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狼さんと決着

お久しぶりです。


ちょっと長いです。

 ?


 ふと何かを感じて友がいるはずの山を見る。

 戦闘の余波のせいか荒れ果てた山肌には友もあの山羊もどきの姿も見えない。


 ……気のせいか?我が友の魔力が弱まっているような……。


「おっと」


 首に迫る短剣を躱しカウンターで腹に蹴りを入れる。相手の体はくの字に曲がり崩れ落ちだ。


 ま、先にこっちを片付けるべきじゃな。


 すでに周りには蹴散らされた黒ずくめ達が転がっている。ぴくりとも動かないが一応生きているはずだ、骨は数本折れているだろうが。


「どうした、他に手はないのか?」


 警戒するように自分から距離を取っているリーダー格の男に話しかける。男の周りには残りの黒ずくめがいるがその数は片手で数えられるほどまで減っていた。


「化け物め……」


「おう、今頃気づいたか」


 フラムは気にした様子もなく答えた。

 今まで倒した相手から何度も言われたことだ。どころか同族からもよく言われる。


「で、これで終わりならお前らの負けじゃぞ?もう少し楽しませてみよ」


 フラムはゆっくりと、そして悠々と歩き距離を縮めていく。

 ジリジリと黒ずくめ達が退がる。


 男は焦っていた。

 竜帝の実力を見誤ったせいでもうすでに部下の八割が戦闘不能に追い込まれた。しかも目標の確保は出来ていない。


 このままでは……。

 ここで逃げたらオグエル様に顔向けできない。そもそも今から撤退して何人が逃げ切れる?目の前の化け物の動きは私にも追いきれない、部下達なら見切るのはさらに困難だろう。


