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狼さんと強敵

お久しぶりです。


またほぼ一ヶ月経ってしまいました。他の作家さん達はどうやって毎日投稿とかしているのか不思議でなりません。


今回の戦闘は次話にも続きます。

 暗い山の中。


 動物も魔物も寝静まった山に轟音が響き渡る。

 一度ではなく何度も何度も鳴るそれは山の住人達に異常を知らせるには十分だった。


 臆病なものは逃げ、勇敢な者、好奇心の強い者はその音の正体を確かめに行く。

 しかし結局は彼らもそこにあった光景を見て逃げ帰るのであった。


 彼らが見たのは高速でぶつかり合う何か。

 時に山の木々の間を縫うように動き、時に木々を破壊しながら飛び回る。


 片方は角を生やした巨大な悪魔、もう片方は不自然な髪の短さの女だ。


「らぁ!」


 やや高音の叫び声が聞こえると一際大きな破壊が生まれる。


(くそっ、また避けられた。)


 俺は内心で毒づく。


 もう何度も攻撃しているが全て避けられている。

 殺さないように手加減してはいるのは確かなのだが、随分と綺麗に避けられる。完全にオグエルさんが俺の動きを見切っているとしか思えなかった。


 木々の間を動き回るのをやめて地面に降り立った。

 木の上に着地したオグエルさんに向けて雷の魔法を連射する。


 ほぼ光の速度の速さだというのにオグエルさんはこれを切り捨てた。

 そして俺が次の魔法を撃つ前に立っていた木の枝を蹴り折り一瞬で間合いを詰めてくる。


 滑るように迫る刃。

 前に飛びオグエルさんの下を通り抜けるようにして避ける。


 着地し、振り向くともう次の斬撃が目の前にあった。


 息をつかせぬ激しい攻撃。


 全力で腕に魔力を回しガードする。

 キィンと金属がぶつかり合うような音がした。腕にジクジクとした痛みが広がる。


 一方的な狩りばかりしていた俺には久々の痛みだ。ちょっと涙出そう。


 追撃が来る前に腕から少量の血を飛び散らせながらオグエルさんに殴りかかった。


 手加減しているとはいえ一般人なら何も見えないほどの速度だ。


 しかしこれも避けられる。


 避けるために体が少し傾いたがそれだけだ。

 パンチの衝撃波にもビクともしていない。


 再びオグエルさんが刀を振るう。なんとか背を逸らして避けた。


 さっきからずっとこの調子だ。

 こちらの攻撃は避けられ、魔法は切り裂かれる。なのに向かうの攻撃は何故かこちらに通る。全力で身体強化しても防ぎ切れないのだ。


 くっそ、オグエルさん邪神より強いだろ。むしろあれが邪神だったのかまた疑わしくなってきたぞ。


 心の中で見た目だけ禍々しかったあの老人を思っていると、その思考を断ち切るようにオグエルさんの斬撃が飛んできた。

 慌てて飛びのいて躱す。


「余裕ではないか、敵の目の前で考え事をするとは。」


「あぁ、あんたの刀捌きは退屈なんでな。あれだけ斬りつけて腕一本も落とさないなんてな。」


 内心の焦りを誤魔化すように挑発する。


 そうだ、腕の傷はすぐに治せるし多少防ぎ切れないとはいえ致命傷は受けていない。受けた感触からしてあの刀は俺の薄皮を切り裂くぐらいが精々だ。


 まだ俺が有利、そう自分に言い聞かせる。


「ふむ、では先ほど腕を斬られた時出ていた涙も演技というか。なかなかの演者振りだな。」


 オグエルさんが刀を振るいながらこちらをからかうように笑う。


 余裕ないのバレバレじゃないか!

 というか涙我慢できてなかったの恥ずかしいんだが!


 ちょっと顔が熱い。

 さっき余裕ぶって挑発した分余計に恥ずかしい。


「ま、まぁな。」


 攻撃を躱しながら答える。


「……不思議な者だな、お前は。

 虚勢もはれないほど駆け引きが下手、動きも直情的で読みやすい、なのに体捌きは一切の無駄がない達人のそれだ。

 一体どんな生き方をすればそんな風になる?」


 オグエルさんが目を細めて探るようにこちらを見る。


「戦闘中にアドバイスをくれるとはそっちも余裕じゃないか。」


「事実そうだ。言っただろう直情的で読みやすいと。」


 腹が立つが事実その通りなのだろう。


 だがそれを教えたのは迂闊だったな、俺が本当に素人なら何も出来ないが……伊達に野生で生き伸びてきてはいない。

 戦闘中に動きを変えることぐらいは……!


