけがない。
だから、やめてよ。
「あ、アンタだってアタシの事、男女とか言ってたじゃん! そんな女にあんなの渡したって意味無いでしょう!!」
へーじは止まらない。
アタシは仕方無く後ろを付いていくしかない。
だが、アタシの声は止まらない。
なんでか解らないけど。
「やめてよ! 本当にいらないんだってば!!」
やめてよ……優しくしないでよ。
悪口言ってみなよ。
アタシが嫌ならって言ったけどさ……。
何時も通りにしててよ……。
……アタシが変になりそう。
透明な自動ドアが目の前にある。
ガラスで移る自分の顔を見て、慌てて下を向いた。
あまりにも情けない顔をしていた。
自動ドアが開く。
とうとう……銀行に入ってしまった
へーじが自動ドアを潜る。
アタシも俯いたまま後ろに続く。
「……は?」
何故か、へーじの間抜けな声が聞こえた。
不思議に思って顔を上げた。
へーじの顔を見ると、ひきつった表情で固まっていた。
へーじの視線の先を目で追う。
その先に……。
男が居た。
それならば変では無い。
ボーズの若そうな男の手には、
黒光りする拳銃が握られていたのだ。
店員らしき人や、客らしき人達は、全員下に這いつくばっていた。
這いつくばる人達の表情には、どれも恐怖の色がある。
「動くな」
ボーズの男が、アタシ達に拳銃を向けて、低くそう言った。
寒気が走った。
空気を感じた。
重苦しい空気を。
だが、アタシの中では別の思いが生まれていた。
先程までの考えは吹っ飛ぶ。
無意識に、男を『敵』だと。
女の子らしく、何て言葉は、まるで知らなかったように消え去る。
固まっているへーじとは逆に、アタシは前に出る。
男の拳銃の引き金に指が掛かった。
アタシに恐怖は生まれない。
『悪』を見つけた。
アタシには、やっぱり……
女の子らしくなんて無い。
バレンタゥインに思いを馳せる頃。
発音がオカシイ?私の気持ちを込めた言い方ですが何か。
友人の家。
友人A[お前よー……遊んでる時ぐらいメールやめろよ」
友人B「本当だよ、それやめろって」
私「イヤじゃい、愛する人にらんでヴューじゃボケ」
え?彼女?いえ、方思いですが何か。
友人C「俺だったら女よりも友達取るな」
私←携帯しながら「私はバッチリ友達よりも女の子ですが何か」
友人C「……俺、女に興味無いし」
私・友人A・友人B「…………え゛」
そりゃ携帯から目を離しますとも、なんですか、いきなり爆弾発言ですか。
しばし沈黙。
友人A「……よ、良かったなー○○←(私の名前)、Cに好かれて」
私(こ!こいつ! 私に振って逃げやがった!!)
後に、勘違いであることは……解ったような解らなかったような……。
お願いです、勘違いであって下さい。
私には、心に決めた人がァァァァ!!!!