 顔に汗が滲み頰を滑り落ちていく。


 落ち着け……目的は少女の確保、この化け物の相手をすることではない。ならば……。


 一番近くにいる部下に目配せで指示する。

 隊の中でも一番の付き合いの戦友は小さく、確かに頷いた。他の部下も何かを察したのか覚悟を決め短剣を握り直す。


 フラムも彼らの気配が変わったのを感じ歩みを止める。


 男とフラムが睨み合う。


 男がフラムから視線を外しその背後を見た。一瞬フラムの意識が男達から逸れる。


 それが合図だった。


「突撃!」


 男が叫びフラムに向かって走り出す。

 目配せされた部下がすぐに続き、それ以外の黒ずくめも数歩遅れて走り始めた。


 両者の距離は十メートルほど。

 フラムは始めに反応が遅れたがそれも刹那の間、すぐに火球を扇状に放ち牽制する。


 火球は榴弾のように飛び着弾、爆発する。

 男と黒ずくめ達はジグザグに動き、多少の火傷を受けながら避けていく。


 爆風の中から男が飛び出す。そして懐から筒のようなものを取り出しフラムに向けた。


 筒の先端に水が集まり巨大な矢となって射出される。使い切りだが強力な魔法を放てる男が残していたとっておきである。


 反動で男の動きが一瞬止まるが放たれた矢がフラムに攻撃を許さない。


 仕方なくフラムは右手で水の矢を薙ぎ払って散らす。

 その隙に男はフラムの目の前まで接近した。右手を横に開いてがら空きになったフラムの胴に短剣を突き込む。


 しかしフラムは難なく足で蹴り上げ男の手から短剣を弾き飛ばした。蹴りをくらった男の手首からゴキリと嫌な音がする。


 男は呻いたがすぐに態勢を整える。使い物にならなくなった右手からまだ動く左手に短剣を持ち替えた。


 男が短剣をしっかりと握るよりも早くフラムが襲いかかる。


 唸りを上げて拳が男に迫る。

 男は躱そうとせず短剣をフラムに投げつけた。


 短剣はあっさりとフラムの拳に砕かれる。

 しかし男の狙いはそこにあった。短剣が破壊されたのをトリガーに、仕込まれていた魔法が発動し黒い煙が吹き出る。


 煙によって拳を止めてしまったフラムの隙を逃さず追いついた黒ずくめ達が一斉に斬りかかる。


 男は部下達が追いついたことを認めると部下達を迎撃するフラムの横をすり抜けて猛然と走り出した。

 向かう先には瞬殺してばかりのフラムを援護出来ずハラハラと見守っていたオワズと村人達。


「狙いは娘じゃ!少しだけ耐えろ!」


 黒ずくめの一人を殴り飛ばしながらフラムが叫ぶ。


「分かりました!【突撃槍】!」


 オワズの周りに透明な槍が数本現れる。属性を持たない無属性の魔法だ。


「行きなさい!」


 オワズの命令と共に槍が男に向かい飛んでいく。他にも魔法を使える村人が火球や魔力の球を撃ち込んだ。

 やっと援護出来るとばかりに我先にと放たれた魔法が男に迫る。


「おぉぉぉぉ!」


 男は雄叫びを上げて魔法を避ける。しかし村人達の一斉射の弾幕の厚さには勝てずどんどん被弾していく。


 魔法がやんだ頃には男は血まみれのになっていた。特に動かなかった右腕は盾にしたせいでボロボロだ。

 しかし男の速度は落ちない。ここで倒れてはならない、オグエル様の、そして部下達のためにも。ただそれだけを思い男は走り続ける。


 男の鬼気迫る様子に村人達が思わずたじろぐ。そしてその隙は致命的だった。


 男が腰に付いていた黒い玉を村人達が密集する窓に向けて放り投げる。


 爆発、閃光。


「うわっ」


 強力な光に視界を潰された村人達が思わず目を手で守る。


「しまった……!」


 オワズも例外ではなかったようで目を覆っている。我先にと窓から身を乗り出して魔法を撃っていたのが仇となりほぼ全員が目をやられてしまっていた。


「馬鹿者!窓を閉めろ!」


 フラムが叫ぶが時すでに遅し。


 男は窓から飛び込もうと窓枠に手をかける。


 目の前の雑兵は無力化した、竜帝は部下達が抑えてくれている。ターゲットはまだ未熟な少女だ、手負いでも簡単に捕まえれるはずだ。


 男が思ったことは概ね事実だった。少なくとも男は作戦の成功を確信していた。


 しかし男の認識には誤りがあった。


「えい!」


 男が床に着地するのを狙って火球が放たれる。

 奥の部屋から飛び出して来た少女によって無詠唱で行使されたそれは男の右肩を直撃した。


 そう、ターゲットの少女の魔法の腕を男は侮っていたのだ。


「ぐうっ」


 男がターゲットからの予想外の攻撃に呻く。


「でかした!」


 窓から矢のように飛び込んで来たフラムが男の背後に着地する。


 部下が止めているはずの者の声が自分の真後ろから聞こえる事に男は動揺を隠せない。そしてその動揺は男の反撃を一歩遅らせた。


 その隙を見逃すはずもなくフラムの拳が男の顔面に突き刺さる。鈍い打撃音が響いた。


 仰け反りながら男が吹っ飛ぶ。

 男は竜帝の背後に一瞬だけ見た。先ほどまで竜帝と戦っていた部下達が全て地に伏しているのを。


(すまない……)


 後頭部に衝撃を感じたかと思うと男の意識は途絶えた。





 いやー、危なかった。


 男が意識を失ったのを確認して安堵する。


 余裕ぶっこいて肉弾戦しかしなかったのは失敗じゃなったな、あと少しで小娘が拐われるところじゃったわ。


「いい一撃じゃたぞ。実践で無詠唱を成功させるとはやるではないか」


「あ、ありがとうございます!」


 恐縮そうに頭を下げる小娘の頭を撫でる。

 しっかし本当に大したものじゃな、我が友の教え方が良かったのか小娘の才能か。


 あ、そういえば我が友はどうしておるんじゃ?


 周囲にそれらしき影はない。瞬間移動が使えるやつならすぐに戻ってくると思ったのじゃが、まさかまだ戦っておるのか?