「ッ!」


 強化した右腕でオグエルさんの懐に強引に拳をねじ込む。

 当然のように避けられるがそれは織り込み済みだ。


 さらにもう一発、今度は左拳を振るう。


 これも当たらない。

 動きを見切られ反撃をもらった。左肩から血が吹き出る。筋肉を斬られたのか腕がダラリと下がった。今までで一番深い傷に顔をしかめる。


 オグエルさんの目はどこまでも冷静だ。

 音を置いて行きそうな拳が飛んでくるのに顔色ひとつ変えない。静かに俺を見ている。


 負けじと若干滲む視界の中のオグエルさんを睨む。


 まだ動く右の腕を突き出した。オグエルさんは当然のように躱す。

 その顔には若干の呆れの色が見えるようだ。がむしゃらに攻撃しているだけに見えるのだろう。


 好都合だ……!


 オグエルさんの刀が山に降り注ぐ月光を反射して妖しく輝く。

 銀の軌跡を描いてオグエルさんが刀を振り抜いた。

 俺の右腕は真っ二つに切られ――


 その場で霧散した。


「何⁈」


 オグエルさんの顔に初めて動揺が浮かぶ。


 かかった!


 ()()()()()()()()()()俺はオグエルさんの鳩尾に渾身の右ストレートを叩き込んだ。


 動揺からかそれとも空振りのためか、一瞬動きが止まったオグエルさんは避けられず、拳は吸い込まれるように当たった。

 分厚い筋肉を歪ませる確かな感触、クリーンヒットだ。


 トドメに電撃を流し込む。

 青白い光がオグエルさんの体を焼いた。


「グゥオォ⁈」


 くぐもった声を上げてオグエルさんの巨体が崩れ落ちた。





「……勝負、ありだな。」


 崩れ落ちたオグエルさんを見下ろしながら告げる。


「ガッ、ゲホッ……今のは……魔法、か……?」


 オグエルさんが腹を抑えて膝を立てる。

 しかしダメージが大きいのか立ち上がれることは出来ないようだ。


「さぁ、どうだろうな。」


 その通りである。


 さっきの攻撃、俺は左肩を斬られた後後ろに下がっていたのだ。


 そして下がりながら魔法を使ったのだ。

 使った魔法は幻覚を見せるもの。精神感応(テレパシー)と同じ要領で相手の脳に偽の情報を送るのだ。

 似たような目的で光を捻じ曲げ相手に別の景色を見せることもできるが、視覚だけでなく全ての五感に作用する分こちらの方が確実である。


 オグエルさんには最後俺の腕を切り飛ばたように感じたのだろう。

 しかし実際は刀は空を切っており、とうの俺は下がってオグエルさんの隙を待っていたのだ。


 この魔法、元々は狩りで群れを狙う時に使っていたものだ。

 逆方向から敵が来たように見せかけて誘導したり、単純に俺の姿を見えないようにしたりして使っていた。


 正面戦闘でも有効そうな魔法なのに何故今まで使わなかったのだろうか。

 ……オグエルさんが不思議がっていたのが分かる気がする。応用力が無いというか視野が狭いんだな、俺は。


 反省するのは後にしてオグエルさんを魔法で作った鎖で手足を縛りにかかる。

 一応離れて鎖を魔法で操りながらだ。

 脱出されないよう三重に巻いて錠もかける。


 鎖を巻いている時も錠を閉める時もオグエルさんは静かなままだった、観念したのだろうか?


「やけに大人しいな。」


「ハハ、腹を殴られた上に電まで流されては力が入らん。年寄りには優しくするものじゃぞ?」


 オグエルさんはわざとらしく語尾を戻す。


「知らん、というか多分俺の方が年上だぞ。

 ……いや、そんなことはいい。早く刀を放せ。」


「それは出来んなぁ、剣は武器は戦士の相棒と言ってもいいものだぞ?自ら放すわけにはいかんな。

 欲しいなら自分から取りに来い。」


 捕まっているというのにオグエルさんは随分と余裕だ。


「嫌に決まってるだろ、何を企んでいる。」


「何も?

