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その102.休みだろーが、学校だろーが、僕と縁は変わらない

「やっぱカッコイイよね〜! ブルーマスク!」

 隣で楽しそうにはしゃぐ縁。

 そんな縁とは正反対に暗い僕。


 あの後、直ぐに戻って、縁と外に出た。

 腹の減りから、もう昼過ぎと思われる時刻。

 賑やかな町の中、僕等は並んで歩いているわけだが。


 楽しそうに縁はブルーマスクについて喋っている。

 このブルーマスクが、我らが高校の駄目教師とは知る由も無いだろうに……。


「きっと、あのマスクの下にはヤクザも端っこを歩くような厳つい顔なんだろうなぁ〜〜」

 なんで目をキラキラさせてんの、そこは美形〜とかイケメン〜とかじゃないの?

 まぁ、君の予想は、銀河の彼方にぶっとぶ位に大外れですがね。

 あのマスクの下には、やる気無い顔しかありません。


 そんな風に考えてる僕なんて縁が知るわけもないのだが。

 隣で、まだ楽しそうに話している。

「プロレスは、やっぱりベビーフェイス が花だよね〜」

 花、というのが、目立つ、もしくは良く映る、という比喩なのは解ったが、最初のベビーフェイス という言葉の意味が解らなかった。

 赤ちゃん顔? プロレスが赤ちゃん顔!?

「は? ベビーフェイス ?」

 まぁ、解らないなら聞くのが一番だ。


「なんだ知らないの?」

 そう言いながらも、嬉しそうに顔を輝かせる縁。

 やはりオタク(格闘オタク)は自分の知識を曝け出したくなるよね。

 得意そうに縁は、説明し始める。

 ……楽しそうだね。良いけど。


「プロレスにはヒールとベビーフェイスってのが居て! ヒールは悪役、ベビーフェイスは、正義の味方、ヒーローみたいな感じ! 卑怯な手を使ってくるヒールを、ヒーローはカッコよく倒すんだ」


「ふぅん」

 半ばどうでもよさそうに、軽く相槌を取って置く。

 比喩では無く、そのままの意味だったらしい。

 いや、赤ちゃんは比喩でしょーけど。

 ……まぁ、つまり、あれは演技みたいな物なのか?

 プロレスって、殴り合いとかのイメージが強いんだけどな。

 僕たちは劇を見に来た様なものか、と適当に予想する。


「アタシは、あんなカッコいいヒーローになるんだ……」

 そう、縁は小さく零した。

 なにか哀愁を見せる様に、無意識に言ったような気がした。

 その言葉は、小さな子供が言うような幼稚さが見える

 またガキみたいな発言を、と僕は半ば呆れる。

 だけど、このガキみたいな女の子は、本気なのだろう。


 ヒーロー……ね。


「あ〜、また行きたいな〜隠しライブ」

 一瞬だけ見せた哀愁は消え去り、再び目を輝かせている。

 

 ……ん? そう云えば。


 そこでふと疑問を感じた。

 僕の疑問は対した物でも無いし、何となく浮かんだ物だ。


 まぁいいや、取り合えず聞いてみよう。


「あのさ、あの試合ってカップル限定なんでしょ?」

 僕の言葉と共に、縁は突然立ち止まった。

 気付かずに一歩先に行った僕も慌てて止まる。


「……そ、そうだけど?」

 なんで戸惑ってんの?

 目が再び泳いでいる、何故か僕を見ようとしない。


「男が必要だったのは解るけど、何で僕? サクと一緒に行ったら良かったんじゃないの?」

 サクも腕っ節は自身が有る筈だ、プロレスとか好きそうだし。

 何気なく言った言葉に、泳いでいた目は、しっかりと僕を見据え始めた。

 その眼に先程の戸惑った様子は無く、どこか怒ったような、ご様子。


「なんで! アタシが! あんな馬鹿とカップルにならなきゃ駄目なのよ!」

 怒りの声を上げながら、僕に向かってズンズン迫ってくる。

 あの、近いんですけど……。

 目の前で、怒った表情を見せる縁。

 近すぎて、縁のまつげ等々、不断見えない部分がバッチリと見える。

 それ程の近さだ。

 

 ……なんか恥ずかしいな。


「あんなのとカップルなんて、死んでもイヤ!」

 そこまで言うか……仮にも、形だけのカップルってことなのに。

 本当にこの兄弟は仲が悪いな……。

 

 ん? 待てよ?

 ここで僕の脳裏に二つ目の疑問が浮かぶ。

 

「君の兄貴とカップルになるのはいやでも、僕は良いの?」

 僕の何気無い疑問の言葉と共に、目の前にある縁の顔が一気に真っ赤になった。

 なんだ?


「え、あ、や、や、あの、別にへーじだから、とかじゃなくて、だ、誰でも良かっただけで…………偶然! 別に偶然だから!」

 なんなんだ? 言葉がおかしくなているし、再び目が泳いでいる。

 突然の戸惑いに、僕の方が戸惑ってしまう。

「じゃぁ、別に僕とじゃなくても良いんでしょ?」

 君結構モテるみたいだしね。

 あの、下駄箱のクズ男とか、変態の仮面軍団とか。 


 未だに表情に戸惑いを見せながら、縁は眼を合わせない。

「で、でも……他の人だと行けないかも、っていうか……へーじだと行き易いっていうか……」

 もごもごと、口ごもられちゃ、なにが言いたいのかサッパリ解んないんだけど?

 何を戸惑ってるんだ? 何気無く聞いただけなのだが。

 縁はとうとう俯いてしまった。

 元気そうには見えない。

 

 これは……楽しそうでは無いね。


「無理に答えなくても……」

 良いよ、っと言おうとした時、縁は顔を上げた。

 寒い町中で、縁の顔は真っ赤になっていた。

 湯気出てるんじゃないだろうか? という程に真っ赤だ。


「何でもいーでしょーが! ボケ!」

 あ、元気出た。

 そんな間抜けな事をボヤッと考えたのと、縁のマッハパンチは同時だった。

 顔面に炸裂したパンチはそのまま僕の体を浮かす。


 ッフ……油断してたゼ。

 綺麗な格好してても、暴力女は暴力女か……。

 空中に浮きながらも、そんな事を考える余裕はあった。

 

 イヤな耐性が付いたな……

テスト終わったーーーー!!

ウッヒョーィ!

イヘーィ!アヘーィ!

後は、大学に行くだけ……失敗せねば……うん……

大学に行くと一人暮らし……

一人暮らしになるまでには、この小説も終わっているでしょう。


ここまで読んでくださった方、本当に、ありがとうございます。そして、これからも宜しくお願い致します。

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