「儂は友の元へ行く。村人達と外の黒ずくめを縛っておいてくれ」


「わ、分かりました」


 小娘を撫でるのをやめ指示を出す。小娘はようやく閃光弾から回復してきた村人達へ駆け寄っていった。


 窓からよっこらせと外に出る。

 すでに日は落ち満月が半壊した家々を照らしている。

 普段なら気にもならないが何故かフラムには今の月はどことなく不気味に見えた。


 ……嫌な予感がするの。弱気になるとはらしくもない。


 心にわだかまる何かを振り払い、山へ向けて駆け出した。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 じわじわと地面に血が広がり、土と混ざり合い地面を暗い赤に染めていく。どんどん流れ出る血と魔力に死が近づいてくるのを感じる。


 痛い……寒い……。


 傷に回復魔法をかけるが効果がない。発動した手応えはあるのに血は止まらない。


「無駄だ、その傷には呪いがかかった。そう簡単には癒えんよ」


 オグエルさんが近づいてくる。もはや言葉を返す気力もなかった。


「油断するな、と言ったのだがな。()()を察するのは無理だったか。」


 オグエルさんは俺の目の前まで来ると俺の首に刀を添えた。


「苦しめはせん。一瞬で落としてやるから安心しろ」


 チャリ、と刀が鳴る。


 ……嫌だ、死にたくはない。


 魔力も枯渇して朦朧とした頭でそれだけが思い浮かぶ。震える手で刀を掴み必死に遠ざけようとする。


「……往生際が悪いな。戦士なら潔く受け入れよ」


 知るか……!俺は戦士でもなんでもない……!


「うゔっ」


 なおも刀を離さず力を込める。

 オグエルさんはため息をつき刀を下げた。


「そうか、そこまで嫌なら好きにするといい。私としては一思いに楽にしてやりたかったのだがな」


 余計なお世話だ。

 それにまだ死んじゃいない。この傷が治らないのが刀の特性なら概念干渉でどうにか出来るはずだ。

 問題は俺が動けると分かればオグエルさんはすぐに攻撃して来るだろう。この死に体でまたオグエルさんを相手取るのは無謀な博打だ。


 オグエルさんは納刀し、村の方に歩いていく。


 そうだ、さっさと行ってしまえ……。


 俺が祈るように見つめているとピタリとオグエルさんが止まる。……なんだ?


「ちっ、全滅したか……竜帝め」


 まさか気が変わったと戻って来るのでは、と俺が震えているとオグエルさんが呟いた。


 竜帝……フラムか、向こうは勝ったみたいだな。こっちとは大違いだ。


 相手が違うとはいえ、どこか劣等感を覚える。任せろと言った分余計にだ。


 ……そうだ、俺はオグエルさんを止めれていない。オグエルさんはフラム達の元へ行く。


 ドクンと心臓の音が聞こえる。


 オグエルさんはフラム達に会ったらどうする?当然戦闘になるだろう、オグエルさんの目的のアフェリンちゃんはまだ村にいるはずだ。簡単に諦めるとは思えない。


 死にかけていることも忘れて考える。


 フラム達がオグエルさんと戦えばどうなる?これもほぼ確実に分かる。間違いなく負ける、俺が勝てなかったのにフラムが勝てるとは思えない。

 もしかしたらフラムなら思いもよらない手を使って善戦するかもしれない、だがそこまでだオグエルさんは小細工でどうこうできる相手じゃない。


 脳裏に最悪の景色が浮かぶ。

 オグエルさんに斬り捨てられるフラムの姿だ。


 ドクンと再び心臓が大きく跳ねた。


 ダメだ……それは嫌だ。死にたくもない、だけどフラムが殺されるのも嫌だ。


 気づけば概念干渉を使い傷を塞いでいた。震える手足を地面に突き立て立ち上がる。


 オグエルさんが振り向いた。ボヤけた視界ではその表情は見えない。


 最後の魔力を振り絞り地面に広がった血を操り一本の剣を創り出す。なんの変哲もない長剣だ、だが高濃度の魔力を含んだ俺の血ならオグエルさんの攻撃もなんとか耐えてくれる……はずだ。