 ほら、もたもたしていていいのか?」


 オグエルさんがキンキンと刀で鎖を叩く。


 絶対何かあるな……。

 だが確かに時間をかけてられないのも事実だ。俺が制圧出来た奴らにフラムが負けるとは思わないが万が一というのがある。


 ……よし、一瞬で腕ごといこう。どうせ後で回復魔法をかければ治るんだし。


 予備動作無しで一歩で距離を詰め、魔力で剣を形作り振りかぶる。

 いくらなんでも鎖で縛られたままなら防御は出来ないだろう。


 しかしそれは間違いだった。


 ――オグエルさんが静かに笑う。


 ゾワッと背中に悪寒が走り急停止して飛び下がろうと足に力を込めた。


 しかし足を踏み切る前に右肩と左脇腹に熱を感じた。


 視界に鮮血が舞う。


 熱を感じた脇腹を見るとじわじわと服に真っ赤な血が広がっている。


 な……⁈


 体に回している魔力は切らせていない。防御力はそのままだったはずだ。


 混乱しながらも顔を上げる。

 そこにはバラバラに砕け魔力へと戻っていく鎖とその魔力の光に照らされ立っている一人の男がいた。


 藍色、と言えばいいのか、それに近い色の袴のようなゆったりした服に肩ほどまである灰色の髪を後ろで一括りにしている。細く切れ長の赤い瞳はこちらに向けられている。


 パッと見れば顔が西洋っぽいこともあって侍のコスプレをした外人のように見える。しかし発している圧は凄まじい。

 特に手に持っている刀、赤黒い刀身に脈打つかのように赤い光が不規則に走っている。とてつもなく不気味だ、目が惹きつけられる。


「ッ……誰だ、お前。」


 魔法をかけ、傷を治しながら問いかける。


「おや随分な言い分だ、先ほどお前が殴り倒した相手だぞ?」


「……は?」


 ということは、あれが、オグエルさん?


「嘘をつけ。

 俺が殴ったのは筋肉の塊で頭に角のある化け物だぞ。」


「これはひどい言われようだ。いや、私もあまりあの姿は好きではないがね。

 筋肉はともかく、角ならここにあるぞ?」


 そう言って男は頭頂部の少し横の髪をかき分ける。


 確かにそこには短いがちゃんと黒い角が生えていた。


「……まぁ、それでお前がオグエルさんだとして。

 どうやってあの鎖を砕いた?そんなやわな作りにした覚えはないんだが。」


「ちょっとした手品だ。タネは……秘密にしておこう。」


 教えないのか教えられないのか。

 どちらにしろ捕縛が出来ないとなると無力化がさらに難しくなったのは確かだ。


 俺の思案をよそに男が構える。


「さて、この姿で戦えるのは久々だ……すぐに終わらせてくれるなよ?」


 長いワイバーン狩り生活で錆びついた俺の危機感知能力が警報を鳴らす。

 それに従い反射的に飛び退いた。


 さっきまで俺のいた空間に赤い軌跡が走る。


 は、やっ⁈


 筋肉ダルマだった時とは比べ物にならない。

 軌跡が見えただけで刀身が全く見えなかった。


 しかも、多分攻撃力も上がっているのだろう。あの刀を見ているだけで冷や汗が止まらない。さっき強化していたはずの肩と脇腹も斬られたし。

 多分、まともにくらえばただでは済まないだろう。最悪、死ぬ、かもしれない。


 まずいな、殺さないとか言ってられなくなってきた。


「随分と、パワーアップしたな。」


 内心の焦りを隠しながら話しかける。


「パワーアップ、か。本当にそう見えるか?」


「……どう言うことだ?」


 まさかこれ以上強くなるんじゃないだろうな。フリー○様じゃないんだぞ。


「いや、ただ力が増えただけと思っているなら……それは甘いぞ。」


「何?」


「一度とはいえ私に膝をつかせたのだ。褒美として見せてやろう。」


 オグエルさんが刀を持っていない方の左手を前にかざす。

 思わず身構えるが攻撃の気配はない。


「これが私のスキルだ。」


 突如空の手のひらの上に一振りの刀が現れた。右手に持っている赤黒い刀とは違う白銀の美しい刀だ。その刀身には小さく放電する青白い雷を纏っている。


 現れる瞬間に瞬間移動の時に感じるような空間が少し歪む気配がした。あれもヤバい感じの武器だ。


「すごいな、手品のスキルか?」


「それならばもっと気の利いたものを出している。あいにく鳩は出せないのでね。

 私はこの体を媒体としていくつかの剣を所有しているのだ。いつもは異空間にあるが戦闘中に私が念じればこの通り一瞬で現れる。」


 ヒュンと白銀の刀を振り払う。刀が威嚇しているかのように雷光が弾けた。


「そして」


 オグエルさんが両手に持った刀を近づける。

 すると二つの刀は一瞬光ったかと思うと融合し、一つの刀となった。


「このように合わせればそれぞれの特性を持った刀が出来上がる。もちろん多少の魔力は使うがね。」


 出来上がった刀は刀身が黒く刃の部分が血のように赤い禍々しいものだった。発する圧も増している。


「羨ましいスキルだな、魔法を斬れるのも特性のおかげか?」


「その通り。

 魔力を割り霧散させる特性だ。ついでに言うと今は他に吸血、迅雷の特性が付与されている。」


 なるほど、妙に俺の防御を突破してくると思ったら魔力特攻のようなものが付いていたのか、魔力の塊の魔物にはよく効くだろう。

 だが仕掛けが刀の方にあると分かればあとは大丈夫だ。


 俺の切り札の技能、概念干渉は強力だが欠点も多い。

 そのうちの一つが発動条件があることだ。


 まず対象とどう干渉するのかある程度イメージが必要だ。特に対象選択は重要で曖昧な狙いだと魔力を大きく消費するし最悪発動しない。

 選択する対象に関する制約も多いのだ。広く又は強く認知されていたり、当たり前のものほど干渉しにくい、気がする。あまり使っていないのではっきりは言えないが。感覚的だがその事象の規模も関係している気がする。


 まぁ、つまりだ。

 魔法が通じず、俺の防御が通じないのはあの刀のせいならば概念干渉で消せる可能性は高いという事だ。


 いつでも概念干渉を発動できるように魔力を集める。


「ご丁寧にどうも、初めと比べて話してくれるようになったな。」


「あぁ、長らく私にここまでやる者に会っていなくてね。いささか興奮して饒舌になっているのは否めない。

 だが安心しろ、今度は油断はしない。」


 そう言った瞬間オグエルさんの周囲に十数本の刀が出現した。

 それらはすぐに光となりオグエルさんの持つ刀に吸い込まれる。


 ドクンと空気が震える。また刀の圧が大きくなった。


「さぁ今度こそ真剣に殺し合おう。この剣がお前に届くことは先ほど見せた通りだ。

 私が言えたことではないが油断はしてくれるなよ?」


 オグエルさんはスッと刀を居合の形に構える。

 こちらも拳を握って全身に魔力を回した。


 斬りかかってくる瞬間に魔力を斬る特性を無くす。そうすれば俺の拳か、魔力の剣でも受け切れるはずだ。

 受けた瞬間は必ず隙が生まれるはず、そこに全力で一撃叩き込む。加減は無しだ。


 オグエルさんの腕が霞む。


 来た!


 溜めていた魔力を一気に解放し技能を行使する。

 返ってきた手応えば十分。間違いなく発動したと感覚が告げる。


 これで……!


 全開で強化した腕を前にして防御姿勢を取る。

 が、受け止めた衝撃は来ない。


 訝しんで腕の隙間から覗くとオグエルさんはその場から一歩も動いていなかった。刀を斜め上に振り抜いた姿勢で止まっている。


 どういうことだ……?


「……お」


 声をかけようとしたその時。


 体から何かが裂ける音がした。


 視界いっぱいに広がる赤。先ほどのものとは比較にならない量が視界を埋め尽くす。


 ……え?


 視界を下げると右の腰あたりから左肩にかけて真っ赤な線が走っていた。


 血が溢れまだら模様となっていた服を真っ赤に染めていく。血に溶けた魔力も抜けていくのが分かる。


「な……は、え……。」


 力が入らなくなり俺は地面に倒れた。

お読みいただきありがとうございました。


次回はフラム視点と戦闘終了まで持っていきたいと考えています。


今更なんですが(○○)ってアレの語録らしいですね、嫌な思いをされた方がいたらすみません。


※6/24 オグエルのセリフをちょっと修正しました。

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