「ほぉ、まだ立つか。先ほどの悪あがきは体力を回復させるための時間稼ぎだったのか?」


 オグエルさんが何か言っているがよく聞こえない。手足の感覚もほぼ無いし頭だってボンヤリとして靄がかかったようだ。


 だがまだ動く。死にたくもないしフラムも守りたい、二兎追って二兎とも得ようとしているんだ、無茶は承知の上だ。


 オグエルさんの姿がブレた。

 反射的に剣を振り、打ち合う。俺とオグエルさんの間に火花が散った。


 オグエルさんが刀を振る。俺はそれを打つ。何度も繰り返す。

 オグエルさんの剣筋は見えない。観察と勘で剣を振り回す。


 動きは止めない。今のボロボロの体で振れる速さなんてたかが知れてる、止まればそこで終わりだ。


 打ち合い弾かれた勢いのまま回り、捻り、力を回転させるようにして保つ。


 右下からの斬り上げ。


 返す刀で斬り下ろし。


 重心を傾けて大技と見せかけてからの細かい突き。


 それらをなんとか躱し、弾き、いなす。当然、完全には防げず掠めた箇所から血が散る。

 剣を振り回しながら相手を観察し続ける。筋肉の動きや目線、足の向き、重心の位置、それらをよく見て紙一重で凌いでいく。


 繰り返し、繰り返し剣を交えると、だんだん慣れが生まれてくる。

 避けきれない攻撃が減り、少しずつ反撃が飛ぶようになった。


 頭は眼前の相手のことだけを考える。いかにその剣を防ぎ、反撃するか、それだけに思考が収束していく。


「――お前――な――だん――」


 目の前の相手が何か言っているが分からない。こちらには話す余裕なんてない。


 振り回す剣が相手の左肩を浅く斬った。


 いける、勝てる、このままもっと……!


 余計なことを考えたからだろうか、それとも魔力を失いすぎていたのか。

 踏み出した足が体を支えきれず膝がガクリと折れた。


 その隙を見逃されるはずもなく、不可視の突きが放たれる。


 避けようと後ろに跳ぶが、笑った足で満足に跳べるはずもなく刀は俺の左肩に突き刺さった。


 激痛にまとまっていた意識が弾ける。極度の集中切れていくのを感じた。


 跳んだ勢いを止めれず後ろに倒れる。肩から刀がずるりと抜けた。

 ボヤけた視界に白く輝く満月を背にしたオグエルさんが映る。


 あぁ……ダメか……。


 受け身も取れずに地面に倒れる。衝撃が肺を貫き息が止まる。

 全身の感覚がない、今ちゃんと四肢はあるのだろうか。


 ボーッと近づいてくるオグエルさんを見る。流石に今命乞いをしても無駄だろう、まずそんな気力もない。

 本能は逃げろと言うが体は反応しない。


「見――」


 やはり何を言っているか分からない、脳がおかしくなったのか耳が変になったのか、まぁどうでもいい。

 諦めからか無意識に笑みが浮かぶ。何がおかしいのだろう、今から殺されるというのに。


 オグエルさんの影で視界が暗くなる。

 振り上げられた刀が月明かりを受け怪しく光った。


「――み!」


 その瞬間、赤い何かが視界を横切った。


 覆っていた影がいなくなり再び月が俺を照らす。なんだ……?


 何かがぶつかる音や金属音が聞こえる。首を動かすのも億劫だ。何が起きている?


 音が止んだ。


 こちらに何か丸いものが飛んできた。視界の端で弾んで顔の横に落ちる。

 なんとか頭を動かして横を向く。落ちてきた物体が目に入った。



 転がっていたのは、フラムの首だった。



「ぁ……?」


 頭が真っ白になる。

 何故だ?なんだこんなものがここにある?フラムは村に向かって、ここにはいなくて、じゃあ幻?俺はおかしくなったのか?


 首と目があう。

 見開かれた目がこちらを見ていた。綺麗な首の断面からは静かにおびただしい量の血と魔力が流れ出している。


 違う、これはフラムだ、あいつの魔力だ、あいつの顔だ。じゃあ、今フラムは……?さっきの赤いのは……?


 ぐちゃぐちゃした思考がまとまるにつれ、血の気が引いていく。

 あまりにもわかりきったことなのに頭が理解するのを拒む。


 フラムは……フラムは……首を斬られて、血が出て、体が無くて、じゃあ、つまり、それって、死んだってことか?


 なんで?

 斬られたから。

 誰に?

 オグエルに。


 ブツンと何かが千切れた。


 空っぽだったはずの魔力が体の奥底から湧き出てきて今にも溢れそうになる。感覚のなかった四肢の末端まで力が入り全身が燃えるように熱く感じた。


 手をついて起き上がる。

 視界が持ち上がり、その真ん中にはこちらを見て目を丸くするオグエル(クソッタレ)


「」


 オグエルが口を開いて何か言う前に思いっきり地面を蹴る。


 一瞬で縮まる距離。オグエルの目は俺に焦点が合っていない。前に狩ったドラゴンと一緒だ、俺を捉えていない。時が止まったようだった。

 目の前のオグエルに向けて全力で拳を突き出す。音も、時間も、光さえも置いていき拳はオグエルの腹にめり込んだ。


 止まっていた時が動き出す。


 爆音なんてものじゃない、もはや衝撃波に等しい音が辺り一面に撒き散らされた。


 音が止んだ後に残ったのは俺と足元に転がるフラムの首なしの体だけ。周囲の木々はほぼ全て吹き飛んでいた。

 オグエルの姿はない。代わりに俺の立つ地面から先の地面がなくなり、山の標高が半分ほどになっていた。


 突き出していた拳を下ろし、足元に視線を落とす。

 フラムだったものが転がっていた。腕にはいくつかの切り傷がある。あいつも素手で刀を受けたのだろう。首の断面からはもう血は流れていないがまだ綺麗な赤色を保っていた。


 見ているとだんだん感情が死んでいく気がする。心臓を貫かれたような喪失感に思わず胸を抑える。


 耐えきれずその場に座り込んだ。

 あぁ、やばい。泣きそうかもしれない。


 過去に人の、人型の死を見たことは何度もある。どころか襲ってきた冒険者を殺したこともある。

 でも知り合いを失うのは初めてだ。それも唯一の友人を。


 膝を抱えて額を足に押し付けて涙をこらえる。こんな感情はいつぶりだろうか、いや、前世でもこんな気持ちになったことはあっただろうか。


「……ッグ、フラム……」


「おう、なんじゃ」


 耐えきれず呼んだ声に返事が返ってきた。


 ガバリと顔を上げて周りを見回す。


「フラム⁈どこだ⁈」


「こっちじゃ、こっち、首の方」


 声の元に駆け寄ると首だけのフラムが口を動かして喋っていた。首だけなのに普通に動くから気持ち悪い。


「え、おま、は、生きてたのか⁈」


「うむ、竜帝の生命力は偉大なのじゃぞ。首が離れてもまたくっつけて回復魔法でもかければチョチョイのチョイで治るわ。

 とはいえ魔力はガンガン漏れるから早いところしてほしい」


 急いで首持ち上げて体が転がる場所に戻る。切断面をくっつけて回復魔法をかけたら治ってしまった。


「う〜む、よし、特に異常はなさそうじゃな」


「本当に治った……」


「何を引いておる、お主の魔力量ならこのぐらいのことは出来るはずじゃぞ?」


 え?俺もあんなこと出来るのか?嬉しくないのだが。なんか爬虫類っぽい。


「本当に大丈夫なのか?こう右手動かそうとしたら左足が動くとか」


「本当に大丈夫だから心配するな、なんなら今から殴り合いでもしてみるか?」


「いや、遠慮する」


 その場でシャドーボクシングをし始めるフラムは本当に元気そうだった。体だけじゃなく精神的にもおかしな様子は見られない。デタラメなやつだ。


「いや、それにしても派手にやったのう。首だけで動けんから死ぬかと思ったぞ」


 フラムが辺りを見渡して言う。まず首だけになった時点で死ぬかと思ってほしい。


「手加減する余裕がなかったからな」


 死にかけからこんなパワーが出てきたのは俺が一番驚いている。何故だか今も普通に立っていられるし、むしろ前より体が軽い気もする。


「で、お主が盛大に吹っ飛ばしたのはどうする。どこに行ったか分かるか?」


「大まかな位置なら殴った時の感覚でなんとなく」


「よし、ならば儂は村に戻って後始末の準備をしておこう。お主はオグエルを回収したら戻ってこい」


「えぇ……放っておいたらダメか?」


 一度捕まえるのに失敗しているからあんまり気がすすまない。


「ダメに決まっとるじゃろ」


 あ、ですよね。


 また捕まえたら変身なんてことないよな。流石にまた戦うのは勘弁だぞ。……まず生きてるのか?


 もし死んでいたらその時は埋めてしまおう、と決めた。





「そういえばお主さっき泣いとらんかったか?」


「泣いてない!」


 断じて。

お読みいただきありがとうございました。


一ヶ月投稿が基本スタイルになっている気がする。

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